2015年に公開された映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の中で、ハリソン・フォード演じるハン・ソロは、息子ベン・ソロ(カイロ・レン)をダークサイドから救うべく奮闘したものの、ヘイデン・クリステンセン演じるアナキン・スカイウォーカーの闇の力にのまれてしまった息子の前に倒れることとなった。
ハン・ソロにはファンも多く、2019年に公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で再登板した際には喜びの声も少なくなかったはずだ。ハンはフォースの力を持っていないため、作品内ではカイロ・レンの記憶が作り出した幻像として登場し、カイロ・レンがベン・ソロとしての自分を取り戻すための手助けをしたのだ。しかし感情的な部分で考えると、このシーンではハンの幻像よりも、アナキン・スカイウォーカーがフォース・ゴーストとして登場した方がふさわしかったのではないだろうか。
続三部作の中で、アナキンは完全な悪者として描かれている。名前すら出てこないほどだ。しかし、カイロ・レンはそんなアナキンに対して憧れを抱いていた。アナキンはカイロ・レンの祖父にあたるため、ダークサイドに堕ちた唯一の血縁者として尊敬していたのだ。カイロ・レンは父親であるハン・ソロを殺してしまったが、これによって彼のダークサイドでの存在感はさらに増すことになり、尊敬する祖父に近づいたのだ。
しかし、カイロ・レンは、憧れのダース・ベイダーに近づいたという思いと、父を殺してしまった罪悪感の間で葛藤したはずだ。これは、師匠を殺してしまったアナキンの葛藤と共通するものがあるだろう。この点から考えると、カイロ・レンがベン・ソロに戻るべきか思い悩むシーンで登場するのは、ダース・ベイダーのマスクを外したアナキン・スカイウォーカーの方がしっくりくると考えられるだろう。
このような展開にすることで、『スカイウォーカーの夜明け』により深みを持たせることができ、カイロ・レンの信念をより強固なものにすることができたのではないだろうか。