映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』にて、クワイ=ガン・ジンが幼いアナキン・スカイウォーカーを発見した際、彼はアナキン・スカイウォーカーが特別な運命を持った子だと、すぐに気づいた。アナキンこそが「選ばれし者」なのではないかと悟ったのだ。「選ばれし者」に関する内容が書かれた古代の予言は、昨年まで詳細が明らかになっていなかった。そして昨年、クラウディア・グレイの小説「Master & Apprentice」の中で、予言の正確な内容が「『選ばれし者』はやがて現れる。父親はおらず、彼を通してフォースにバランスがもたらされるだろう」であったと明かされたのだ。
では、「選ばれし者が現れる」という予言は、現実になっただろうか。確かにアナキンは、パルパティーンを溶解炉に突き落とし、フォースにバランスをもたらした。ところが、パルパティーンはその後惑星エクセゴルで復活をとげている。結果的にダークサイドの力は再び銀河を覆い、アナキンが戦いを通して得た功績はなかったものとされた。そしてファンの間では「選ばれし者」はアナキンではなかったのではないかと議論をよんだのだ。
そんな中、アナキンの名前が出てくることがなかった続三部作。この作品の中で描かれている戦いが、アナキンの功績を表しており、レイこそがアナキンに選ばれた戦士だったのではないかと解釈されている。
『スター・ウォーズ』シリーズの代名詞とも言える武器「ライトセーバー」。これは持つ者の思想や行動がその刃に反映されるとされていた。つまり、アナキンのライトセーバーにはアナキンの強い精神が宿っているのだ。
そして『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のなかで、このライトセーバーがキーとなり、レイはヒーローとして冒険に出ることとなる。これは、ライトセーバーそのものがレイを所持者として選んだわけではなく、武器に込められたアナキンの精神が、やり残したことを達成するためにそのレイを選んだ可能性も考えられるのだ。
アナキンを慕い、ダークサイドへ堕ちたカイロ・レンは、レイがアナキンのライトセーバーを持っていることに嫉妬したのではないだろうか。この視点で考えると、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でのレイとカイロ・レンの戦いは、アナキンのライトセーバーを奪い合うものだったのかもしれない。レイはフォースのライトサイドを代表する者として、武器に込められたアナキンの善意と希望を証明しようとした。一方、カイロ・レンはダークサイドの代表としてアナキンを怒りの象徴として体現して見せたのだ。
そして『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』では、レイとパルパティーンが対決することとなる。過去のジェダイたちの声に励まされた彼女だが、その中にはアナキンのものもあった。アナキンはレイに呼びかけると、「バランスを呼び戻せ。レイ。私がやったように」と語りかけ、レイに自分が完遂できなかったミッションを託した。「選ばれし者」アナキンはその後継者としてレイを選び、フォースにバランスをもたらすよう指示したのだ。
こうしてレイはアナキンのライトセーバーを使用し、パルパティーンを倒すことに成功する。最終的にレイは、フォースのライトサイドやダークサイドに偏ることなく、バランスをとることに自身を捧げた。これは、レイがジェダイの青とシスの赤を混ぜ合わせた黄色のライトセーバーを自ら作ったことにも現れている。彼女こそ、「選ばれし者」の正式な後継者であり、こうして銀河の仕組みを変えたのだ。