『セブン』などの作品で知られる映画監督のデヴィッド・フィンチャーが、2019年に公開された映画『ジョーカー』の感想を語った。また彼はその内容について、「精神的に病を抱える者への裏切り行為」と表現し、その理由も明かした。
先日、Telegraph紙のインタビューに答えたデヴィッド・フィンチャーは、今年のアカデミー賞で最多11部門にノミネートを果たし大成功をおさめた『ジョーカー』と、1990年代に自らがメガホンを取り、その内容が当時物議をかもしながらも大ヒットした映画『ファイト・クラブ』を比較した。
その上で、「だれもあの映画が『ダークナイト』でさえなしえなかったような大ヒットを記録するなんて、思ってもみなかっただろう」と語り、「私は、あの映画を見る人なんて誰もいないと思っていた。だってあの映画はまるで、トラヴィス・ビックル(映画『タクシー・ドライバー』の主人公)と、ルパート・パプキン(映画『キング・オブ・コメディ』の主人公)を組み合わせたキャラクターに精神的に、病を抱える者への裏切り行為をかけ合わせたようなものじゃないか。それが億単位で売りに出すなんてね」と付け加えた。
かつて『セブン』や『ファイト・クラブ』などで精神的な病を抱えた人間を描いてきたフィンチャーにとって、『ジョーカー』が抱えている心の闇は映画内で的確に表現されていなかったというのだ。
一方、フィンチャーはかつて『ファイト・クラブ』を制作した際、その内容があまりにも精神的に暗くなるものであったことから「当初の一般的な見方としては、この映画をリリースしたら、『もう自分たちの映画人生は終わりだな』と感じられるくらい、反発されるものだと思っていた。それでも、1999年という時代にあの映画を作ることが出来たのは奇跡だったと自分の中では思っている」と明かし、批判が予想される映画を作り上げることの難しさを語った。