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吉報!「BOSCH/ボッシュ」のスピンオフ制作決定

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主人公ハリー・ボッシュ刑事の生き様を描く大人の鑑賞に堪えるドラマは、何度観ても飽きが来ない。今夏、「ボッシュ」シリーズは完となるが、去る3月3日、スピンオフ制作決定の吉報が舞い込んだ。

Amazonプライム・ビデオ(以下、プライムビデオ)の最長寿シリーズ「BOSCH/ボッシュ」(2015年~)は、パイロット版をユーザーに観てもらい、投票でシリーズ化を決めたプライムビデオ初のオリジナルドラマです。世界的ベストセラーを基に、オリジナルドラマを企画したのは、元々Amazonがオンライン書籍販売会社で読者層が厚かったからに他なりません。一説には、マイケル・コナリーの「ハリー・ボッシュ・シリーズ」ファンの組織票で、シリーズ化に漕ぎ着けたと言われていますが、プライムビデオの長寿番組/代表作となった事実を見れば、組織票であれ何であれ、後世に残る秀作であることは確かです。毎シーズン原作本1~3冊を土台に10話が制作され、2020年4月16日配信開始となったシーズン6を含む計60話を、現在プライムビデオで視聴できます。

原作者コナリーは、制作総指揮/脚本執筆(シーズン6までに8話)を手掛けており、ストーリー会議には、遠路遥々フロリダ州から参加する程の入れ込みようです。「本では完璧なハリーを描くことができたから、テレビで如何に描くかがチャレンジだ」と語っています。

私は私立探偵/犯罪捜査ドラマの大ファンですが、幸い(?)と言うか、ハードボイルド小説「ハリー・ボッシュ・シリーズ」を読んだことがなかったため、イメージしていたボッシュとは大違い!とがっかりした人間ではありません。パイロット版を観た瞬間、タイタス・ウェリバーが演じるボッシュに惚れ込み、原作とシリーズとはどう違うのだろう?等と考えたこともありませんでした。テレビ化にあたって、ボッシュの年齢や戦争体験などが書き換えられた上、ロサンゼルス市警察(LAPD)ハリウッド署の刑事部屋を登場させ、刑事仲間との絡みも存分に加えられています。上司/友人のグレイス・ビリッツ警部補(エイミー・アキノ)、相棒ジェリー・エドガー(ジェイミー・ヘクター)、足で捜査する’でか’ジョンソン(トロイ・エヴァンズ)やムーア(グレゴリー・スコット)、理解に苦しむ若い世代の刑事等が取り巻きとして登場します。

ハリウッド署殺人課のベテラン刑事ボッシュは、署内で一二を争う検挙率を誇る敏腕刑事ですが、弱い者イジメをするガキ大将に真っ向から立ち向かう正義の味方で、ルールを無視して突っ走ることも多々あります。上司におもねることがないため、出世欲満々のアーヴィング市警本部長(ランス・レディック)とは衝突することばかりです。アーヴィングは、どうも胡散臭くて、信用ならぬ自己チュー人間に見えてなりません。

 

ウェリバーが、ボッシュ役のオーディションを受けるに至った経緯や、コナリーから贈与された「ハリー・ボッシュ・シリーズ」に涙したこと、更にボッシュの役作りについて語っているビデオをご覧下さい。

コナリーが手塩に掛けて育て上げたキャラの映像化を託された重責を心しているウェリバーは、「出生の秘密や施設での生い立ちなど、暗い過去を引きずる’翳り’を如何に表現するかが鍵」と語っています。心身共に強靭、無口な仕事の鬼、無欲無私、妥協しないハードボイルド刑事が生まれた背景に見え隠れする「親の因果が子に報い」の悲歎を、ウェリバーは渋い演技で表現しています。

 

マディ・ボッシュ(マディソン・リンツ)は、シーズン4で母を亡くして以来、父ハリー(ウェリバー)と二人暮らしをするようになった。お互いへの思いやりや労わりあいは、私から見ると父娘関係の理想像。(c) Saeed Adyani/Amazon Studios

ウェリバーの燻し銀の演技を支えるのは、ボッシュの生活環境です。ハリウッドの夜景を一望するオシャレな(刑事の給料では絶対に買えませんが)ガラス張りの家は、簡素そのものです。唯一の’こだわり’ジャズのレコードコレクションとステレオレコードプレーヤーが占拠する2LDK(1958年築)に、愛娘マディ、拾て犬コルトレーン(サックスプレーヤーのジョン・コルトレーンに因んで命名)とひっそりと暮らすボッシュ。この家は、ボッシュが常にロサンゼルスを見守っていると言う象徴として選ばれました。又、ウェリバーの提案で書き込まれた、助けた犬が恩返しに来るシーズン5の伏線は、ボッシュの不屈の魂とサバイバル根性を捨て犬に託したものです。ウェリバーのボッシュに対する細やかな心遣いが、ひしひしと伝わってくるシーズン5のフィナーレでした。2020年にエグゼクティブ・プロデューサーに昇格したウェリバーの成せる業です。

 

又、ダウンタウンからハリウッド東部の’見慣れた風景’がふんだんに登場し、「クローザー」(同じくLAPDを描いた犯罪捜査ドラマ、2005~12年)や「LUCIFER/ルシファー」(ファンタジー/犯罪捜査ドラメディー、2016年~)同様、ロケ地を認識できるのも、LA住民には醍醐味と言えます。

ボッシュの上司/友人/唯一の味方(?)のグレイス・ビレッツを演じるエイミー・アキノ。2017年プライムビデオが開催したエミー賞根回しイベントの会場で。(c) Meg Mimura

2017年プライムビデオが開催したエミー賞根回しイベントの会場で、ウェリバーに一世一代の嵌まり役をいつまで続けたいか尋ねてみました。「番組ファンが許す限り. . .」と謙虚な答えが返って来ましたが、残念ながらシーズン6配信開始の2ヶ月前に、シーズン7でシリーズ完了と発表がありました。毎年、4月に新シーズンの配信を開始していましたが、コロナ禍で撮影が2020年9月まで延期されたため、シーズン7は今夏まで待たなければなりません。

シーズン7配信日の発表に勝る吉報が送られてきたのは、3月3日でした。プライムビデオ傘下のIMDb TVは、熱狂的ファンの要望に応えて、Amazonオリジナルシリーズの老舗「ボッシュ」のスピンオフ制作を発表しました。主演は、ボッシュ父娘のウェリバー、リンツに加えて、シーズン1ではボッシュの宿敵として登場したハニー・’マネー’・チャンドラー弁護士(ミミ・ロジャース)です。詳しい内容は発表されていませんが、「ボッシュ」のクリエイター、エリック・オーバーマイヤー以下、コネリー、ウェリバー、トム・ベルナルド、ヘンリック・バスティン、ピーター・ジャン・ブルージュ等、制作関係者がほとんどそのままスピンオフに移行すると聞いて、益々バンザーイ!と叫んでしまいました。

 

ハニー・’マネー’・チャンドラー弁護士(ミミ・ロジャース)の事務所でインターンをしていたマディ(リンツ)がLAPDの一員になると決めたシーズン6から、最終シーズンで何がどうなってボッシュ父娘とチャンドラー弁護士がスピンオフして行くのか? 楽しみだ。(c) Saeed Adyani/Amazon Studios

 

永遠に残る大人の鑑賞に堪える秀作と言えど、画面から姿を消してしまうのは名残惜しいと嘆き悲しんでいた私ですが、強烈な印象を残したボッシュ父娘が、今後どうなって行くのかを目撃できるとは、正に夢のようです。

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