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地上波局の苦肉の策? リベンジドラマ「The Equalizer」と「Rebel」は高齢者向けのスーパーヒーロー?

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新ドラマ「Rebel」で、「世の為、人の為」と社会貢献するアニー・レベル・ベロを演じるケイティー・セガール。「ガールパワーよ!」とセガールが表現したが、この番宣ポスターは団塊世代受けを狙ったスーパーヒーローに見えて仕方がない。

動画配信サービス会社に完全にプラットフォームを乗っ取られ、新作も1~2本で昨秋の新シーズンを辛うじて生き残った感が否めない米国地上波局。エミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされるのが、唯一NBC局の「THIS IS US 36歳、これから!」と「ゾーイの超イケてるプレイリスト」(英文評はこちら)の2本のみと、米国テレビ業界の厳しい現実を物語っています。

中でも、CBSは昔から視聴者の年齢が高いことで有名な局です。CSIフランチャイズやクリミナル・マインド系の長寿番組を死守することにエネルギーを注ぐ余り、僅かに残った放送枠に若者受けを狙った作品を発表しては、視聴率の低さを理由に打ち切ってきました。新番組を育てあげる忍耐力がないことを棚に上げて、長寿番組の視聴率に覚束ないの言い訳は余りにもお粗末としか言いようがありません。

しかし、CBSがメディアから最も叩かれたのは、番組制作のあらゆる局面でダイバーシティ(人種・性別・年齢・階級等の多様性)が見られない事です。白人男性の主人公が圧倒的に多く、ダイバーシティはどうなっているのか?と指摘される度に、取り巻きキャストの多様性を操作し、小手先の対応でお茶を濁して来ました。テレビ業界の’ドン’レスリー・ムーンベスが時代遅れの企業文化(男尊女卑、職権濫用)で、過去20年余り仕切ってきた事実を見れば、時代の流れに即応できない恐竜レガシーメディアCBSと呼ばれても不思議はありません。ムーンベス追い出し作戦(?)に始まったCBSのお家騒動については、2018年9月16日の「テレビ業界の’ドン’に浮上したセクハラ疑惑と業界の合併吸収の波及が争点」をご一読ください。

従って、ムーンベス辞任後、シェリー・レッドストーンViacomCBS会長のもとで、CBSのドラマに新風が吹き込まれたのは、単なる偶然ではありません。2018年に、CBS’初’のゲイのキャラを主役に、同性婚を果敢に描く犯罪捜査/ミステリードラマ「インスティンクト~異常犯罪捜査~」(2018~19年)が登場しました。日本で「インスティンクト」が酷評されていますが、主人公がゲイであることが、CBSにとって画期的!だったと言う社会的背景が見えないからではないでしょうか?更に、#MeToo運動の流れを受けて登場した黒人女性判事が主人公の法廷ドラマ「All Rise」(2019年~)には、レスビアンの白人女性判事やアジア系、ヒスパニック系弁護士などインクルージョン(=個々の違いを受け入れて、認め合い、多様性を活かす)を意識した配役が際立っています。又、ロサンゼルス市警察本部長に起用された’初’の白人レスビアンが活躍する「Tommy」が2020年に登場しましたが、「インスティンクト」同様、早々に一巻の終わりとなってしまい、残念で仕方ありません。

昨年5月、無抵抗の黒人ジョージ・フロイドが白人警官に暴行を受けて死亡した事件をきっかけに全世界に広がった「Black Lives Matter (BLM)」運動で、法執行機関への不信が募る一方の米国では、伝統的な家父長制/白人至上社会を絵に描いたような、従来の犯罪捜査/刑事ドラマは当座、深く静かに潜航中です。唯一、2017年に登場した「S.W.A.T.」現代版が、制作のあらゆる局面にダイバーシティとインクルージョンを盛り込んだ’初’の犯罪捜査ドラマを自負しています。主演のシェマー・ムーアは、「部隊(=法執行機関)とBLMの橋渡しを目指して番組作りをしている」と語っています。

何が引き金となるか分からない一触即発の緊張状態が続く中、CBSはリベンジドラマ「The Equalizer」のリブート版を2月7日から開始しました。オリジナルは、1985年~89年に放送されたドラマで、邦題「ザ・シークレット・ハンター」として、1994年~97年にかけて79話が日本でも放送されました。又、2014年にデンゼル・ワシントン主演のアクションスリラー「イコライザー」として劇場公開され、18年には続編「イコライザー2」まで登場しました。

 

今回のリブートは、原作者マイケル・スローンとリチャード・リンドハイムの協力を得て、歌手・俳優クィーン・ラティファのために書き直した現代版「The Equalizer」と言う訳です。3月3日にご紹介したAMC局で今夏デビューが期待されている「The Beast Must Die」同様、黒人シングルマザーが悪党を退治するリベンジドラマに変身しました。

主人公ロビン・マッコール元諜報員、十代の娘デライラ、叔母ヴィオラ、更にロビンの違法行為を大目に見るNYPD刑事の4人の黒人が中心のドラマです。ラティファの気負わない演技、黒尽くめながらオシャレなスーパーヒーロー風衣装、スカッとするアクションシーン等、必殺仕置人として一般受けするドラマに仕上がっています。それが証拠に、放送開始1ヶ月後には、シーズン2の更新が発表されました。「All Rise」の黒人女性判事の次は、黒人女性のスーパーヒーロー(必殺仕置人)で、CBSのダイバーシティとインクルージョンに対応しようという試みです。

一方、ディズニー+(動画配信サービス)の立ち上げに全力を注いでいたからか、地上波局ABCが画期的なドラマを輩出しなくなってから数年になります。嘗てのチャレンジ精神はどこへ行ってしまったの?と首を傾げていた視聴者も多いと思いますが、来たる4月8日に、ABCがやっと重い腰を上げたかのように、少々毛色の違うドラマを発表します。

 

映画「エリン・ブロコビッチ」で一躍有名になった環境活動家ブロコビッチを制作総指揮軍団の一員に迎え、クリスタ・ヴァーノフが創作した笑いと涙のリベンジドラマ「Rebel」です。アニー・’レベル’・ベロ(ケイティー・セガール)は、環境/薬害訴訟専門の消費者保護団体の代表として、利益至上主義の大企業に、真っ向から立ち向かうスーパーヒーローです。弁護士には真似のできない’違法すれすれ’など朝飯前。破茶滅茶、猪突猛進型のレベル(=反逆児)は、食い付いたら離れないすっぽんのような活動家です。しかし、「世の為、人の為」と社会貢献にいとまの無い、正義の戦士スーパーヒーローは、とかく夫や子供など身近な家族は眼中になく、蔑ろにしてしまいがち。まだ、パイロット版を観ていないので、飽くまでも想像ですが、スーパーヒーローの哀しい性(さが)を描くドラマになれば面白いと思います。

左から環境活動家エリン・ブロコビッチ、クリエイターのクリスタ・ヴァーノフ、レベルを演じるケイティー・セガール。ブロコビッチはいつ見ても、若い!この写真を見て、フェリシティ・ハフマンを起用した方が良かったのでは?と思ってしまった。(c) ABC/Pamela Littky

黒人のスーパーヒーロー、オリヴィア・ポープ(「スキャンダル 託された秘密」2012~18年)を輩出したABCが此の期に及んで、何故67歳の白人女優セガールを起用したのでしょうか?まだ地上波局にしがみ付いている高齢者層受けを狙った画期的な起用には違いありませんが、ブロコビッチ自身が60そこそこですから、世代を超え過ぎた感があります。又、久々の群像劇で、共演者の数が半端ではありません。周囲を若者で固めれば良いと言う判断なのかもしれません。

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