ディズニー実写映画最新作『クルエラ』とはどんな映画なのか?
そう問われたら、「最高のファッションとロックンロールが彩る稀代のヴィランのオリジン・ストーリー」と形容するのが適当なのかもしれない。主役は、『101匹わんちゃん』や『101』でお馴染みの、クルエラ・ド・ビル。パンクムーブメントが到来した1970年代のロンドンを舞台に、ファッション・デザイナーを志す才能豊かな女性エステラが、いかにして悪女クルエラへと変貌していったのか、彼女の宿敵となる大物デザイナー=バロネスとの関係を通じて、明らかにしていくものだ。
となると当然ファッションは重要な役割を負っていて、なんとエステラ/クルエラ(エマ・ストーン)とバロネス(エマ・トンプソン)のために、約80のルックがデザインされたという。衣装デザイナーには、アカデミー賞®を2度受賞している大御所ジェニー・ビーヴァンを起用。1950年生まれの生粋のロンドンっ子であるジェニーは、パンクムーブメント実際に体験しているという肌感覚を武器に、ふたりのキャラを見事に衣装で表現している。バロネスには、ディオールの構築的デザインを参考に、中間色の古風なドレスやスーツを制作。他方のクルエラには、ヴィヴィアン・ウェストウッドやアレキサンダー・マックイーンをヒントに、赤・黒・白・グレーに色彩を絞った、まさにパンクなストリート・クチュールが用意された。世界観がそれぞれに確立されているだけに、映画の中だけで終わらせるのがもったいないくらいだ。
そして、そんなふたりのルックに匹敵するバラエティを誇るのが、ほぼ隙間なく映画全編にちりばめられた音楽である。ファンクにソウル、ニューウェイヴ、ジャズ、ラテン、オールディーズなどなど多彩なジャンルを網羅しているが、冒頭で触れたように、当時のロンドンの街で鳴っていただろう60~70年代のロックンロールがその大半を占める。パンク勢ならザ・クラッシュにブロンディにラモーンズ、その少し前の時期からはスージー・クアトロやスーパートランプやエレクトリック・ライト・オーケストラ、60年代に遡ってローリング・ストーンズ、ディープ・パープル、ビー・ジーズ、ゾンビーズ……といった具合に。聞けば監督のクレイグ・ギレスピー(『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』ほか)は、その時々の気分に合わせて音楽をかけながら撮影を行なったそうで、最終的に選ばれた曲も、各シーンの状況描写やキャラの心理描写に大きく貢献。例えば、スラッシュ・メタルの原点と呼ばれたりもするクイーンの『ストーン・コールド・クレイジー』は、クルエラの文字通りクレイジーな無免許カーチェイスのシーンを演出。またバロネスが初めて登場するシーンでは、ドアーズの『ファイヴ・トゥ・ワン』が聴こえてくるのだが、“ここから生きて出られる者はいない”と歌うこの不穏な曲は、物語の行方をそれとなく暗示しているかのようだ。
すでにデジタル配信されている日本版オリジナル・サウンドトラックには、これらのほかにエンドソングの『Call me Cruella』が、柴咲コウ(クルエラの日本版声優)による日本版と、フローレンス・ウェルチ率いるフローレンス・アンド・ザ・マシーンによるオリジナルの英語版で収録されている。クルエラ自身の視点で彼女の屈折した心情を綴り、これまたレトロなロックンロールを意識して作られた曲だ。ちなみにこのエンドソングの作者でもあるフローレンスもロンドン生まれのロンドン育ちで、自らスタイル・アイコンとして知られる人。ファッションにまつわるヴォキャブラリーが歌詞にさりげなく盛り込まれていたりして、隅々にまでファッションとロックンロールと稀代のヴィランという三本柱を反映させている。
文:新谷洋子
クルエラ オリジナル・サウンドトラック 発売情報
『クルエラ オリジナル・サウンドトラック』(日本版)
デジタルアルバム好評配信中 / CD 6月23日(水)発売 [UWCD-1104 税込2,750円]
試聴/購入はこちらから:https://umj.lnk.to/Cruella
トラックリスト
1. 「Call me Cruella」 – フローレンス・アンド・ザ・マシーン(エンドソング)
2. 「ブラッディ・ウェル・ライト」 – スーパートランプ
3. 「ウィスパー・ウィスパー」 – ビー・ジーズ
4. 「ファイヴ・トゥ・ワン」 – ドアーズ
5. 「フィーリング・グッド」 – ニーナ・シモン
6. 「ファイアー」 – オハイオ・プレイヤーズ
7. 「胸いっぱいの愛を」 – アイク&ティナ・ターナー
8. 「オーロラの救世主(2012バージョン)」 – エレクトリック・ライト・オーケストラ
9. 「ストーン・コールド・クレイジー(2011リマスター)」 – クイーン
10. 「どうせ恋だから」 – ブロンディ
11. 「ステイ・オア・ゴー」 – ザ・クラッシュ
12. 「アイ・ラブ・パリ」 – ジョージア・ギブス
13. 「私の心はバイオリン」 – ケン・ドッド
14. 「アイ・ワナ・ビー・ユア・ドッグ」 – ジョン・マックレア
15. 「カム・トゥゲザー」 - アイク&ティナ・ターナー
16. 「コール・ミー・クルエラ」 – 柴咲コウ(日本版エンドソング)
映画公開情報
ディズニー映画最新作『クルエラ』
5/27(木)映画館&5/28(金)ディズニープラス プレミア アクセス公開
※プレミア アクセスは追加支払いが必要です。
「美女と野獣」「アラジン」のディズニーが、「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンを主演に贈る実写映画最新作。
パンクムーブメントが吹き荒れる70年代のロンドンで、デザイナーを夢見る少女エステラは、なぜ邪悪なヴィランに変貌したのか?
名作アニメーション「101匹わんちゃん」に登場する、ディズニー史上最もファッショナブルで、最も悪名高きヴィラン“クルエラ”の誕生秘話が、衝撃の≪パンクロック・エンターテイメント≫として過激かつスタイリッシュに明かされる。
▼詳細はこちら:https://www.disney.co.jp/movie/cruella.html
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