デビューから約15年。その間、様々な「史上初」の快挙を成しとげ、歴史にのこる偉大なアーティストに成長したテイラー・スウィフト。そしてスキャンダルに見舞われ辛酸(しんさん)をなめた回数もかぞえきれないほどに…。今回はその中でも、彼女のアーティスト生命をもっとも脅かすことになった「あの大事件」を徹底解説します!
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テイラーの悲痛な叫びで発覚した事件
ことの発端は、2019年。テイラー・スウィフトがデビュー時から28歳まで契約していた音楽レーベル「ビッグマシン・レコード」を、スクーター・ブラウンの会社が買収したことからはじまるの。スクーター・ブラウンといえば、あのジャスティン・ビーバーを発掘した敏腕マネージャーとして知られる、音楽業界の重鎮(じゅうちん)。
▼デビュー当時からずっとジャスティンと2人3脚でいまの立場を築いたスクーター(右)
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実はこのビッグマシン・レコード、テイラーの2006年のデビューアルバム「テイラー・スウィフト」から2017年の「レピュテーション」までのすべての曲の原盤権を所有していてね。つまり、これらの曲は「テイラーが作ったものだけど、テイラーのものではない」状態だったの。そして、買収によってこれらの原盤権がスクーターに移ってしまった、というわけ。
スクーターとテイラーはじつは、長いこと犬猿の仲でね。そんな相手に自分が魂をこめて制作した曲の原盤権がわたってしまうなんて、テイラーにとっては寝耳に水。驚いたテイラーがコトの顛末(てんまつ)を自身のタンブラーにつづって問題が発覚したのね。
「スクーター・ブラウンは長いこと、絶え間なく、巧妙な方法で私をいじめてきました。(カニエ・ウェストの妻の)キム・カーダシアンが違法に録音した通話音声の一部をリークさせたときに、スクーターのクライアント2人(そのうちひとりはジャスティン・ビーバー)が、一緒にネット上で私を誹謗中傷したこと。彼のクライアントであるカニエ・ウェストが、私の全裸が映るリベンジ・ポルノ的なMVを制作したこと…そしていまスクーターは、私の人生をかけた作品を奪いました − 私には買い取る権利がなかったものを、です」
▼カニエ・ウェストがテイラーにした“いじめ”についてはコチラをチェック
彼女は自身のタンブラーで、こんな風にスクーター・ブラウンを非難。そしてカニエ・ウェストとその妻、キム・カーダシアンはもちろんのこと、そのリークによってテイラーが「ウソつき」よばわりされていたころに、それをちゃかすような投稿をしたジャスティン・ビーバーにも反撃。
▼ジャスティン・ビーバーが、スクーター・ブラウンやカニエ・ウェストとビデオ通話をしている写真とともに「よう、テイラー、気分はどう?」と投稿したインスタ画像。下記はそのときの「スクショ」とともに、テイラーがタンブラーに反撃の長文投稿をしたもの。
もちろん、テイラーとスクーターのあいだの確執を知りながらも彼に会社を売ったビッグマシン・レコードのCEO、スコット・ボーチェッタのことも「女性を支配しようとしている」と強烈にディスったの。
ジャスティン・ビーバーの謝罪が大炎上
このテイラーの告発に、業界は騒然となってね。テイラーへのいじめに加担したといわれるジャスティン・ビーバーは、すぐさま反応。「まずはじめに、昔インスタに傷つけるような投稿をしたことをあやまりたい。当時はおもしろいとおもっていたけど、いま見ると不快だし、無神経だったとおもっているよ」と謝罪の投稿をしたの。でも同時にチクリとこんなことも。
「僕たちは、ときが経つにつれて関わる機会が減り、お互いの違いや心の痛み、不満を分かち合うべくコミュニケーションをはかることもなくなった。だから、SNSに君がスクーターへのヘイトをあおるような投稿したのはフェアじゃないと思う。あのブログから君は一体何を得ようとしていたの?僕には共感を得るためとしか思えないし、君はああいう風に言えば、自分のファンたちがスクーターを攻撃してくれるとわかってたんじゃない?」
▼若き日のふたりの写真とともに、謝罪の言葉を投稿したジャスティン・ビーバー
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▼セレーナ・ゴメスの「親友」だったテイラーと「彼氏」だったジャスティン。彼らの不仲説についてはこちらをチェック
テイラーに謝罪しながらも、スクーターを擁護し、SNSではなくコミュニケーションによって問題解決するべきだ、としたジャスティン。ところが、彼の妻ヘイリー・ビーバーがその投稿に「ジェントルマンね」とコメントしたことからまた次のバトルが勃発(ぼっぱつ)。
元祖テイラー軍団のひとり、カーラ・デルヴィーニュがこれに反応してね。「ジェントルマン?…あなたは謝罪ってものがなんなのかわかっていないみたいね。テイラーが提起している問題は、(ジャスティンが投稿したいじわるな)写真一枚以上に根がふかい問題だってわかっているでしょ。それに、あなたも言っているように、彼女とあなたは何年も話していないわけで、そんなあなたにいまの彼女の状況がわかるわけないじゃない」
▼親友のテイラーとカーラ
Happy Birthday Taylor Swift ! 🥳🎉 #CaraDelevingne pic.twitter.com/rpc3vMBQds
— CARAUPDATES (@US_CARA) December 13, 2019
ごもっともな意見でジャスティンとヘイリーを牽制(けんせい)したカーラ。この事件はこんなかんじで、雪だるま式にいろんな人を巻き込んでいくことに…。
▼かつてテイラーが築きあげたハリウッド最強のオンナ友達グループ「テイラー軍団」についての詳細はコチラ
ハリウッド内でも意見が真っ二つに
“女性”アーティストであるテイラーと、音楽業界を牛耳る“男性”たちの戦いは、プロレスの試合のごとく、場外の観客まで巻きこむ大乱闘に発展。ハリウッドの名だたるセレブがこの問題について語り、どちらを支持するかを表明するという事態になるの。アーティストのホールジー、イギー・アゼリア、シェール、そしてテイラー軍団のメンバーでもあるスーパーモデルのマーサ・ハントなどは、テイラーを支持。
▼ホールジーは長文で想いを投稿
🦋 @taylorswift13 pic.twitter.com/1iI2tCr8my
— h (@halsey) June 30, 2019
逆にスクーターのクライアントである、デミ・ロヴァートやスクーターの妻エール・コーエン・ブラウンは、彼を擁護。とくにエールは、「あなたは原盤権を買い戻す機会があったのにそれを見送った」「キム・カーダシアンがあなたのウソを録音したことを私の夫のせいにしないで」「夫がクライアントをちゃんとコントロールすべきだというのなら、あなたは自分のファンをちゃんとコントロールしたらどう?」などと長文でテイラーを強く批判したの。
楽曲をすべて再リリースすることに
テイラーの告発にたいしては、古巣のビッグマシン・レコードも反論。「テイラーには自分の音源だけでなく、動画や写真など自分のキャリアにかかわるすべてのものを所有するチャンスがありました。しかし彼女は(ビックマシン・レコード)を去るという選択をしたのです」と述べて、テイラーにいじわるをしたわけではないことを主張したCEOのスコット。
またスクーターとスコットは、ふたりで「ビルボード」誌のインタビュー記事に登場。スクーターははじめてテイラーとスコットに会ったときの印象を「ふたりとも優しくしてくれた」と回顧。対するスコットは、ビッグマシン・レコードの社員も所属アーティストも、スクーターによる買収をよろこんでいると発言。真偽はともかくとして、どうにかしてこの騒動を収めたいというふたりの気持ちが伝わるようなインタビューが掲載されたワケ。
▼騒動の渦中にインタビューをうけたふたり。でもこの問題に関する質問はNGだったんだとか
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いっぽう、テイラーはつぎの一手をうつことに。なんと自分で原盤権をもてない過去6作のアルバム曲をすべて再レコーディングする、と発表。再収録した曲に関してはテイラー自身がすべての権利をもつことができるという理由で、いろんな人がテイラーにこの方法をすすめていたみたいね。さらにこれは、スクーター・ブラウンのもつ原盤権の価値をすごく落とすことにもなる、という一石二鳥(?)の戦略。世界中にものすごい数のファンをもつテイラーだからこそできる荒ワザ、といったところかしらね。
「自分の曲が歌えない!」という大ピンチに
これで収束するかと思いきや、さらに事態はエスカレート。2019年11月にテイラーがまたもや、「もうどうしたらいいかわからない」とファンに助けをもとめるSNSを更新。どうやらテイラーは、同月に開催されるアメリカン・ミュージック・アワードの授賞式で、「アーティスト・オブ・ザ・ディケイド(過去10年でもっとも輝かしい功績を残したアーティスト)」と呼ばれる特別賞を受賞することになっていたらしいの。そしてそれに合わせて、過去のヒット曲をメドレー形式でパフォーマンスする予定だったんですって。
▼テイラーがファンに助けをもとめた長文
Don’t know what else to do pic.twitter.com/1uBrXwviTS
— Taylor Swift (@taylorswift13) November 14, 2019
ところがスクーターとスコットから、原盤権に関する契約をたてに、それを阻止されたと告白したテイラー。さらには、当時撮影中だったドキュメンタリー番組(のちにネットフリックスで公開された「ミス・アメリカーナ」)内でも、自身の楽曲や動画を使用することも許可されていない…、と今後のプロジェクトがこの契約のせいでまったくすすんでいないことを明らかにしたの。
▼ドキュメンタリー「ミス・アメリカーナ」で発覚した衝撃の事実…なんとテイラーは摂食障害を患っていた!
過去の楽曲を使用するためにスクーター側からだされた条件はふたつ。それは予定していた過去の楽曲の再レコーディングの中止と、今後公の場でいっさいこの話題に言及しないこと。つまりテイラーはスクーター側の要求をのまなければ、今後「自分が作った曲の大半を歌えなくなる」という絶体絶命の崖っぷちにおいつめられてしまったの。
▼ヤバい…と思ったでしょうね(こんな感じだったのかしら…)
「プロのアーティストが自分の歌を歌えなくなる」という事態は、まさに歌手生命の危機。それって、これまでテイラーが直面したどんなスキャンダルもかすんでしまうくらい重大なコトよね。もちろん、このテイラーの告発で事態はまた大炎上。さっそくテイラーの親友であるセレーナ・ゴメスやジジ・ハディッド、ホールジーなどがテイラーを支持し、スクーター側を非難したってワケ。
すべてはアーティストを守るために…
さらに、大激怒したのはテイラーのファンたち。テイラーが「歌が歌えなくなるかもしれない危機」についてSNSに投稿してから、なんとスクーター・ブラウンのもとに大量の殺害予告がとどくようになってしまったんですって。結局スクーター側は、テイラーに楽曲の使用を許可せざるを得ない状況に。さらに「(お互い)前に進むためにも、解決策をみつけたい。きみの都合にあうように、僕はいつでもスケジュールをあけるよ」とインスタグラムにテイラーへの公開レターを投稿。きちんと話し合いの場をもうけることを提案するの。
【動画】2019年のアメリカン・ミュージック・アワードのテイラー。スクーター側から許可がでた往年のヒット曲を熱唱
おそらく、ビジネス上での交渉ゴトがこんな事態にまで発展するとは考えていなかったハズのスクーター。それが、自分の家族の命までが危険にさらされるというとんでもない事態に。それで彼も考えをあらためざるをえなかったみたいね。
また同年の12月、ビルボードが主催する「ウーマン・イン・ミュージック」で「ウーマン・オブ・ザ・ディケイド(過去10年間でもっとも活躍した女性への賞)」を受賞したテイラー。15分にもおよぶ長いスピーチの中で、彼女は音楽業界に根強くのこる“男性優位”の文化を強烈に非難。また、配信方法がどんどん変わっていくこの業界において、アーティストやソングライター、プロデューサーなどが報酬をフェアに支払われるようなしくみが大切だ、と強調したの。
【動画】テイラーのスピーチ全編
テイラーは、ことあるごとに音楽業界の中での不公平性に声をあげてきた存在。彼女の正義感が、まだ若いアーティストや、発言権のない無名の人たちの想いを代弁してきたのはまぎれもない事実。それによって業界の不公平性が少なからず改善されたのは、まちがいなくテイラーの功績よね。
あのカニエ・ウェストもテイラーを応援?
ハリウッド全体を巻きこむ大スキャンダルに発展したこの問題。2020年に入ると、なんと“敵側”の人物であったハズのカニエ・ウェストがテイラーの肩をもつ発言をして世間を驚かせるの。9月に「テイラーが原盤権をとりもどせるように(スクーターに)個人的にかけあってみる。彼は家族みたいなものだからな」とツイートしたカニエ。
▼そのときのカニエのツイート
I’M GOING TO PERSONALLY SEE TO IT THAT TAYLOR SWIFT GETS HER MASTERS BACK. SCOOTER IS A CLOSE FAMILY FRIEND
— ye (@kanyewest) September 18, 2020
テイラーとめちゃくちゃ仲がわるいはずのカニエ。でも自身もアーティストのひとりである彼は、「原盤権」はアーティストがもつべきというテイラーの意見には同意しているみたい。いつもナナメウエから予測できない動きをするのは、カニエらしい、といったところ。この事件で業界の常識も大きくかわったといえるかもね。
▼テイラーとカニエとの長い戦いはこの瞬間からはじまった!
その後問題になったテイラーの曲の原盤権は、スクーターの会社から別の会社へとさらに売却されてしまったよう。テイラーは予告どおり、自身の楽曲の再レコーディングを開始し、いまも順次公開している最中。もちろん、自身の体験を歌にするのがテイラーのオハコ。2020年に公開された「ザ・マン」のMVでは、スクーターや、スコットを強烈にディスるとともに、いまだに社会に根強く残る“男性優位”の風潮をこれでもか、と風刺(ふうし)した彼女。
【動画】「ザ・マン」のMV。主人公の男性はなんと男装したテイラー本人!
毎回、スキャンダルに見舞われながらも、絶対にタダでは起きないオンナ、それがテイラー・スウィフト。そんな姿を、今回もここぞとばかりにみせてくれたの。
そしてテイラーはホントの幸せを手に…
2021年にはいっても、テイラーはさらにパワーアップして絶賛活躍中なのはうれしいところ!2021年のグラミー賞では3度目となる「最優秀アルバム賞」を受賞。彼氏のジョー・アルウィンとの仲も順調、とこれまでにないほどの幸せをかみしめているテイラー。そして、過去には仲たがいしていた人たちとも「友人」として関係を修復しはじめているというニュースが。
▼2021年、グラミー賞でのテイラー
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たとえば、過去に自身の曲でディスったジョー・ジョナス。2020年には、赤ちゃんが生まれた彼とその妻に、誕生祝いのギフトを送ったらしいわよ。グラミー賞では、これまた有名な元カレのハリー・スタイルズと談笑する姿も…。
▼テイラーとハリーがしゃべった!とファンは歓喜
Harry Styles with Taylor Swift at the 2021 #GRAMMYs pic.twitter.com/d8EBLJ39BY
— harry styles gifs (@HRRYGIF) March 15, 2021
▼テイラーとハリーの恋愛の歴史はコチラ
そしてなんと犬猿の仲だったケイティ・ペリーとも関係を修復したテイラー。ケイティがツアー中のテイラーのもとに、平和の象徴である「オリーブの枝」を送ったことがきっかけで仲直りしたらしいの。その後、なんとふたりがテイラーの曲「ユー・ニード・トゥー・コーム・ダウン」のMVで共演したものだからファンもビックリしたみたいよ?
▼テイラーとケイティの不仲についての詳細はコチラ
▼ポテトの着ぐるみのテイラーと、バーガーの着ぐるみをきたケイティの奇跡のショット
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▼ケイティも出演した「ユー・ニード・トゥー・コーム・ダウン」のMV(ケイティの登場は2:40頃から)
きっととんがっていた時代をのりこえて、いまテイラー自身が幸せだからこそ、確執のあった相手とも平和的な関係になれた、ってコトかしらね。
さらに、テイラーにとっては名誉挽回のニュースも。2016年にキム・カーダシアンがリークした音声通話の録音の件でも、大きな進展があったの。2020年に録音の全文がリークされてね。すべての会話を聴くと、テイラーが“ビッチ”と呼ばれることを許可していない、ということがわかる内容だったことが判明。これで、全世界からウソつきの“ヘビ”と罵られた汚名を晴らすことができたテイラー。
彼女が15年にわたって築きあげた功績と、くぐり抜けた嵐のようなスキャンダルたち。単なるアーティストの枠をこえ、音楽業界の常識までくつがえしてきたテイラーのカッコいい生き方をみると、彼女を「生きる伝説」と呼びたくなるほど。これからもそんなテイラーをしっかりウォッチングしていくしかないわね!(完)
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1984年長崎県生まれ。十代の頃から海外セレブが大好きで趣味はハリウッドセレブ情報収集。大学卒業後、バイトや派遣社員として職を転々とする人生を送る。27歳の時「あれっ?パリス・ヒルトンみたいにキラキラした人生送るはずだったのに、私ったら人生詰んでない?」と思い、いきなり海外移住を決意。2011年バブルに沸くシンガポールに移住し、昼は会社員、夜と週末は動画ブロガー及びパーティーガールとして活動。動画ブロガーとして数々の受賞/メディア掲載の実績あり。2021年結婚を機にリトアニアに移住し、ここからさらに人生を面白くしていこうと画策中。人生の目標は70歳でビキニのグラビアを撮ること。ツイッターはこちら!