9月24日(金)にオープンした、デンマークの西部オールボーのクンステン美術館。現在同美術館では「労働の未来」をテーマにした展覧会が開催されており、そこで意外な作品が今注目を浴びている。
それがこの、ただ真っ白のアートだ。実はこの2つの額縁の中には、元々、計84,000ドル(約935万円)相当の、オーストラリア人とデンマーク人の平均年収をそれぞれユーロとデンマーククローネの現金で表したものがおさめられているはずだった。
When Denmark's Kunsten Museum of Modern Art lent artist Jens Haaning 534,000 kr ($84,000 USD), the museum expected Haaning would incorporate the money as visual elements in two pieces of art it had commissioned for an upcoming exhibit on labor markets. pic.twitter.com/dg1uKMmcNP
— NowThis (@nowthisnews) September 28, 2021
ところが、展覧会の開催に先立ち、作品を搬入したところ、ギャラリーのスタッフはおどろくべきものを目にした。なんと、額縁の中身が空になっていたのだ。
実はこれは泥棒のしわざではない。今回、美術館側が、芸術家のジェンス·ハーニングに過去のアートを再現してもらうため、作品に必要な84,000ドル相当のデンマーククローネを貸与。さらに1,571ドル支払っていたが、ハーニングはその現金を使わず、空のアートを送りつけたのだ。現在ハーニングはその現金を自身で保管しているという。
@Kunsten museum. People working for their money do not have spare cash to put in frame. The relationship between art & work for most artists has very little to do with money. Jens Haaning answer to this brief concisely. pic.twitter.com/PlZlhDIx08
— nellynotrite@gmail.c (@nellynotrite1) October 1, 2021
ハーニングが美術館に送ったEメールには「14年前と11年前に作った作品ではなく、新たな作品をお見せしたいと考えました」とつづられ、「今回の作品は、展覧会のテーマに対応しているものであり、私が元々予定していたものでもあるのです」と続いていだ。このEメールはプリントアウトされ、空になった額縁の隣に飾られている。
なおハーニングは今回の作品に「Take the Money and Run(金を奪って逃げろ)」というタイトルをつけている。
CNNの取材に電話で答えたハーニングは、「芸術家の視点から見て、人々の想像を超えられる作品ができるんじゃないかと思ったんだ」と語り、「僕は金を盗んだんじゃない。アート作品を作り上げたんだよ。これは当初予定していたものより10倍も100倍もいい。何か問題でも?」とつづけた。
美術館側は、今回の作品で額縁の中に入れて見せるためのお金、計84,000ドル(約935万円)をハーニングに貸し出したが、その現金はハーニングが保管したままのようだ。
また美術館はそれに加えて、1,571ドル(約17万円)を報酬および額縁や配送の費用としてハーニングに支払った。しかしハーニングはスタジオ代やスタッフの給料などでそれ以上の費用がかかり利益は出なかったと主張している。
結局、美術館は2つの空の額縁に対して952万円も支払ったことになる。
確かにハーニングの発想は独特で面白いが、美術館側の心境やいかに・・。