あるヒットソングが、中国で規制がかけられる事態となったようだ。
マレーシア人ラッパーのネームウィーと、オーストラリア人シンガーのキンバリー・チェンが歌う中国語ポップス、「Fragile」。YouTubeでの再生回数は3300万回を超え、大きなヒットを記録している。
【動画】ピンクの歌 Namewee 黃明志 Ft.Kimberley Chen 陳芳語 【Fragile 玻璃心】@鬼才做音樂 2021 Ghosician
ヒットの裏側には、この曲の歌詞が中国の人権侵害を暗示し、中国政府を皮肉るような内容だったことがある。
10月にこの曲がリリースされると、中国側はただちに反応。「Fragile」は中国の動画共有サービスから姿を消しただけでなく、2人の存在そのものが、中国版ツイッター「ウェイボー」といったプラットフォームから削除されたのだ。
甘いラブバラードに聴こえるこの曲のどの部分が、「中国への皮肉」だととらえられたのだろうか。
この曲のMVでは、全体的にピンクのセットが取り入れられ、ピンク色の衣装を着たパンダも登場する。
そして冒頭、「Please be cautious if you’re a fragile pink.(傷つきやすいピンクの方はご注意ください)」という警告が出る。
「ピンク」とは、愛国心のある中国の若者、通称「リトル・ピンク」を指しており、彼らの「かよわい自尊心」をやゆしているものと思われる。
さらに歌詞の中には、ネームウィーが「You say NMSL to me when you get angry.(君は怒ると『NMSL』って言うよね)」というフレーズがある。「NMSL」とは中国の愛国主義者が相手を攻撃する時に使う、「お前の母ちゃん死ねばいいのに」という意味の中国語の頭文字を取ったネットスラングだ。
またMVの中には、パンダが「コウモリのスープ」を調理するシーンも登場する。パンダはコウモリのぬいぐるみが入ったスープをネームウィーとキンバリー・チェンに差し出すのだ。
この描写からは、新型コロナウイルスが中国人が食べたコウモリから広がったという説を指していることがわかるのだ。
これまでにも、レディー・ガガやビヨンセといった大物アーティストの楽曲が中国当局の検閲にかかり、中国国内での視聴が禁止される事態となっている。
ネームウィーは今回、自身の楽曲が規制されたことについて、「マレーシアにはさまざまな人種がいて、俺は中国系に分類される。『中国人が中国人を侮辱するなんて』という声もあるかもしれないが、『中国人』とは、中国共産党や中国の国家だけを指しているわけではないんだよ」と主張している。