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急遽キャンセルされた2022年夏のTCAプレスツアー 今回もバーチャルに切り替えて、およそ3ヶ月に渡って開催予定

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2019年1月30日、CBS All Access (現在のParamount+)が誇るオリジナルドラマ「グッド・ファイト3」のパネルインタビューが、パサデナで開催された。左からクリエイターのロバート・キング、ミシェル・キング、クリスティーン・バランスキー、オードラ・マクドナルド、マイケル・シーンの5人が登場し、シーズン3の見どころを披露。今年9月8日にプレミア予定のシーズン6をもって「完」となる秀作について、同様のパネルインタビューに参加することはもう二度とないと思うと、寂しい限りだ。 Photo: Willy Sanjuan/Invision/AP/Shutterstock

7月27日を皮切りに、8月13日までの18日間、2022年夏のTCAプレスツアーが開催されることが決まったのは、つい5月末のこと。今回は、20年夏、21年冬、夏、22年冬の4回をバーチャルで乗り切ったプレスツアーを、従来の形態に戻したいと言う局側の希望と、TCA会員がアンケートに答えた結果が合致したと言うことだったのですが. . .

今夏のプレスツアーは、以前と同じようなパネルインタビューはできなくなるのか?どのような形態になるのかに興味はあったものの、この目で確かめるつもりは毛頭なかった。コロナ感染の危険を冒してでも参加する意義が見出せない。(c) Meg Mimura

 

去る3月に行われた22年夏のプレスツアーに関するアンケートに答えたのは、222会員のうち56%の124人でした。その内、
必ず参加する                          54人
現時点では未定                       55人
参加しない                             10人

未定、参加しないと答えた会員が挙げた理由は:
コロナ感染が怖い                     48人
費用高騰で参加できない            31人
スケジュールの問題                  22人

コロナ感染対策として
1)接種証明書提出可    116人
2)屋内でマスク装着       98人

パーティーに参加するか?
屋外なら参加                          116人
屋内でも参加                             72人

プレスツアー内容:
大宴会場でのパネルのみ参加         98人
囲み取材も厭わない                     55人
ラウンドテーブルなら参加            89人
セット訪問に参加                        88人

「スーパーガール」のセット訪問は、パネルインタビューとセット案内のコンビだった。こんな狭いところに押し込められなければ、久し振りにセット訪問も楽しそう. . .と思ったが、どこに行くかの発表がある前に、プレスツアーがドタキャンとなってしまった。(c) Meg Mimura

 

このアンケートから「必ず参加」の54人に「参加は未定」と答えた55人を加算して、会員の半数にも満たないにも関わらず、22年夏のプレスツアー開催が決まりました。私は、参加しないと答えた10人のうちの1人です。時期尚早!怖くて参加したくない!バーチャルの方が完全に楽だから、身の危険を冒してまで参加する必要が全くない!など、理由は山ほどありました。それでも開催が決まってしまったので、一応、参加登録はしましたが、ドタキャンになる可能性が無きにしも非ずと思い、毎日コロナ速報をチェックしていました。

案の定、開催1週間前の7月21日、オミクロン株の亜型BA.5の新規感染者数が再び増加しており、第7波に入ったことから、スーパースプレッダー・イベントになる可能性が極めて高いと判断して、急遽キャンセルされました。オミクロン株の亜型BA.5は、ウィルスの表面にある突起のスパイク蛋白質にL452RやF486Vという変異を持っていて、ワクチン接種や過去の感染でできた免疫を回避するという特徴があり、ワクチンを接種していても、今までのオミクロン株より感染率が高く、ワクチン接種後の時間経過による感染予防効果の低下や行動制限の緩和、エアコンの使用による屋内の換気不十分などが理由です。

先ず、7月31日〜8月4日に参加が予定されていた地上波局ABC、FX、Hulu、ナショナジオ、Onyxがキャンセルを申し出、引き続き8月8日の地上波局Fox、7月30日のCBS/Paramount+も右に習えと踏み切った為、屋内マスク装着義務化発表前ながら、7月27〜28日の2日間内覧会を予定していた公共放送PBSは、急遽バーチャルに切り替えざるを得なくなりました。

CBS「Superior Donuts」はドーナツショップで繰り広げられる職場コメディ。内容にちなんで、朝食バイキングに並んだカラフルで、超甘そうなドーナツ。(c) Meg Mimura

 

開催スケジュールが7月末から9月中旬までに広がり、下手をすると10月まで延期する局や、2回に分けて開催する局もあります。

7月27〜28日                   PBS公共放送
8月2日〜4日                      ディズニー+、FX(1)、ナショナジオ、オニックス
8月6日                               TCA年会
8月8日                               NBC (1)
8月9〜12日                      ケーブル局、ストリーミング配信局
8月22日                            Fox
9月あるいは10月                CBS、ABC、FX(2)
9月中旬                               NBC (2)

 

ダイナー(列車の食堂車を模した形態のレストラン)のテーマで準備された朝食バイキング。設定は変わっても、ホテルが用意する朝食はワンパターンで開催3日目には、飽き飽きしてくる。たまに、会場でオムレツを焼く実演サービスがあるので、その日を楽しみにする参加者も多い。(c) Meg Mimura

 

日本から見ると、米国のコロナ禍は既に過去の遺物で、もう皆安心しきって、解放感に満ちていると思われているようですが、まだまだ第7派の襲撃に危機感を感じる人も多々います。私は既往症があって免疫が低下している上、超怖がりなので、未だにマスクとシールドで重装備をして外出します。最近はスーパーでもマスク装着の買物客と装着していない買物客が半々で、ロックダウン時の緊張感などもうとっくの昔に吹っ飛んだ感があります。無症状、あるいは検査キットが自宅に常備されていない為、陽性だと知らない保菌者がうようよしているに違いありません。ですから、変な目で見られてでも、我が身を守るしか手がありません。LAは全米で最も神経過敏/用心深いからか、独立記念日の4連休に花火大会やピクニックなど、油断している市民が集まる機会があり、3週間後には新規感染入院患者が急増することを予測していました。状況次第では、更なる拡散を阻止する予防策として、7月28日に、屋内でのマスク装着を義務付ける可能性があると毎日報道されてきました。マスクの効果を証明するデータがない上、再度客足が途絶えるなんて真っ平御免!と不平を申し立てる飲食店や店舗を代表して、ビバリーヒルズ、パサデナ、ロングビーチ、エル・セグンドの4市がマスク装着は、独自に決める!と息巻いていました。大半のLA住民が、今更マスクなんて、冗談でしょ!と全く乗り気ではなかったこともあり、入院患者数が意外にも減少し始めた事実を認め、結局義務付けは見送ることになりました。

私は、6月末からストリーミング配信会社の新ドラマの日本語コーチの仕事をしています。パイロット版の数シーンで、主人公が日本語を喋るので、台本の和訳と台詞を日本語で流暢に言えるように書き換えた上で、「r」と「l」の区別がない、抑揚のない日本語を教えるのに苦労しています。尤も、台詞は日に日に削られて行くのですが. . .(笑)撮影は8月中旬ですが、俳優とのミーティングが決まった途端、これまで体験したことのない、コロナ感染対策が押し寄せてきました。先ずは、接種証明書提出等の煩雑な手続きが求められ、注意事項の分厚い書類が送られてきて、ミーティングの2日前に、往復小一時間かけてコロナ検査を受けに近所のクリニックに出向かねばならず、仕事をするための条件を満たすことに、手間暇がかかりました。

ミーティングは、同僚のコーチ宅で行われましたが、撮影所から派遣されたコロナ検査官の到着を待つこと20分。先ず、マスクやシールドを装着しているかどうか、玄関先で点検を受け、次に過去3日間にコロナの症状があったか?発病している人と近距離で15分以上会話したか?人が大勢集まるイベントに参加したか?などにノーと答えて、やっと家にあがらせるという念の入れようです。検査官が屋内を消毒した後、仕事をするにあたっての注意事項、更にマスクを外す必要がある時の注意事項も延々と聞かされました。ロックダウン以降、外出は必要最小限に抑えていた私にとって、初の仕事は不安だらけでした。コーチング自体は1時間足らずで終わりましたが、結局マスクを外しての1時間。家に辿り着いた時には、悪寒と倦怠感が酷く、すぐ布団に潜り込みました。翌日には、元気になりましたが、「ヤバイ、感染した!」と自分で自分に暗示をかけていたのかも知れません。

2017年夏のプレスツアー最終日の、最後のディナーはフォックスの撮影所の中庭で開催された。(c) Meg Mimura

 

撮影所はあらゆる手段を施して、陽性が出て撮影を中断せざるを得なくなる状況を回避しようと万全を尽くしています。つまり、撮影に必要なAbove-the-line(制作予算上、クリエイティブ/ビジネスに寄与するプロデューサー、監督、主要キャスト等、多額のギャラを計上する必要がある役職についている人達)とBelow-the-line(制作予算上、一般スタッフの人件費や技術的費用を支払う照明、音声、美術、デザイナー等の所謂職人として技術を身につけた人達+その他諸々)が、安心して働けるコロナ陰性のバブルを検査を重ねて行うことで、人工的に創り出しています。ですから、そのデリケートなバブルを壊したくない、壊してまでプレスツアーに顔を出す必要があるのか?を天秤に掛けて、バブル維持をとった局、配信会社側の判断だったのでしょう。身を以て、厳しいコロナ感染対策を体験した今だからこそ、今回のキャンセルは当然と納得した次第です。

7月27〜28日の2日間、PBS公共放送のバーチャル・プレスツアーに参加しましたが、「来年1月にはパサデナでお目にかかります!」と聞く度に、この秋にオミクロン株の亜型BA.5をターゲットにした3回目のブースター接種が受けられるようになると聞き、まだまだ安心は禁物!?と益々長期戦を予想してしまう、悲観的な私です。いずれは、インフルエンザのように、年に1回予防注射を受けるだけで、パンデミックを回避できるようになるというのは、現時点ではお伽話としか思えないのですが. . .

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