VFXアーティストが、業界の闇を告発している。
今回、あるVFXアーティストが、匿名を条件にエンタメ系ニュースメディア「Vulture」の取材に応じ、業界の実情を赤裸々に語った。
この人物の話によると、マーベル作品の制作が大変であることは、VFXメーカーの間では有名な話だという。とあるマーベル作品にたずさわったこの人物は、「半年近くの間、週7日勤務し、毎日残業だった。マーベルはとにかく、VFXアーティストを限界まで働かせる。同僚が私のとなりで突然泣き出したり、電話口で不安からくる発作を起こした人もいた」と打ち明けた。
マーベルは次々にヒット作を生み出していることから、VFXメーカーに対して大きな力を持っているという。そのため、機嫌をそこねると今後の受注に影響しかねない。このことからメーカー側はつねに知恵を絞って、マーベルの機嫌をとり続けているのだそうだ。
なお受注の際には、複数のメーカーが入札を行う。互いに価格競争することから、マーベルにとっては経費節約の一部になっているようだ。受注額が低くなると当然、人手不足につながってしまう。
この人物はこの現状について「マーベル以外の映画では通常10人のVFXアーティストがいるところ、マーベルの映画では自分を含めて2人でやっている。だから、一人一人が抱える仕事量がぼう大なんだよ」と訴えている。
さらにこの人物は、作業にとりかかるとマーベル側から多くの変更を要求されることや、その依頼が期限ギリギリに来ること、普通の人では気づかない細かな部分まで指摘されること、監督の多くがVFXに関する専門的な知識を持ち合わせていないことなど様々な問題点を指摘。
その上でこの人物は、マーベル側にVFXに関する知識を持った監督を起用するなど協力を求め、VFXメーカーとしては低すぎる受注額での入札が発生しないよう、労働組合の結成を提案している。
最後に「私が挙げた問題の中には、どの番組、どのプロジェクトにも存在するものがあります。しかし、他のプロジェクトではここまで残業しません。監督に意見することだってできるんです。マーベルのように圧力をかけてくるクライアントばかりではありません」と強調している。