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Vol. 15 エミー賞の周囲に見る、アメリカ芸能界の大きな推移

2005年10月3日
【またまたやってくれました! エミー賞に話題をぶつけてくる“スキャンダル女王”】
ここまで来たら、もはやこれは偶然ではなく、“狙い”なんじゃなかろうか?

9月のテレビ界最大の話題は、本来エミー賞と相場が決まっている。現に、9月に入った頃からしばらくの間、芸能やエンターテイメント関連のテレビ番組は、「どの番組が、そして誰がエミー賞を受賞するか?」や、「ベストドレッサーは誰の手に?」、果てには「受賞すべき番組は? そして実際に受賞するであろう番組は?」などという予想に終始していたのだった……9月15日までは。

9月15日といえば、エミー賞授賞式のわずか3日前。そんな時期に、いったいぜんたい何があったのか!?年に一度の、テレビ界最大のイベントを吹き飛ばせる存在なんて、ハリウッド広しといえども、そうそう居ないはず。だがそれが、昨年の“芸能ニュース占有時間No.1”の座に輝き、今やスキャンダル女王の座を不動のものにしちゃっているブリトニー・スピアーズともなれば、話は大きく違ってくる。しかも彼女が出産した! とあれば、これはどうしても「芸能番組でお送りする事項リスト」のトップに持ってくるしかなくなってしまうのだ。

ここでひとつ、思い出して頂きたい。そう、あれは今から1年前のこと――エミー賞の前日にブリトニーは電撃挙式を挙げ、全米の芸能リポーターを文字通り右往左往させたのだった! そのおかげで、本来、女優たちのドレスが主役となるはずのレッドカーペットでも、話題の中心となったのはブリトニーのこと。「本日のファッションのテーマは?」などの質問は「ブリトニーが結婚したよ。コメントを一言!」という要求に取って代わられ、乾坤一擲の勝負衣装を身にまとった女優たちをムッとさせたものだった(わたしの予想)。

【ついにテレビで心境告白! 芸能界の話題を二分した、もう一人の女性とは?】
さて、ブリトニーのおかげでかき乱された1年前のエミー賞のレッドカーペットにて、先述のようなブリトニー結婚に関するコメントを求められ、「えっ? 彼女、また結婚したの!?」と、ちょっぴり皮肉めかしてユーモラスなコメントを残した、ジェニファー・アニストン(『フレンズ』のレイチェル役)。このときは、「あなたの素敵なジェームス・ボンド」なんてレポーターに表されていたブラッド・ピットと仲むつまじい姿を見せていたのだが、その後の二人に何が起きたかは、皆さんもご存知の通り。公の場に二人一緒で現れたのは、これが最後となってしまった。あのときは、幸せな結婚生活を送っている先輩として余裕たっぷりの態度をとっていただけに、一年たった現在、このような事態を迎えているのは何とも皮肉だ。

そのジェニファーがエミー賞翌日、ブラピとの離婚公表後初めてテレビに登場し胸の内を語ったのだ。出演した番組は、アメリカで……いや、“世界で最も著名人の素顔を引き出すのが上手い人”と評されている、Oprahなる人物のトークショー。Oprahさんとは、みのもんたと和田アキ子を足して黒柳徹子を振りかけたような人物で、今年で20シーズン目を迎える人気トークショーを一人で切り盛りするホステス。この番組で知られざる一面をさらけ出した(良い意味でも悪い意味でも)著名人は数知れず。番組内で語られたゲストたちの言葉は翌日の新聞の芸能欄トップを飾り、彼女が「面白いのよ!」とコメントした書籍は翌日には本屋の棚から姿を消すというほどに影響力を持った人物なのだ。

そんな番組にジェニファーが登場したのだから、これまた本来はエミー賞の話題で持ちきりなはずの翌週が、今度はジェニファーの話題に終始したのは当然の帰結。

番組では、まずジェニファーは持参のシャンパンで、Oprahと共に番組の20シーズン記念を祝福。そして話題は当然のごとく、ブラピとの離婚のこと、さらに新しい恋の噂にと移行していった。

ジェニファーは、ブラピとの一連の出来事を「人生で起きたことの中でも、最も辛かったことのひとつ」と認めた上で、それでも「新しい恋への準備はできている」と発言。さらに、現在話題になっている俳優のヴィンス・ヴォーンとの仲について話を振られると「お~、Oprah。ゴシップ誌なんて信じないでよ~」とさらりとかわしてみせるなど、約30分ほどのトークショーを終始和やかな雰囲気で過ごし、これまでの彼女の沈黙に不安を募らせていたファンの胸を、ホッと撫で下ろさせてみせたのだった。

かくのごとく、エミー賞とその周囲を騒がす事柄は、この1年という歳月の間に大きく変容した。ブリトニーは妻から母になり、ジェニファーは妻からシングルに。昨年は『フレンズ』『セックス&シティ』の両人気番組が終わった直後で「コメディドラマの終焉」なんてフレーズを多く耳にしたが(そして翌年には『Hey!レイモンド』も終わりその傾向に拍車が掛かるかと思われた。ちなみに『Hey!レイモンド』は、今年のエミー賞のコメディ作品部門を受賞)、この一年は『デスパレートな妻たち』がドラマ界最大のヒット作となり、視聴者層という意味でも新境地を開いて見せた。

エミー賞というイベントをひとつの計測点として芸能界の位相を観たとき、その変化と相関関係に思わずしみじみしてしまった、2005年の秋でした。