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Vol.16 ドラマの宣伝はココで行うべし!! “レイト・ショー”を分析する

2005年11月1日
アメリカテレビ界に欠かせない存在――それがレイト・ショー!
「過剰広告の国」アメリカでは、ドラマや映画のプロモーションをいかに効果的に行うかは、ときとして作品の内容以上に大切だったりする。テレビのCM枠、雑誌広告、街中に乱立する看板、市内を縦横するバスの車体に貼られているポスター等など、24時間365日、アメリカ中のいたるところにプロモーションはあふれかえっているのだ。そして先に挙げたもの以外に、もうひとつ忘れてはならないビッグな広告手段……それが“レイト・ショー”の存在だ。 

草木もねむる丑三つ時――よりは少し早い夜の11時、それは各局で一斉に始まる。そう、レイト・ショーのお時間だ。CBS、NBC、ABCなどの主要キー局のどれもが、実に似た構造のショーを、まさに「いっせいのせっ!」状態で流し始めるのだ。

レイト・ショーのスタイルは、どの局番でも一貫している。まず重要なのが、番組ホスト。基本的には一人のホストが、番組の進行からコント、トークのお相手まですべてこなすことになる。なので、このホストの人柄や話術、アドリブ力が、番組の質やテイストを決めることになるのだ。

そして次に欠かせない要素が、生バンド。どういう訳か、本当にすべてのレイト・ショーが5~7人からなるバンドを持っていて、彼らがオープニングやCMに入る際の音楽を生で演奏するのだ。さらに彼らは、時にホストとの掛け合い相手を務めもする、かなり重要なポジション。ホストがジョークを言った直後に“ドドン・ズン・ジャ~ン”(日本でいう所の、コントのオチの後の♪パラリラリン♪といった感じの効果音)などとドラムで合いの手を入れたりし、一部の視聴者をカチンとさせることも彼らの大切な役目である。

番組の流れも、これまたバッチリ様式化されている。まずは、生バンドの生演奏によるオープニングミュージックとともに、ホストが舞台袖から登場。観客からのスタンディング・オベーションを受けた後に、時事ネタのオープニング・ジョークを4つほどかます。この、とりあげる“時事”は芸能ネタや政治ネタが主だが、このネタの配分やジョークにする際の調理方法にこそ、各々のホストのキャラクター性が透けて見え、さらに番組そのものの空気を決定付けることになる。

オープニングジョークで軽く観客席を暖めたあとは、芸人を使ったコントなどを挟んでさらに観客のテンションを高め、そうしてようやく、番組のメインディッシュであるところのゲスト・トークに移行する。通常、ゲストは一回の放送あたり2名(場合によっては2組)登場。そして最後は、ミュージシャンが登場して新譜を演奏して終了……というのが、一貫して変わらぬ展開である。

ゲスト・トーク……それは別名「コマーシャル・タイム」
さて、このレイト・ショーに登場する“ゲスト”が、新しく始まるテレビ番組や映画、場合によっては新刊の書籍などの宣伝のために登場することは、今更説明するまでもないでしょう。ホストと面白おかしい会話を交し、そして番組や映画のシーンの一部を公開、そしてちょっとした楽屋の裏話などを披露して「新番組『○○』は、今週の△曜日午後□時から放送開始!」とホストに言わせれば「プロモーションの完了!」となる訳だ。そしてアメリカの「すごいな~」と思うところは、他局の宣伝でも平気でバンバンやるところ。ABCのトークショーにNBCの新番組の出演者がゲストとして登場する、などということも日常茶飯事。ホストも普通の顔で、他局の番組の宣伝口上を述べているのだ。

ということで、新番組の開始直前直後である最近では、レイト・ショーも非常に活気に満ちている。2シーズン目を迎え、『CSI』を抜いて視聴者数1位の座をつかむことにデスパレート(必死)な『デスパレートな妻たち』は、テリー・ハッチャーやニコレット・シェリダンといった出演者たちを他局のレイト・ショーに送り込んでいるし、あるいは『セックス・アンド・ザ・シティ』でおなじみのキム・キャトラルは、著書『Sexual Intelligence』を自慢のセクシィ・ボイスで売り込んでいるのだった。

コメディアンの需要が日々高まっている理由、それは……!?
そして各局のレイト・ショーを見ていて、ひとつ気が付いたことがある。これらレイト・ショーに出てくるゲストは、みんなそれなりにオモシロい。もちろんクスリともこない人もいるし、超大モノ俳優/女優ともなれば面白い必要もない訳だが、やはり番組側(レイト・ショー)としても、面白いゲストに登場していただいた方が番組として成り立ちやすい。そして宣伝したいドラマ側としても、面白い出演者を送り込んだ方が、宣伝効果が大きいと踏んでいるはず。そのためだろうか、本来シリアス・ヒューマンドラマであるはずの『ER』は、今シーズンからコメディアンのジョン・レグイザモ(日本人になじみの深いところでは、映画『スーパーマリオ』でルイージを演じる)を新キャストとして起用。そしてジョンは、各レイト・ショーに登場しては「いや~、この俺が医者を演じるなんてね~」などとおどけながら、番組を宣伝するという責務をバッチリ果たしているのだった。

レイト・ショーは、ドラマや映画の大きな宣伝の場である。そして、レイト・ショーに登場するゲストは、各作品の伝達者である。以上のことを踏まえ、最近は多くのシリアス系ドラマも、コメディアンを“宣伝部長”として起用しているの――というのは、ちょっとうがった見方すぎかしらん?