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LA直送!海外ドラマやじうまレポート詳細

Vol.17 2005年新ドラマ、生き残りをかけた仁義なき戦い中間報告

2005年12月9日
この秋、新たに始まったドラマは30を超える。だがその中で、来年も続くドラマはいくつあるのだろうか? 果たして、テレビ界の歴史に残るような名作は生まれるのだろうか? 今回は、全米№1エンターテイメント番組『E!』が行ったアンケートを元に、この秋の“ヒット予備軍”&“打ち切り予備軍”を紹介しよう。

先が気になる展開で視聴者をくぎ付け! 『Prison Break』
この秋の最大級の評価を得ているのが、『Prison Break』。冤罪(と思われる)により死刑囚となった兄を助けるため、自らも罪を犯して同じ刑務所に入り、兄と共に脱走を試みる弟。刑務所の中で仲間を募り、綿密に刑務所内をチェックし、刻一刻と変化していく状況の中で計画を調整し実行に向け進めていく様は、実にスリリングでクール! 

正に現代版『大脱走』といった趣だ。連続ドラマなので次回へと話をつなげながらも、一話の中で毎回惜しみなく事件がおきていくので、視聴者は先の展望に心を引っ張られながら、同時に毎回カタルシスも得られる。 

ただ、このドラマに緊張感を与えている最大の要因は、「兄の死刑執行日」というタイムリミットの存在。アメリカの人気ドラマといえば5~10年ほど続くことも珍しくないが、この作品ばかりは、短期集中型の名作となりそうだ。 おっとそうそう、人気の要因の一つに、兄を助けようと奮闘する弟を演じるグリグリいがぐり頭のWentworth Millerくんが超キュートであることも、付け加えておこう。

第二の『フレンズ』誕生なるか!? 『How I Met Your Mother』 
昨年は『フレンズ』、そして今年は『レイモンド』が、それぞれ10年近くに及ぶ歴史に終止符を打ち、そのころから全米では一斉に「シットコムは終わった」という言葉がささやかされだした。確かに数字を見てみても、ここ数年の人気ドラマは犯罪モノばかり。ところがそんな時代の趨勢に逆行するかのように始まったベタベタのシットコムが、現在高い評価を受けている。 

『How I met your mother』は、そのタイトルが示す通り、「いかにしてボクが、キミのお母さんと出会ったか」――つまり、父親が子供たちに、自分と母親とのロマンスを語るという回想形式で進んでいく。

物語の主要メンバーは、物語の語り手である“父親”。その恋のお相手である“母親”。そして彼らの3人の友人という、計5人(男3、女2)。コミカルな展開の中にも、人生の岐路に立ちかかった若者たちの真剣な苦悩や、友人や家族との心の交流がシットリと描かれるあたりはアメリカのシットコムの王道であり、そして秀逸な点。

約10話の放送が終了した時点で、ここまでこのドラマを観てきた視聴者のうち10人に7人が、「今後も観つづけていく」と回答している。

果たしてこの『How I Met Your Mother』、死滅の危機に瀕しているシットコムの救世主となるか!?

あまりに“表層的”? 『Surface』
昨年スタートし大ヒットしたドラマに、『Lost』(ABC)がある。無人島に軟着陸した飛行機の乗客たちが、この島に住む謎のクリーチャーの驚異におびえながらも生き延びるための道を、あるときは協力しながら、あるときは対立しながら模索する……というパニックものだが、その二匹目のどじょうを狙ったかのような作品が、『Surface』(NBC)である。『Lost』の舞台が無人島なら、こちらはずばり、海中世界! 深海を舞台にしてのパニックものである。 

海で未知の生物と遭遇したと言う事件が立て続けに起こるなか、その正体を突き止めるべく調査に乗り出した海洋学者たち。一部の情報を隠蔽しようと画策する政府との対立や、水中でのトラウマに悩まされる調査員、さらに危険な生物を秘密裏に飼う人物など、様々な事件が多元的に起こっていく。ところが、そんな盛りだくさんな内容にも関わらず「作品全体が緊張感に欠ける」「政府のやり口などが、実にチープ」と、いまいち不評。アンケート結果でも、「今後はもう観ない」との回答が83%と、はやくも沈没寸前な雰囲気である。 

この作品は、今年の夏から秋にかけて最もCMを観たドラマである。水中が舞台ということもあり、潜水艦のセットやCGを駆使しての映像などはそれなりに凝っていて、「新ドラマの中で最も予算の掛かっている作品」とも言われている。2年前は「全米で最も視聴率の高い局番」だったNBCは、現在なんと4位。ジリ貧なときは何をしてもダメなものなのかと、個人的にNBCファンなわたしとしては(何故なら、NBCのレイトショー『コナン・オブライエン』が好きだから)寂しくなってしまう。

犯罪モノにも外れあり!『Just Legle』
猫もしゃくしも犯罪モノに夢中なアメリカドラマ情勢の昨今ではあるが、その中にあっても、当然外れドラマはある。むしろ、犯罪ドラマ人気に当てこんだかのような作品であるがために反感を買った感すらある。 

今回のアンケートで、視聴者のうち88%が「もう観ない」と答えた『Just Legal』は、弁護士のお話である。天才的才覚の持ち主でありながら、あまりに若いために大手法律事務所での職を得られなかった若手弁護士(19歳!?)は、リタイア寸前のロートル弁護士の下で働くこととなる。持ち前の頭脳で難事件の解決に取り組む若手弁護士。だが彼は、若さゆえ経験不足であり、そして傲慢でもある。ロートル弁護士は、そんな彼に経験から得られるアドバイスを与え、さらには心の大切さも説いていくのだった……というプロットであるこのドラマは、犯罪モノのように見せかけて、その実、親子ほど歳の離れた二人の弁護士の心の交流を描いたヒューマンドラマ。クールな推理や最新テクノロジーを駆使した科学捜査を期待している視聴者は、裏切られたような気分になってしまい憎さ百倍――という悲しい結果を招いてしまったようだ。

という訳でこの秋のドラマ人気アンケートは、「犯罪モノに外れナシ」と「シットコムは死んだ」という二つの定石を揺るがすような結果となった。とは言え、まだまだシーズンは始まったばかり。最終評価を下すには早すぎるだろう。 

それ以上に、今秋のドラマで視聴者数ランクのトップ20に入ってきているものは、実は皆無に等しい……。『デスパレートな妻たち』『Lost』という二大センセーションを生み出した昨年に比べると、ちょっともの寂しい2005年の秋でした。