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Vol.21 TVドラマ界が生んだ二大女優、ジェニファー&サラの、“スクリーン女優”としての評価は!?
2006年6月7日
ドラマから映画へ――順調にキャリアを積み上げてきたかに見える二人
近年、テレビ界が生んだ最大の人気女優――それが ジェニファー・アニストン(『フレンズ』のレイチェル役)とサラ・ジェシカ・パーカー(『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリー役)であることは、多くの人にとって異論のないところだろう。二人は過去約10年間に及び、スタイリッシュな都会暮らしに憧れる若い女性たちの羨望を一身に集め、そして男性たちにとっては「高望みだけれど“高嶺の花”という程ではなく、頑張って背伸びすれば手が届きそうな女性」として“アメリカン・スイートハート”の地位を不動の物にしてきた。その両者が奇しくもほぼ同時期にTVドラマ界を去り、活躍の場を映画のスクリーンに移してから、約2年の歳月が過ぎた。
2005年以降、両者が出演した映画(カッコ内はジャンル)を列挙すると、以下のようになる。
ジェニファー・アニストン
『derailed』2005年(サスペンス/ロマンス)
『Rumor has it...』2005年(コメディ/ドラマ)
『Friends with Money』2006年(コメディ/ドラマ)
『The Break-Up 』2006年(コメディ/ロマンス)
サラ・ジェシカ・パーカー
『Strangers with Candy』2005年(コメディ)
『The Family Stone』2005年(コメディ/ドラマ/ロマンス)
『Failure to Launch』2006年(コメディ/ロマンス)
二人とも、なんとも働き者である。かくのごとく、これまで歩んできた道程や現在求める道にも、大きな類似性が見られるジェニファーとサラ。出演映画のジャンルも、二人の経歴を反映するかのようにコメディとロマンスがずらりと並ぶ。
ところが、である。両者が出演してきた映画内での役割を注意深く見てみると、実は大きな相違点があることに気が付く。ジェニファーが最初から主役クラスの配役であったのに対し、サラは最初の2作においては、脇役や助演的な役どころを選んできたのだ。
結果は、サラに吉と出たと言えるだろう。TVで演じてきたキャラクターとは目先を変えて映画に望んだサラが「なかなか映画的な演技もできるじゃないか」と、それなりの評価を得ることに成功したのに対し、ドラマで歩んできた王道そのままに映画界に踏み込んだジェニファーは「映画女優としては落第点」「テレビに帰れ!」と、批判の集中砲火を浴びてしまったからだ。
そもそもアメリカのエンターテインメントビジネスでは、テレビ俳優と映画俳優の間には埋めがたき格差があるとされてきた。最近ではその差は埋まりつつあると言われているが、それでも映画評論家たちの間では、テレビ界で得た名声をひっさげて映画界に乗り込んできた彼女たちの力量に対し、懐疑的な見方が占めていたのは間違いないだろう。本人が望んだかどうかはいざ知らず、ジェニファーはそんな“評論家迎撃地帯”に、正面から突っ込んでいってしまったのだ。
一方のサラも、ここに来ていよいよ主役クラスの役どころに挑戦。今年公開された『Failure to Lunch』はクレジットも2番目で、しかもロマンスのお相手は、『People』誌が“最もセクシーな男性”に選んだマシュー・マコノヒー。
だがやはりこの映画では、「他の俳優陣とテンポが合っていない」「リアリティに欠けた人物描写」と、かなりの酷評を受けている。地雷地帯を迂回し映画界に入ってきたサラにとっても、ここからが正念場となりそうだ。
ついに映画評論家から賞賛されたジェニファー! だがファンの反応は……
さて、先にも述べたとおり、『フレンズ』終了後の映画本格進出以降、評論家たちの舌鋒の餌食となってしまったジェニファー。だがその彼女が、唯一最大級の賛辞を得た映画がある。それが、この4月に公開されたばかりの『Friends with Money』だ。
映画自体は、「ロサンゼルスで暮らす、付き合いの長い4人の女友達の友情物語。4人のうち3人は既婚者で、経済面でもキャリア的にも水準を上回る暮らし向き。だが残る1人だけは、未婚なうえさほど裕福でもなく、さらには最近失業したためメイドとして生計を立てている。そこで3人の友人たちは、彼女を精神的にも経済的にも支援してあげるのだが……」というような内容。そして、その“みんなから同情される友人”を演じるのが、ジェニファーその人だ。 この映画では、これまでジェニファーに悪口雑言を浴びせかけていた評論家たちが一転、「素晴らしい演技」「彼女のキャリアの中で、最も自然体でリラックスしたパフォーマンス」「ハマリ役を得た」と、賛辞に次ぐ賛辞。ようやく、映画女優としての評価と功績を得たか思えた。ところがこの映画、ファンの間ではカラッきし人気が無いのだ。というより、みんな激怒している。
曰く「こんなのコメディじゃない!」「ジェニファーの魅力がまるで引き出せてない!」「フラストレーションが溜まるばかり!」と、一同「金返せ!」的な剣幕なのだ。 わたしが思うに、この映画はタイトルの付け方から配役まで、非常にトリッキーに仕組まれている。製作サイドが意図的にやったことだろうが、ジェニファーが主演でタイトルには『Friends』の文字が入り、さらには「ロサンゼルスで暮らす4人の親友の物語」などというプロットと「コメディ」というジャンルを冠する。こんなことをされた日には、誰もが“『Friends』L.A.版”を想像するし、結果、『Friends』ファンは喜び勇んで映画館にはせ参じた訳である。
だがそこで展開されたのは、コメディの手法を取りながらも都会生活の暗部や人間関係(特に女友達)の多面性を鋭く抉った、かなりシニカルな群像劇。ジェニファーに“レイチェル”を期待したファンは、思いっきり肩透かしを喰らった訳である。そして、ものごっつく怒った訳である。
レイチェル&キャシーの幻影に苦しめられるジェニファーとサラ
絶賛する評論家に、落胆するファン。だがこの映画を巡る評論家と視聴者の意見の乖離こそが、映画女優としてのジェニファーが抱えるジレンマそのものだという気がしてならない。
結局のところ、ジェニファーにとってもサラにとっても、映画の世界で活躍するにあたりネックとなっている存在は同じ。つまりは、長年TVドラマで演じてきたキャラクターのイメージが強すぎるのだ。
ジェニファーにとってはレイチェル・グリーンの、サラにとってはキャリーの印象を払拭することこそが、彼女たちが映画女優としての成功を収める上の最優先事項となる。だがファンは、未だに彼女たちに過去のキャラクターの幻影を重ねる。テレビドラマでの大成功が映画進出の足がかりになったのは疑う余地もないが、その成功が足かせにもなっているという皮肉。とはいえこの葛藤期は、映画女優として次のステージに進むために通らなければならない隘路である。
今後彼女たちがアピールしていくのは、ドラマ時代に付いたファンか、それとも映画を愛する人々なのか……? これからの二人の出演作品と配役を、興味深く見守っていきたいと思う。
PS:ちなみに今後ジェニファーが出演する映画のジャンルは、3作品のうち2つが“サスペンス/スリラー”。サラは“ドラマ”→“サスペンス”→“コメディ”と推移していく予定。
近年、テレビ界が生んだ最大の人気女優――それが ジェニファー・アニストン(『フレンズ』のレイチェル役)とサラ・ジェシカ・パーカー(『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリー役)であることは、多くの人にとって異論のないところだろう。二人は過去約10年間に及び、スタイリッシュな都会暮らしに憧れる若い女性たちの羨望を一身に集め、そして男性たちにとっては「高望みだけれど“高嶺の花”という程ではなく、頑張って背伸びすれば手が届きそうな女性」として“アメリカン・スイートハート”の地位を不動の物にしてきた。その両者が奇しくもほぼ同時期にTVドラマ界を去り、活躍の場を映画のスクリーンに移してから、約2年の歳月が過ぎた。
2005年以降、両者が出演した映画(カッコ内はジャンル)を列挙すると、以下のようになる。
ジェニファー・アニストン
『derailed』2005年(サスペンス/ロマンス)
『Rumor has it...』2005年(コメディ/ドラマ)
『Friends with Money』2006年(コメディ/ドラマ)
『The Break-Up 』2006年(コメディ/ロマンス)
サラ・ジェシカ・パーカー
『Strangers with Candy』2005年(コメディ)
『The Family Stone』2005年(コメディ/ドラマ/ロマンス)
『Failure to Launch』2006年(コメディ/ロマンス)
二人とも、なんとも働き者である。かくのごとく、これまで歩んできた道程や現在求める道にも、大きな類似性が見られるジェニファーとサラ。出演映画のジャンルも、二人の経歴を反映するかのようにコメディとロマンスがずらりと並ぶ。
ところが、である。両者が出演してきた映画内での役割を注意深く見てみると、実は大きな相違点があることに気が付く。ジェニファーが最初から主役クラスの配役であったのに対し、サラは最初の2作においては、脇役や助演的な役どころを選んできたのだ。
結果は、サラに吉と出たと言えるだろう。TVで演じてきたキャラクターとは目先を変えて映画に望んだサラが「なかなか映画的な演技もできるじゃないか」と、それなりの評価を得ることに成功したのに対し、ドラマで歩んできた王道そのままに映画界に踏み込んだジェニファーは「映画女優としては落第点」「テレビに帰れ!」と、批判の集中砲火を浴びてしまったからだ。
そもそもアメリカのエンターテインメントビジネスでは、テレビ俳優と映画俳優の間には埋めがたき格差があるとされてきた。最近ではその差は埋まりつつあると言われているが、それでも映画評論家たちの間では、テレビ界で得た名声をひっさげて映画界に乗り込んできた彼女たちの力量に対し、懐疑的な見方が占めていたのは間違いないだろう。本人が望んだかどうかはいざ知らず、ジェニファーはそんな“評論家迎撃地帯”に、正面から突っ込んでいってしまったのだ。
一方のサラも、ここに来ていよいよ主役クラスの役どころに挑戦。今年公開された『Failure to Lunch』はクレジットも2番目で、しかもロマンスのお相手は、『People』誌が“最もセクシーな男性”に選んだマシュー・マコノヒー。
だがやはりこの映画では、「他の俳優陣とテンポが合っていない」「リアリティに欠けた人物描写」と、かなりの酷評を受けている。地雷地帯を迂回し映画界に入ってきたサラにとっても、ここからが正念場となりそうだ。
ついに映画評論家から賞賛されたジェニファー! だがファンの反応は……
さて、先にも述べたとおり、『フレンズ』終了後の映画本格進出以降、評論家たちの舌鋒の餌食となってしまったジェニファー。だがその彼女が、唯一最大級の賛辞を得た映画がある。それが、この4月に公開されたばかりの『Friends with Money』だ。
映画自体は、「ロサンゼルスで暮らす、付き合いの長い4人の女友達の友情物語。4人のうち3人は既婚者で、経済面でもキャリア的にも水準を上回る暮らし向き。だが残る1人だけは、未婚なうえさほど裕福でもなく、さらには最近失業したためメイドとして生計を立てている。そこで3人の友人たちは、彼女を精神的にも経済的にも支援してあげるのだが……」というような内容。そして、その“みんなから同情される友人”を演じるのが、ジェニファーその人だ。 この映画では、これまでジェニファーに悪口雑言を浴びせかけていた評論家たちが一転、「素晴らしい演技」「彼女のキャリアの中で、最も自然体でリラックスしたパフォーマンス」「ハマリ役を得た」と、賛辞に次ぐ賛辞。ようやく、映画女優としての評価と功績を得たか思えた。ところがこの映画、ファンの間ではカラッきし人気が無いのだ。というより、みんな激怒している。
曰く「こんなのコメディじゃない!」「ジェニファーの魅力がまるで引き出せてない!」「フラストレーションが溜まるばかり!」と、一同「金返せ!」的な剣幕なのだ。 わたしが思うに、この映画はタイトルの付け方から配役まで、非常にトリッキーに仕組まれている。製作サイドが意図的にやったことだろうが、ジェニファーが主演でタイトルには『Friends』の文字が入り、さらには「ロサンゼルスで暮らす4人の親友の物語」などというプロットと「コメディ」というジャンルを冠する。こんなことをされた日には、誰もが“『Friends』L.A.版”を想像するし、結果、『Friends』ファンは喜び勇んで映画館にはせ参じた訳である。
だがそこで展開されたのは、コメディの手法を取りながらも都会生活の暗部や人間関係(特に女友達)の多面性を鋭く抉った、かなりシニカルな群像劇。ジェニファーに“レイチェル”を期待したファンは、思いっきり肩透かしを喰らった訳である。そして、ものごっつく怒った訳である。
レイチェル&キャシーの幻影に苦しめられるジェニファーとサラ
絶賛する評論家に、落胆するファン。だがこの映画を巡る評論家と視聴者の意見の乖離こそが、映画女優としてのジェニファーが抱えるジレンマそのものだという気がしてならない。
結局のところ、ジェニファーにとってもサラにとっても、映画の世界で活躍するにあたりネックとなっている存在は同じ。つまりは、長年TVドラマで演じてきたキャラクターのイメージが強すぎるのだ。
ジェニファーにとってはレイチェル・グリーンの、サラにとってはキャリーの印象を払拭することこそが、彼女たちが映画女優としての成功を収める上の最優先事項となる。だがファンは、未だに彼女たちに過去のキャラクターの幻影を重ねる。テレビドラマでの大成功が映画進出の足がかりになったのは疑う余地もないが、その成功が足かせにもなっているという皮肉。とはいえこの葛藤期は、映画女優として次のステージに進むために通らなければならない隘路である。
今後彼女たちがアピールしていくのは、ドラマ時代に付いたファンか、それとも映画を愛する人々なのか……? これからの二人の出演作品と配役を、興味深く見守っていきたいと思う。
PS:ちなみに今後ジェニファーが出演する映画のジャンルは、3作品のうち2つが“サスペンス/スリラー”。サラは“ドラマ”→“サスペンス”→“コメディ”と推移していく予定。
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