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Vo.26 『ER』の復活に若手ドラマの急成長! 2006年は、病院ドラマ躍進の年!
2006年12月18日
突然ですが皆さんは、アメリカの地上波で放送されているドラマのうち、犯罪/捜査モノがいくつあるかご存知でしょうか? ……ごめんなさい、正直わたしも、把握していません。パッと現在思い当たるだけで、『CSI』、そのスピンオフである『CSI:マイアミ』『CSI:NY』、さらには『Law & Order』(この番組もスピンオフ2本アリ)『Kidnapped』『Without a trace』『Cold Case』『Criminal mind』『NCIS』『Numbers』『24』『Prison Break』と、文字通り枚挙に暇がない状態。しかもそのほとんどが好評と言うのだから、テレビ局側からしてみれば、作らない理由がない、と言ったところかもしれない。週間の視聴者数ランキングを見てみても、トップ10に『CSI』を筆頭に『NCIS』『Criminal mind』は毎回のように顔を出している。この1年ほどは「犯罪ドラマブームも頭打ち」と言われてはいるが、以前人気があることは数字が証明しているのだった。
ところが最近、この犯罪ドラマに強力なライバルが登場した。それが“病院ドラマ”である。病院ドラマも、ドラマの形態としては王道中の王道であり、いまさら「ブーム」も何もあったものではないが、過去数年の衰退っぷりから比べると今年は例年にない病院ドラマ当たり年なのだ。
【『フルハウス』俳優の活躍で、捲土重来の『ER』】
まずは『ER』の復活! 今年で13シーズン目を迎える『ER』は、現在放送されているドラマの中でも2番目の古株。90年代には年間視聴者数1位を獲得するなど、まさにドラマ界の王様だった作品だ。だが、人気キャストのジョージ・クルーニーの退去(1999年)あたりを境に、数字は急下降。昨年は年間視聴者数で30位にまで落ち、打ち切りを心配する声も上がっていたほどだ。
それが今年のシリーズでは、再びトップドラマの仲間入りを果たす好調っぷり。各局のトップドラマが集結する木曜日のゴールデンタイムという大激戦区にあり、1500万人前後の視聴者を集める健闘を見せている。1位の『CSI』が2000万人前後の視聴者数ということ、そしてかつての栄光を考えるとやや物足りない数字に映るが、昨年の低迷期に比べれば倍ほどの人数なのだ。これを大復活と言わずして、何と言おう?
そして、この復活劇の最大の立役者と言われているのが、満場一致でジョン・ステイモス。彼に関しては「『フルハウス』のジェシーおじさん」と言った方が解る人も多いだろう。『フルハウス』以降の約10年間、それこそジェシーのごとくドラマや映画に細々と出演しながらもなかなかヒットの出なかったジョンだが、ここに来て鮮やかなカム・バック! ジョンが演じるのは、イラク戦争に出兵していた退役軍人インターンという役どころだが、とにかく「『ER』の視聴者数は、彼の出演時間に比例して増減する」と言われるほどのキーパーソンなのだ。『TV Guide』誌では「新たなクルーニー」と紹介され、『Peple』誌のセクシー俳優特集では「ベスト・カムバック賞」に選出されたジョン。そんな彼の活躍が、緊急事態にあった『緊急病棟』を救ったと言うわけである。
【全く異なる雰囲気を有する、二つの新進気鋭病院ドラマ】
さて、この『ER』に次いで注目したいのが、『HOUSE M.D.』と『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』という、それぞれ今年で3シーズン目を迎える病院ドラマだ。
ワルの色香が漂う中年男の魅力を全面に押し出した『HOUSE M.D.』の人気は、やはり主役のハウス医師を演じるヒュー・ローリーの才覚に拠るところが大きい。長身で眼光が鋭く、ブリティッシュアクセント(ヒューはイギリス人)の強い英語を操る彼は、アメリカ人にとってもどこか“異質”を感じさせる存在だ。また、アメリカ人の多くも欧州に対して漠然とした憧憬を抱いているようで、「ブリティッシュアクセント=セクシー/知的」という認識もある。かてて加えて、ヒューはケンブリッジ大学出身で、自ら映画の脚本や小説も書くという筋金入りのインテリ。そのような彼の出自からにじみ出る艶っぽさが、放送3年目にして広く認知されての大ブレークのようだ。
『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』は、昨今の病院ドラマ人気の追い風も受け今年から群雄割拠の木曜日に参戦したが、なんと『CSI』を上回るほどの全米ナンバー1ドラマにまで成長した。『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』は、他の病院ドラマ同様、インターンたちの病院での奮闘ぶりをコミカルに描いた作品だが、実はこちら、いろいろと批判も受けている。その多くが「医者や病院の描写が不正確」というもの。あるいは、「看護婦をバカにしたようなセリフが多い」というのも批判の槍玉に上がっているが、そのようなネガティブな要素が話題になるのも人気ドラマの宿命。むしろ、同ドラマの影響力を裏付けていると言える。また、ドラマとしての娯楽性を優先し多くの要素を誇張してはいるものの、その一方で、出演者たちはこのドラマに挑むにあたり、実際の医者の仕事や手術の様子を見学してきたのだという。それら、綿密な調査や事前学習に立脚したデフォルメ表現だからこそ、根っこの部分で視聴者を引き付けるリアリティがあるのかもしれない。
上記の3つのドラマ以外にも、昨年は放送がスキップされ番組終了が確実視されていた『Scrubs』が帰ってくるなど、何かと病院ドラマが話題の今シーズン。果たして何でなのか―――その理由をぼんやり考えてみた。で、思い至ったのが、今年アメリカは中間選挙の年で、医療費の高騰対策が政局を分けるのではと話題になっていた、ということ。 ちょっと憂鬱な話になってしまうが、政府ではなく民間企業が医療保険を管理しているアメリカでは、救急車ひとつ乗るにもかなりの金が掛かってしまい、正直、有名大学病院などは庶民の手の届く存在ではない。もしかしたら、そのようなアメリカの医療事情が、病院に対する関心や羨望を助長しており、結果として病院ドラマブームにつながったのかも……などと想像してみた、年の瀬でした。
ところが最近、この犯罪ドラマに強力なライバルが登場した。それが“病院ドラマ”である。病院ドラマも、ドラマの形態としては王道中の王道であり、いまさら「ブーム」も何もあったものではないが、過去数年の衰退っぷりから比べると今年は例年にない病院ドラマ当たり年なのだ。
【『フルハウス』俳優の活躍で、捲土重来の『ER』】
まずは『ER』の復活! 今年で13シーズン目を迎える『ER』は、現在放送されているドラマの中でも2番目の古株。90年代には年間視聴者数1位を獲得するなど、まさにドラマ界の王様だった作品だ。だが、人気キャストのジョージ・クルーニーの退去(1999年)あたりを境に、数字は急下降。昨年は年間視聴者数で30位にまで落ち、打ち切りを心配する声も上がっていたほどだ。
それが今年のシリーズでは、再びトップドラマの仲間入りを果たす好調っぷり。各局のトップドラマが集結する木曜日のゴールデンタイムという大激戦区にあり、1500万人前後の視聴者を集める健闘を見せている。1位の『CSI』が2000万人前後の視聴者数ということ、そしてかつての栄光を考えるとやや物足りない数字に映るが、昨年の低迷期に比べれば倍ほどの人数なのだ。これを大復活と言わずして、何と言おう?
そして、この復活劇の最大の立役者と言われているのが、満場一致でジョン・ステイモス。彼に関しては「『フルハウス』のジェシーおじさん」と言った方が解る人も多いだろう。『フルハウス』以降の約10年間、それこそジェシーのごとくドラマや映画に細々と出演しながらもなかなかヒットの出なかったジョンだが、ここに来て鮮やかなカム・バック! ジョンが演じるのは、イラク戦争に出兵していた退役軍人インターンという役どころだが、とにかく「『ER』の視聴者数は、彼の出演時間に比例して増減する」と言われるほどのキーパーソンなのだ。『TV Guide』誌では「新たなクルーニー」と紹介され、『Peple』誌のセクシー俳優特集では「ベスト・カムバック賞」に選出されたジョン。そんな彼の活躍が、緊急事態にあった『緊急病棟』を救ったと言うわけである。
【全く異なる雰囲気を有する、二つの新進気鋭病院ドラマ】
さて、この『ER』に次いで注目したいのが、『HOUSE M.D.』と『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』という、それぞれ今年で3シーズン目を迎える病院ドラマだ。
ワルの色香が漂う中年男の魅力を全面に押し出した『HOUSE M.D.』の人気は、やはり主役のハウス医師を演じるヒュー・ローリーの才覚に拠るところが大きい。長身で眼光が鋭く、ブリティッシュアクセント(ヒューはイギリス人)の強い英語を操る彼は、アメリカ人にとってもどこか“異質”を感じさせる存在だ。また、アメリカ人の多くも欧州に対して漠然とした憧憬を抱いているようで、「ブリティッシュアクセント=セクシー/知的」という認識もある。かてて加えて、ヒューはケンブリッジ大学出身で、自ら映画の脚本や小説も書くという筋金入りのインテリ。そのような彼の出自からにじみ出る艶っぽさが、放送3年目にして広く認知されての大ブレークのようだ。
『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』は、昨今の病院ドラマ人気の追い風も受け今年から群雄割拠の木曜日に参戦したが、なんと『CSI』を上回るほどの全米ナンバー1ドラマにまで成長した。『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』は、他の病院ドラマ同様、インターンたちの病院での奮闘ぶりをコミカルに描いた作品だが、実はこちら、いろいろと批判も受けている。その多くが「医者や病院の描写が不正確」というもの。あるいは、「看護婦をバカにしたようなセリフが多い」というのも批判の槍玉に上がっているが、そのようなネガティブな要素が話題になるのも人気ドラマの宿命。むしろ、同ドラマの影響力を裏付けていると言える。また、ドラマとしての娯楽性を優先し多くの要素を誇張してはいるものの、その一方で、出演者たちはこのドラマに挑むにあたり、実際の医者の仕事や手術の様子を見学してきたのだという。それら、綿密な調査や事前学習に立脚したデフォルメ表現だからこそ、根っこの部分で視聴者を引き付けるリアリティがあるのかもしれない。
上記の3つのドラマ以外にも、昨年は放送がスキップされ番組終了が確実視されていた『Scrubs』が帰ってくるなど、何かと病院ドラマが話題の今シーズン。果たして何でなのか―――その理由をぼんやり考えてみた。で、思い至ったのが、今年アメリカは中間選挙の年で、医療費の高騰対策が政局を分けるのではと話題になっていた、ということ。 ちょっと憂鬱な話になってしまうが、政府ではなく民間企業が医療保険を管理しているアメリカでは、救急車ひとつ乗るにもかなりの金が掛かってしまい、正直、有名大学病院などは庶民の手の届く存在ではない。もしかしたら、そのようなアメリカの医療事情が、病院に対する関心や羨望を助長しており、結果として病院ドラマブームにつながったのかも……などと想像してみた、年の瀬でした。
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