Vol.25 『ER』デブ・チェン役のミン＝ナの波乱の半生

『ER 緊急救命室』のジン・メイ・チェン（デブ・チェン）はドラマを通してかなりの変化を遂げたキャラクターだといえるのではないでしょうか。カーター同様裕福な家に育ちお金には不自由しないものの、精神的にかなりの葛藤を抱えるチェンは、未婚で出産した赤ん坊を生後数日で里子に出したり、大きな事故に巻き込まれたり、父親を安楽死させたりと本当に色々ありましたよね。今回は『ER』でブレイクしたアジア系女優ミン=ナ（・ウェン）をご紹介します。

4歳でアメリカへ
ミン=ナ・ウェンは1963年11月20日に現在は中華人民共和国となっていますが、当時はポルトガルの植民地だったマカオで生まれました。名前は中国語で書くと温明娜です。

彼女の両親はミン=ナがまだ乳幼児だった頃に離婚。ミン=ナと兄は母親に引き取られ離婚後一家は香港に移り住むことになります。

香港で母親は看護婦の資格を取得し、働きながら女手一つで二人の子供を育てていましたが、中国人系アメリカ人のビジネスマンに見初められ結婚。ミン=ナが4歳のときに一家はニューヨークのクイーンズに移りアメリカ国籍を取得。そして9歳で義父の出身地であるペンシルバニア州のピッツバーグに移住したのでした。

ちにみに父親はChinatown Innという中華料理のレストランを経営し一家を支えていました。現在、そのレストランはミン=ナの実兄と義兄とが経営しています（Chinatown Inn：　522 3RD AvePittsburgh, PA 15219-2107）。

小学3年生で演劇に目覚める
9歳になるまで3回も住む土地が変ったミン=ナは、新しい環境になかなか馴染めず得に学校では苦労したそうです。内気な彼女でしたが小学校3年生のイースターに行われた学芸会でウサギを演じて劇の面白さに目覚めることになります。

母親は自分と同じく医学の道に進んでほしいと願っていたため、ミン=ナが役者になることは快く思っていませんでした。しかし、彼女が優秀な成績をおさめ大学にも進学したため強くは反対できなかったとのことです。

ミン=ナが進学したのは全米でもトックプラスにランクインされるカーネギーメロン大学で、演劇を専攻。

卒業後は女優としてのキャリアを積むためオーディションを積極的に受け1988年、長寿昼メロドラマ『As the World Turns』（1956～）に出演が決定し、アジア系女優として初めてソープ・オペラ（昼メロドラマ）にレギュラーとして出演することになったのでした。

声優としても活躍
1991年に『As the World Turns』を降板した後は映画にも積極的に出演するようになり、1993年にエミー・タン原作のベストセラーを映画化した『ジョイ・ラック・クラブ』に出演。中国でもがき苦しみ必死の思いでアメリカへ渡り住んだ中国人女性たちと、アメリカで生まれ育った自由な思想を持ちながらも古い華僑の考えに縛られる娘たちを見事に描いたこの映画で、ミン=ナの演技力は高く評価されることとなったのです。

1995年『ER』シーズン1の12話から登場したジン・メイ・チェンを演じたミン=ナはそのシーズンで番組を降板しますが、2000年シーズン6で復活。2004年までレギュラーとして出演しました。

女優だけでなく声優としても多くの作品に出演しており、ディズニーアニメーション映画『ムーラン』(1998)の主人公ムーランの声を担当したり、人気ゲームを映画化した『ファイナル・ファンタジー』(2001)にも出演しています。

結婚して名前を変更
私生活では1990年に脚本家のカーク・アネスと結婚しますが3年後に離婚。

映画『ジョイ・ラック・クラブ』のプレミア放映に参加する際のエスコートパートナーが急遽必要となった彼女に、演劇指導を受けていたコーチが生徒の1人を向かわせ、俳優・脚本家として活躍しているエリック・マイケル・ジーと運命の出会いを果たすことになります。翌年の1994年に交際をスタートさせた二人は1995年6月に結婚し、芸能活動をする際の名前もミン=ナ・ウェンからミン=ナに変更したのでした。

彼女は、2000年11月に長女ミカエラを出産。2005年10月に長男クーパー・ドミニクを出産。

ミン=ナは夫と共にリアリティ番組『America’s Got Talent』のファイナルに残ったアジア系アメリカ人で結成されたボーイ・バンド「At Last」をマネージメントする傍ら、女優としても積極的に活動を続けており、米FOXチャンネルで先日スタートしたばかりの新番組『Vanished』に出演しており、今後も目が離せそうにありません！

＜次回は、ＥＲ一のイケメン医師ルカ・コバッチュを演じるゴラン・ヴィシュニックです。お楽しみに！＞