Vol.58 「ダイナスティ」ロック・ハドソンの秘密

「ダイナスティ」のクリエーターのエスター・シャピロは、往年のハリウッド・スター、ロック・ハドソンが「「予想していたよりも、あっさりと出演を承諾してくれたので嬉しかったのを覚えている」と回想しています。

実はその頃、ロックは誰にも打ち明けることのできない重大な秘密を抱えていました。現代でも偏見が多い深刻な「病」に侵されており、ロックは死を間近に感じていたのです。役者として有終の美を飾りたいという思いがロックを出演へと駆り立てたのでしょう。

今回も語り継がれる巨匠アーロン・スペリングの名作「ダイナスティ」を、ご紹介いたします!

ロック・ハドソンの秘密
シーズン5に10話特別出演することになった「20世紀ハリウッド屈指の二枚目俳優」と称されていたロック・ハドソン。彼が出演することにより視聴率はさらにUPするだろうと期待され、撮影現場も大スターを歓迎するムードに包まれていました。

しかし、現場入りしたロックは誰の目から見ても「明らかに」体調が悪く、自分の控え室にこもってばかりいました。それだけでなく、台本が覚えられない、台詞が出てこない、撮影中も足元がふらつくことが多く、心配する声もあがるようになりました。

実は、ロックはこのとき、末期のエイズに苦しんでいたのです。しかし、当時はエイズに対する偏見が今まで以上にひどかったため、ロックは自分の病をひた隠しにしていました。そして恐らく、自分の最後を飾るためにも、世界中で爆発的にヒットしていた「ダイナスティ」に出演したかったのでしょう。プロデューサーにも出演者にも誰にもエイズを発症している事実を打ち明けていなかったのです。

死の接吻だと騒然
病に侵されていたものの、テレビ画面に映し出されるロックはハンサムで、女性をうっとりとさせる雰囲気を出していました。頬がげっそりとしたものの「真面目なリンダが心を動かされる相手」として「ダイナスティ」ファンは夢中になったのです。

物忘れは酷くなる一方でしたが、スタッフが機転をきかせキューカードを用意したため、撮影はスムーズに進んでいきました。しかし、1985年春になると、ロックは撮影現場に行くこともできないほど体調が悪化。出演契約した10話のうち、7話撮影するのがやっとで、降板してしまいました。

ロックの急な降板は、当時大きな話題となりました。しかし、誰もが降板に関する真実を知らなかったため、様々な憶測だけが飛び交うことになったのです。

実は、1984年12月にリンダ・エバンス演じるクリルタルと、ロック演じるダニエル・リースの、キスシーンが撮影されていました。当時は、エイズ、HIVがどのように感染するのか不確かであり、これが後に大問題へと発展。キャストたちは「なぜエイズであることを隠していたのか」と激しく憤慨し、「大丈夫だろう」と信じることにしたリンダも、かなりナーバスになったそうです。

最高視聴率をマークしたシーズン5最終話
舞台裏では色々あったシーズン5の最終話は、ドラマの最高視聴率をマークしたエピソードとなりました。なんと6000万人を越えるアメリカ人が1985年5月15日に放送された「ダイナスティ」のエピソード「Royal Wedding」を視聴したのです。

「Royal Wedding」は、タイトル通り、キャサリン・オクセンバーグ演じるアマンダとマイケル・プリード演じるモルダヴィアの王子マイケルが厳かな結婚式を挙げるというもので、誓いの口づけをするその瞬間、複数のテロリスが乱入。銃を乱射し全員が血まみれとなり床に倒れるという衝撃的なシーンで締めくくられていました。

視聴者にとっては「一体、だれが生き延びるのだろう?」と大きなクエスチョンマークを残すエピソードとなったわけですが、実は出演者たちも、誰が生き延びるのか知らされていませんでした。実は、そのとき彼らはシーズン6への出演交渉真っ最中だったのです。

そんな出演者の中で「大幅なギャラ・アップしてくれなければ降板する」と公言した女優がいました。ドラマの人気を支えるアレクシス役のジョーン・コリンズが、プロデューサーに宣戦布告を突きつけたのです。

<次回は「ダイナスティ」エンディングまでのカウントダウンです。お楽しみに!>