注目トピックス
アメリカン・ドラマの1年を振り返る ’12~’13年シーズンをどこよりも早く(?)総括! (その2)
2013年4月4日
新作の少なかったケーブルは看板ドラマが安定した人気を維持
徐々に勢いを盛り返しつつあるネットワーク系ドラマ (その1)からの続き
さて、次にケーブル系ドラマに目を移してみましょう。こちらはなんといっても「ウォーキング・デッド」の快進撃ですね。シーズン3を迎えた今期の平均視聴者数がネットワーク並の1000万人台。ホリデイシーズン明けの第9話では過去最高の1226万人を記録しました。これは驚くべき数字です。というのも、そもそもケーブルテレビというのはお金を払って契約をしている人しか見れないため、誰でも見ることができるネットワークと違って視聴者の数が圧倒的に少ない。ネットワークでは各局によって判断基準がまちまちであるものの、だいたい平均500万人くらいだと次シーズンは危険信号、300万人を切ったりすると即キャンセルといったところ。しかし、ケーブルの場合だと平均200~300万人くらい取れればOKなんです。チャンネルによっては100万人に満たなくてもシーズンを続行させるところもあったりする。
実際、日本でも人気の高い「デクスター 警察官は殺人鬼」は200万人前後ですし、エミー賞やゴールデングローブ賞を総なめにした「マッドメン」も300万人ほど。過去に視聴者数が1000万人を超えたケーブル系ドラマは「ザ・ソプラノズ~哀愁のマフィア」などごく僅か。その代わり、ちゃんと視聴料を取っているので高い品質が約束できるし、限られた人しか見ることができないおかげで大胆なテーマや過激な描写などが許容されるわけです。いずれにせよ、「ウォーキング・デッド」の圧倒的な大成功はケーブル系ドラマの全盛期を象徴する出来事と言って良いでしょう。
その「ウォーキング・デッド」を放送中のAMCですが、昨年は新作ドラマこそ全くなかったものの、「マッドメン」や「ブレイキング・バッド」、「The Killing~闇に眠る美少女」などの看板番組はいずれも好調。日本未放送の西部劇ドラマ「Hell on Wheels」もシーズン3が決定しました。
一方、ケーブル系ドラマの殿堂であるHBOは看板番組「トゥルー・ブラッド」の人気が相変わらず衰えることなく、さらにファンタジー史劇大作「ゲーム・オブ・スローンズ」もシーズン2で視聴者数が大幅に飛躍しました。新作ドラマではジュリア・ルイス=ドレイファスが合衆国の女性副大統領を演じるコメディ「Veep」がエミー賞の主演女優賞を獲得するなど賞レースで話題を呼び、女性向けドラマ「Girls」もゴールデン・グローブ賞のコメディ部門で作品賞を受賞。テレビの報道番組の裏側に迫る野心作「ニュースルーム」も高い評価を得ています。
「クローザー」や「レバレッジ~詐欺師たちの流儀」といった看板番組が相次いで終了したTNTは、その「クローザー」のスピンオフである新作「Major Crimes」がまずまずの健闘。メアリー・マクドネル扮するシャロン・レイダーはブレンダの好敵手でしたからね。ファンなら絶対に見逃せないはずです。ただ、その一方でかつて世界中で大ブームを巻き起こしたメガヒットドラマ「ダラス」の復活シリーズが伸び悩み、’13年2月にスタートしたばかりの医療ドラマ「Monday Mornings」も低空飛行。シーズン2の決定した「パーセプション 転載教授の推理ノート」に期待を託したいところです。
また、「NIP/TUCK マイアミ整形外科医」や「ダメージ」などエッジの効いたドラマでお馴染みのFXでは、看板番組「サン・オブ・アナーキー」や「アメリカン・ホラー・ストーリー」が好調。新作ではチャーリー・シーン主演の「Anger Management」が話題を呼んだほか、「フェリシティの青春」のケリー・ラッセルがKGBの女スパイを演じる「The Americans」が批評家から絶賛されています。これは冷戦時代のアメリカで、市民の中に紛れ込んだソビエト・スパイを描いたポリティカル・サスペンス。この1月に放送が始まったばかりですが、既にシーズン2の制作も決定しており、第2の「HOMELAND」となりそうな予感。「デクスター」や「カリフォル二ケーション」など看板番組が揃ったShowtimeは、ドン・チードル主演のコメディ「House of Lies」が唯一の新作ドラマでしたが、早くもゴールデン・グローブで主演男優賞を獲得するなど頭角を現しています。USA Networkは「コバート・アフェア」や「ホワイト・カラー」などの人気ドラマが相変わらず健在でした。
「Anger Management」チャーリー・シーン
Andrew Evans / PR Photos
そして、さらに注目しておきたいのが、歴史ドキュメンタリーでお馴染みのヒストリー・チャンネルが手がけた新作歴史ドラマ「Vikings」。これは、かつてカーク・ダグラス主演の映画「ヴァイキング」の題材にもなった伝説のバイキング王ラグナル・ロドブロクの若き日を描く作品で、’13年3月3日の初回放送は視聴者数621万人を獲得しました。「ゲーム・オブ・スローンズ」に続いて歴史スペクタクル物のブームを後押しすることになるかもしれません。
そんなこんなで、ケーブル系ドラマを語り始めると本当に収拾がつかなくなってしまうので(笑)、ひとまずこの辺にしておこうと思いますが、全体としては新作が少なめだったこと、各チャンネルの看板ドラマが安定した人気を保っていることが挙げられます。シーズン2を迎えた「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」を含む歴史ドラマの台頭や、「HOMELAND」を一つの契機とする社会派ポリティカル・サスペンス人気も目立つ動きと言えるでしょう。また、「ニュースルーム」では大女優ジェーン・フォンダがテレビシリーズ初出演を果たしましたが、その他にもBBCアメリカ製作のオリジナルドラマ第1弾「Copper」で娼館マダムを演じるフランカ・ポテンテや、Starzの新作「Magic City」でマイアミのホテル王の妻を演じるオルガ・キュリレンコなど、ネットワーク同様にケーブルも映画スターのドラマ進出が相変わらず。今後もマシュー・マコノヒーやウッディ・ハレルソン、マイケル・シーン、ダイアン・クルーガーなどがケーブル系ドラマで主演を務める予定になっています。
「ニュースルーム」ジェーン・フォンダ
Justin Paludipan / PR Photos
ちなみに、本コラムの便宜上ケーブル作品もネットワークと同じように’12~’13年シーズンでくくって紹介しましたが、そもそもケーブルはネットワークのシーズンとは基本的に関係ありません。新作のスタート時期もまちまちで、中には同じ年に次のシーズンが始まる番組もあったりします。そう言う意味では、なかなか総括しづらい面もあるんですよね。とまあ、最後はちょっとした言い訳で締めくくらせていただきます(笑)。
徐々に勢いを盛り返しつつあるネットワーク系ドラマ (その1)からの続き
さて、次にケーブル系ドラマに目を移してみましょう。こちらはなんといっても「ウォーキング・デッド」の快進撃ですね。シーズン3を迎えた今期の平均視聴者数がネットワーク並の1000万人台。ホリデイシーズン明けの第9話では過去最高の1226万人を記録しました。これは驚くべき数字です。というのも、そもそもケーブルテレビというのはお金を払って契約をしている人しか見れないため、誰でも見ることができるネットワークと違って視聴者の数が圧倒的に少ない。ネットワークでは各局によって判断基準がまちまちであるものの、だいたい平均500万人くらいだと次シーズンは危険信号、300万人を切ったりすると即キャンセルといったところ。しかし、ケーブルの場合だと平均200~300万人くらい取れればOKなんです。チャンネルによっては100万人に満たなくてもシーズンを続行させるところもあったりする。
実際、日本でも人気の高い「デクスター 警察官は殺人鬼」は200万人前後ですし、エミー賞やゴールデングローブ賞を総なめにした「マッドメン」も300万人ほど。過去に視聴者数が1000万人を超えたケーブル系ドラマは「ザ・ソプラノズ~哀愁のマフィア」などごく僅か。その代わり、ちゃんと視聴料を取っているので高い品質が約束できるし、限られた人しか見ることができないおかげで大胆なテーマや過激な描写などが許容されるわけです。いずれにせよ、「ウォーキング・デッド」の圧倒的な大成功はケーブル系ドラマの全盛期を象徴する出来事と言って良いでしょう。
その「ウォーキング・デッド」を放送中のAMCですが、昨年は新作ドラマこそ全くなかったものの、「マッドメン」や「ブレイキング・バッド」、「The Killing~闇に眠る美少女」などの看板番組はいずれも好調。日本未放送の西部劇ドラマ「Hell on Wheels」もシーズン3が決定しました。
一方、ケーブル系ドラマの殿堂であるHBOは看板番組「トゥルー・ブラッド」の人気が相変わらず衰えることなく、さらにファンタジー史劇大作「ゲーム・オブ・スローンズ」もシーズン2で視聴者数が大幅に飛躍しました。新作ドラマではジュリア・ルイス=ドレイファスが合衆国の女性副大統領を演じるコメディ「Veep」がエミー賞の主演女優賞を獲得するなど賞レースで話題を呼び、女性向けドラマ「Girls」もゴールデン・グローブ賞のコメディ部門で作品賞を受賞。テレビの報道番組の裏側に迫る野心作「ニュースルーム」も高い評価を得ています。
「クローザー」や「レバレッジ~詐欺師たちの流儀」といった看板番組が相次いで終了したTNTは、その「クローザー」のスピンオフである新作「Major Crimes」がまずまずの健闘。メアリー・マクドネル扮するシャロン・レイダーはブレンダの好敵手でしたからね。ファンなら絶対に見逃せないはずです。ただ、その一方でかつて世界中で大ブームを巻き起こしたメガヒットドラマ「ダラス」の復活シリーズが伸び悩み、’13年2月にスタートしたばかりの医療ドラマ「Monday Mornings」も低空飛行。シーズン2の決定した「パーセプション 転載教授の推理ノート」に期待を託したいところです。
また、「NIP/TUCK マイアミ整形外科医」や「ダメージ」などエッジの効いたドラマでお馴染みのFXでは、看板番組「サン・オブ・アナーキー」や「アメリカン・ホラー・ストーリー」が好調。新作ではチャーリー・シーン主演の「Anger Management」が話題を呼んだほか、「フェリシティの青春」のケリー・ラッセルがKGBの女スパイを演じる「The Americans」が批評家から絶賛されています。これは冷戦時代のアメリカで、市民の中に紛れ込んだソビエト・スパイを描いたポリティカル・サスペンス。この1月に放送が始まったばかりですが、既にシーズン2の制作も決定しており、第2の「HOMELAND」となりそうな予感。「デクスター」や「カリフォル二ケーション」など看板番組が揃ったShowtimeは、ドン・チードル主演のコメディ「House of Lies」が唯一の新作ドラマでしたが、早くもゴールデン・グローブで主演男優賞を獲得するなど頭角を現しています。USA Networkは「コバート・アフェア」や「ホワイト・カラー」などの人気ドラマが相変わらず健在でした。
「Anger Management」チャーリー・シーン
Andrew Evans / PR Photos
そして、さらに注目しておきたいのが、歴史ドキュメンタリーでお馴染みのヒストリー・チャンネルが手がけた新作歴史ドラマ「Vikings」。これは、かつてカーク・ダグラス主演の映画「ヴァイキング」の題材にもなった伝説のバイキング王ラグナル・ロドブロクの若き日を描く作品で、’13年3月3日の初回放送は視聴者数621万人を獲得しました。「ゲーム・オブ・スローンズ」に続いて歴史スペクタクル物のブームを後押しすることになるかもしれません。
そんなこんなで、ケーブル系ドラマを語り始めると本当に収拾がつかなくなってしまうので(笑)、ひとまずこの辺にしておこうと思いますが、全体としては新作が少なめだったこと、各チャンネルの看板ドラマが安定した人気を保っていることが挙げられます。シーズン2を迎えた「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」を含む歴史ドラマの台頭や、「HOMELAND」を一つの契機とする社会派ポリティカル・サスペンス人気も目立つ動きと言えるでしょう。また、「ニュースルーム」では大女優ジェーン・フォンダがテレビシリーズ初出演を果たしましたが、その他にもBBCアメリカ製作のオリジナルドラマ第1弾「Copper」で娼館マダムを演じるフランカ・ポテンテや、Starzの新作「Magic City」でマイアミのホテル王の妻を演じるオルガ・キュリレンコなど、ネットワーク同様にケーブルも映画スターのドラマ進出が相変わらず。今後もマシュー・マコノヒーやウッディ・ハレルソン、マイケル・シーン、ダイアン・クルーガーなどがケーブル系ドラマで主演を務める予定になっています。
「ニュースルーム」ジェーン・フォンダ
Justin Paludipan / PR Photos
ちなみに、本コラムの便宜上ケーブル作品もネットワークと同じように’12~’13年シーズンでくくって紹介しましたが、そもそもケーブルはネットワークのシーズンとは基本的に関係ありません。新作のスタート時期もまちまちで、中には同じ年に次のシーズンが始まる番組もあったりします。そう言う意味では、なかなか総括しづらい面もあるんですよね。とまあ、最後はちょっとした言い訳で締めくくらせていただきます(笑)。
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