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華麗すぎる転落!? 秒速で1億円を稼ぎ、秒速で破産してしまった元ネオヒルズ族 与沢翼に直撃インタビュー <映画「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」公開前イベントにて>
2014年8月16日
与沢翼
(c)TVGroove.com
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8月16日(土)に公開される映画「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」は、全米で大ヒットしたこの夏話題の前代未聞のリアル/ドキュメンタリー映画。不動産業で巨万の富を得たアメリカの大富豪シーゲル夫妻は、100億円をかけてフロリダにベルサイユ宮殿をまねた全米最大の邸宅の建築を開始!ところが・・・突如襲ったリーマンショックで彼らは窮地に陥り、会社は大ピンチ。“ベルサイユ宮殿”の建築もとん挫して、夫婦は急転直下、転落の一途を辿ることになってしまい・・・。
この映画の公開を控え、8月5日(土)都内で公開前イベントが開催。アフィリエイトで一躍大富豪となり、“秒速で1億を稼ぐ男”として時代の寵児ともてはやされながら、今年4月に突然の経営破綻宣言、“秒速で転落人生”になってしまった与沢翼氏が登場した。
映画のシーゲル夫妻と同じように「華麗なる転落」を経験した与沢氏にTVグルーヴは単独インタビューを敢行。億単位の利益を上げていた与沢翼がなぜ突然の破産に至ったのか、順風満帆に思われたビジネスモデルのどこに落とし穴があったのか、今、彼は何を考え、これから何をしようとしているのか、破産により文字通り裸一貫になった与沢氏に赤裸々に語ってもらった。
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■投資も贅沢も半分くらいにしておけばよかった
Q: 今回の映画「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」を観られた感想は?
与沢: あまり期待してなかったのですが、その分すごく期待を裏切られたように面白かったというか、勉強になりました。
Q: 具体的にどういうところが参考になりましたか
与沢: そうですね、台詞の中で、「リゾートが30くらいあるんだけど15まででとどめておけばよかったんだ」っていうセリフがあるんです。私がいつも失敗する時も、途中までうまくいってるんですけど、欲をかいて、適正規模を超えてやってしまうんです。
この映画に登場するシーゲルさんも28拠点まで増やしちゃったんですよ。その13くらいは利益が出てなかったり赤字だったと思うんですね。だからあまり適正規模を超えて、欲をかいてやりすぎてしまうと、負債を多く作る原因にもなりますし、フットワークが悪くなります。必要な人間も増えますよね。そうすると管理コストがかかったりとか、色んな負を持ちながらの拡大になってしまいます。そういうところも参考になりました。
Q: ご自身のビジネスも適正規模を超えてしまっていたと思いますか?
与沢: 完全にそう思います。半分でよかったんじゃないかなと。投資だったりとか、あと贅沢も。全部、半分にしてればよかったかもしれません。
Q: ビジネスがまだ好調で、テレビなどに出演されていたときの様子を見ると、どこまでも際限なく拡大していくことを目指しているような印象を受けたのですが。
与沢: まず一つに、性格の問題点もあると思うんですね。楽観的という。
今回の件で学んだのが、計画は悲観的に立てて、行動は楽観的に行う、ということです。全てを楽観的に考えると、売り上げがこれだけ伸びるから、じゃあコストをたくさんかけようっていう計画になってしまう。そうではなくて、売り上げがこれくらいしか上がらないかもしれないから、コストはこれくらいに抑えようっていう風に、まず悲観的に考えて、その後は、もう決まった以上は楽観的に行動する。そして結果としては計画値を超えるっていうのが、たぶんビジネスの正しいやり方なんだなって思ったんですよ。
そういうところで言うと、「税金分もすぐ稼げる。1か月2か月あれば億なんてすぐ回収できるんだ」っていう楽観性を常に持っていました。財務諸表の月次決算も毎月見てれば、危機感も蓄積したと思うんですけど、実際のところ、決算が締まった1か月後まで、1年間1回も途中を見てないんですよ。決算が終わって税金がこれだけかかるということを初めて知ったんです。
■5億円の利益でなぜ破綻したのか?
Q: 利益は出ていたわけですよね?
与沢: そうですね利益は5億とか出てたので、それだけ利益が出て資金繰りがいいと、融資も受けてないから、まさかそんな税金が払えなくなるってところまではいってないだろうと。
あと本当に周囲からも言われていたんですが、ちょっと忙しすぎました。取材や取引、動画を撮ったりとかで1日8人とかにお会いしてたんですよ。それで管理に目を向ける余裕もないし、僕の仕事じゃないと思っていたし、あまり元来、(管理することが)好きじゃなかったので、それも税額の把握が遅れて失敗する要因になりました。
Q: 税金が払えなくて破綻してしまったという過程(※1)について、ちょっとまだよくわからないところがあるんですが、売上が上がって利益が出ているのであれば、きちんとその証明を見せれば、銀行は普通お金を融通してくれるものだと思うんですけども。なぜ売上があって黒字の見通しがあるのに、銀行は助けてくれなかったのでしょうか。
(※1)与沢翼が経営するフリーエージェントスタイルホールディングスは、2013年8月期の決算に伴う税金の支払いにより、資金がショートし破綻した。売上と利益は上がっていたものの資金繰りが悪化して倒産する、いわゆる黒字倒産だとされる。
与沢: えーっとですね。2社目に関しては、僕、融資の依頼をしたことがないんです。なぜかっていうと、率直に言って僕、2011年8月に倒産した件で、会社を3億ぐらいの負債で倒産させちゃったので、法人破産して、その時1億5000万円の連帯保証をしてましたので、自己破産してるんですよ。なので、それからまだ時期が3年とか経っていないので、融資は無理だと思ったんです。
Q: では無借金経営をされていたのですね。
与沢: 好んで無借金にしたわけじゃなくて、無借金でしか行けなかったっていうことです。
■金持ちに見せることの限界がやってきた
Q: ビジネスが好調の時でも、このまま行くと、いつかやばいんじゃないか、どこかで破綻するんじゃないかっていう予感みたいなものはありましたか?
与沢: やっぱり若干ありましたね。ただそれでも楽観性でなんとかする、なんとかなるとは思ってました。一貫して。まさかここまで住宅解約して、オフィスも撤退して、リストラをして、車も売却することになるとまでは思ってなかったですね。
それで、なんでそう思ったかっていうと、最近知ったんですけど、「マーケティングは爆発させすぎるな」という言葉があってですね。たとえばタレントさんの例などがわかりやすいんですけど、芸人さんとか一つの芸によって一時期、すごく取り上げられる方っていますよね。その瞬間は、ものすごい注目を浴びるんですけど、流行りすぎたものほど、潮を引くときに、もう本当に、反動なんでしょうね、売りすぎたもの、売れすぎたものっていうのは、反動でものすごく、閑古鳥が鳴くぐらいまで引いちゃうんですよ。
それを僕としては、数年は何とか維持しようと、あの手この手で、手を変え品を変え、ネタを作ろうとしていたんです。ヘリコプター、車、住宅も何回も転々としたりとか、ランウェイを歩いたり、雑誌を作ったりとか、やれることはやりました。一つ一つは億に行かないくらいのキャッシュでできることですよね。それらをもう矢継ぎ早にやってなるべく飽きさせないようにやったんですけど、そこがもう厳しくなってきたんです。受け手の感覚も麻痺してきますから、ちょっとしたことじゃ取り上げられなくなるわけですね。そうすると次はプライベートジェットでも買わないと、もう維持できないと。構造的に逆にコスト高になってるぞと。
事業的に収益を現状維持するだけで精一杯なのに、それ以上の高いものを購入したりする、そしてお金持ちであることを見せるってことは、ケタが上がってくると、もう無理だと思いました。邸宅を建てるとか、それは今の私には無理だと思って、撤退をしたいなと思ってました。
Q: 自身の富を誇示し続けようと思っていたのは、何かそうしないといけないという強迫観念みたいなものがあったのですか?それとも純粋にビジネス上の戦略だったのですか?
与沢: えーとですね。最初は、倒産して浮上するため、ブログでPVを集めるために、もう完全に戦略でやってったんですよ。でも、それをやるのが仕事だ、ルーティーンだって慣れてくると、今度それをやめるのが怖いんですよ。フェイスブックを1日も更新しないことが怖くて怖くて。それが強迫観念になりました。それをスパーンって断ち切るには、何か大きなタイミングがないとリセットできなかったと思います。
Q: それが破産だったということですね。
与沢: そうですね、そこで、もう無理ですと。結局、あれも炎上を狙ってたんじゃないか、みたいに言われますけど、それは本当にないです。敗北宣言ていうのが自分の中で、敗戦のポツダム宣言を受諾したみたいなくらい悔しいことなんですよ。でもそれを言っちゃったことで楽になれました。
Q: なるほど。では今、気分は楽になったんですね?
与沢: そうですね。一年前のお金がある時よりも今の方が全然ストレスないです。
■「フリーエージェントスタイル」は不滅です
Q: 与沢さんはこれまで、雇われず自由に働く「フリーエージェントスタイル」ということを提唱されてきました。それに共感してついてきた若い人たちもたくさんいるんですけど、与沢さんが破産した今、その人たちは、これからどうすればいいんでしょうか。「フリーエージェントスタイル」は結局ダメだっていうことになるんですか?
与沢: 非常に、若者は冷めましたよね。僕に影響を受けてた層もやっぱり少数いたので。その層は国税(庁)ってとても怖いんだなとか実感したと思います。普段、税金っていう問題をあんまり意識しないじゃないですか。わかりやすいモデルがいないと、若い人って意識しませんから。
だからお金持ちのいいところだけを見ていた時に、その反対に僕がすごく世の中からバッシングされるのを見て、そうとうコワいって委縮させる効果もやっぱり常にありますよね。まあ堀江(貴文)さんほど大きくはないですけど、“情報商材業界のライブドアショック”みたいに言われたんで、そういう影響はあったと思います。でもそこはやっぱり両方知るのがいいと思うんですよね。ちゃんとリスクもリターンも。両方知れるって意味では。冷静に起業してもらいたいですよね。
Q: ちゃんとやる分においては、まだ「フリーエージェントスタイル」は有効であるということですね。
与沢: もちろんそうですね。それは時代の隆盛で、これからワークスタイルはものすごく変化します。複数社にまたがってお勤めされる方もいるし、自分のカンパニーを持ちながらどっかに就職される方もいるし、自分で小さいビジネスをインターネット通じて、クラウドソーシングなどを使って運営して、自宅でウェブデザインの作業をしてインターネット上で納品してサラリーマンと同じくらいの給料をもらうとか・・。デイトレーダーとかも、これだけ通信と証券が融合して、FXとか株とかでね、すごい成功されてる方もいますから。色んなワークスタイルが出てくる中で、フリーエージェントスタイルは、言葉としては消えるかもしれませんが、概念の本質としては残りつ続けるし、これはもう不可避ですね。
■もう「消えた」と思われてもいい
Q: なるほど。わかりました。では最後に、与沢さんの今後の展望を教えてください。
与沢: そうですね。もうすでにちょっと言ったんですけど、もう家賃200万(円)のマンションに住みたいとか、そういう欲求は完全になくなってます。そういった刹那主義から、今日を最善に生きることにしようと思ったんですよ。でもそうすると未来を生きるって感じになって、今、楽しいことが少なくなります。ですので、“今のプロセス”が楽しいって感じなきゃいけないんです。そうすると好きなことじゃないと継続できないです。だから今、未来を生きて好きなことって考えたときに、僕は文章書くことが好きだし、喋るのが好きだし、教えたりするのも好き。あと、動画編集、プログラミング、デイトレードの技術、テクニカル分析など、そういうことを習得するのがすごく好きなので、そこに自分の事業シーズ(種)を作ってですね、それをやがて大きくするときに社員さんをまた入れて、たぶん会社になると思うんです。
でもしばらくは、一人とかスモールでやっていってお金をとにかく貯めると思います。資産を作る、軍資金を作ったり。もう今までみたいに使うっていう方向ではなく、もう固定コストはなるべく避けて、収益はもちろん稼ぎますよ、最大化してその利ざやをとにかく増やしていこうと思います。まあそれをすごい“守銭奴”(しゅせんど)みたいって思われるかも知れないですけど、今までの僕みたいに散財をするよりもまだ守銭奴の方がいいと思うんですよね。そっちのほうが将来のためになりますから。だから「アリとキリギリス」でいうと、キリギリスじゃなくてアリになるっていう。「ウサギとカメ」だとカメになるっていうことです。今までキリギリスとウサギとして生きてきたので、そこはかなり覚悟しています。180度変わったと思います。
Q: 経営破綻宣言直後の何もない状態からすでに順調にリバウンドされている印象を受けるのですが。
与沢: そうですね。ニコニコチャンネルのお話(※2)もいただきましたし、有料のメルマガも配信していますが、今までは数十万とかするメルマガやセミナーをしていたんですが、今は1ヶ月970円でいっぱい動画送ったりしています。昔とちょっと料金規模が違いますけど、誰にもあんまり負担をかけない価格で、すごくたくさんの価値を提供し、だからこそたくさんの人に利用してもらうっていう、まあいわゆる「規模の効果」を働かせてエンドユーザーに負担をかけない。そうすると価値を作りやすいと思うんですね。お金払った分よりも、それ以上の対価が得られるっていう感じで。だからそういうことをしっかりとやりながらがんばっていこうと思います。もう「スゴイ」と思われる必要もないし、社会から「消えたね」「終わったね」って思われてこそいいと思ってるんで。非常に冷静ですね。また兆しもあるとは思うんですよね。角川(書店)さんから秒速で転落(※3)の後の本の話も来ていますし。着実にがんばります。
(※2)ニコニコ動画内に「与沢翼の秒速伝説チャンネル」が7月にスタート。週1回の生放送と週3回のブロマガ(ブログとメールマガジンを統合したテキスト発信サービス)を提供している。
(※3)秒速で億単位のお金を稼いでいた与沢翼が突然、破綻宣言をするに至った過程の全てを告白した「告白 秒速で転落した真実」が7月2日に扶桑社より発売された。
Q: ぜひ今後の活躍を期待しています。今日はありがとうございました。
与沢: はい、ありがとうございました。
(インタビュー終わり/インタビュアー: 清水裕一)
■関連リンク:
・2014年4月26日の突然の破産宣言(与沢翼ブログより)
・与沢翼オフィシャルブログ
・与沢翼ツイッター
・ニコニコ動画「与沢翼の秒速伝説チャンネル」
・「告白 秒速で転落した真実」
【与沢翼プロフィール】1982年生まれ。早稲田大学卒業。株式会社Free Agent Style Holdings代表取締役会長。小学生のころから商売を始め、高校は3日で中退。大検を取得し9か月後、早稲田大学社会科学部に入学。3年生の時に会社設立し、3年半で月商1億5000万円の会社に成長させるが、6年目に倒産。2011年9月、ネットビジネス界に参入し、半年で5億円を稼ぎ出す。 2012年4月、「株式会社Free Agent Style」を創業2014年(平成26年)4月26日、自身のFacebookで「資金が完全にショートした」とし、フリーエージェントスタイルホールディングスが破たん状態にあることを明らかにした。現在、破綻宣言の真相や本人に自身にまとわりつく疑惑について綴った書籍『告白』が扶桑社から発売中。ニコニコ動画にて自身のチャンネル『与沢翼の秒速伝説』を開設。
■映画リリース情報:
映画『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』
8月16日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
公式サイト: //www.queen-cinema.jp/
【動画】「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」予告編
【動画】「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」特別映像
この映画の公開を控え、8月5日(土)都内で公開前イベントが開催。アフィリエイトで一躍大富豪となり、“秒速で1億を稼ぐ男”として時代の寵児ともてはやされながら、今年4月に突然の経営破綻宣言、“秒速で転落人生”になってしまった与沢翼氏が登場した。
映画のシーゲル夫妻と同じように「華麗なる転落」を経験した与沢氏にTVグルーヴは単独インタビューを敢行。億単位の利益を上げていた与沢翼がなぜ突然の破産に至ったのか、順風満帆に思われたビジネスモデルのどこに落とし穴があったのか、今、彼は何を考え、これから何をしようとしているのか、破産により文字通り裸一貫になった与沢氏に赤裸々に語ってもらった。
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■投資も贅沢も半分くらいにしておけばよかった
Q: 今回の映画「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」を観られた感想は?
与沢: あまり期待してなかったのですが、その分すごく期待を裏切られたように面白かったというか、勉強になりました。
映画「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」に登場するシーゲル夫妻
Q: 具体的にどういうところが参考になりましたか
与沢: そうですね、台詞の中で、「リゾートが30くらいあるんだけど15まででとどめておけばよかったんだ」っていうセリフがあるんです。私がいつも失敗する時も、途中までうまくいってるんですけど、欲をかいて、適正規模を超えてやってしまうんです。
この映画に登場するシーゲルさんも28拠点まで増やしちゃったんですよ。その13くらいは利益が出てなかったり赤字だったと思うんですね。だからあまり適正規模を超えて、欲をかいてやりすぎてしまうと、負債を多く作る原因にもなりますし、フットワークが悪くなります。必要な人間も増えますよね。そうすると管理コストがかかったりとか、色んな負を持ちながらの拡大になってしまいます。そういうところも参考になりました。
Q: ご自身のビジネスも適正規模を超えてしまっていたと思いますか?
与沢: 完全にそう思います。半分でよかったんじゃないかなと。投資だったりとか、あと贅沢も。全部、半分にしてればよかったかもしれません。
Q: ビジネスがまだ好調で、テレビなどに出演されていたときの様子を見ると、どこまでも際限なく拡大していくことを目指しているような印象を受けたのですが。
与沢: まず一つに、性格の問題点もあると思うんですね。楽観的という。
今回の件で学んだのが、計画は悲観的に立てて、行動は楽観的に行う、ということです。全てを楽観的に考えると、売り上げがこれだけ伸びるから、じゃあコストをたくさんかけようっていう計画になってしまう。そうではなくて、売り上げがこれくらいしか上がらないかもしれないから、コストはこれくらいに抑えようっていう風に、まず悲観的に考えて、その後は、もう決まった以上は楽観的に行動する。そして結果としては計画値を超えるっていうのが、たぶんビジネスの正しいやり方なんだなって思ったんですよ。
そういうところで言うと、「税金分もすぐ稼げる。1か月2か月あれば億なんてすぐ回収できるんだ」っていう楽観性を常に持っていました。財務諸表の月次決算も毎月見てれば、危機感も蓄積したと思うんですけど、実際のところ、決算が締まった1か月後まで、1年間1回も途中を見てないんですよ。決算が終わって税金がこれだけかかるということを初めて知ったんです。
■5億円の利益でなぜ破綻したのか?
Q: 利益は出ていたわけですよね?
与沢: そうですね利益は5億とか出てたので、それだけ利益が出て資金繰りがいいと、融資も受けてないから、まさかそんな税金が払えなくなるってところまではいってないだろうと。
あと本当に周囲からも言われていたんですが、ちょっと忙しすぎました。取材や取引、動画を撮ったりとかで1日8人とかにお会いしてたんですよ。それで管理に目を向ける余裕もないし、僕の仕事じゃないと思っていたし、あまり元来、(管理することが)好きじゃなかったので、それも税額の把握が遅れて失敗する要因になりました。
Q: 税金が払えなくて破綻してしまったという過程(※1)について、ちょっとまだよくわからないところがあるんですが、売上が上がって利益が出ているのであれば、きちんとその証明を見せれば、銀行は普通お金を融通してくれるものだと思うんですけども。なぜ売上があって黒字の見通しがあるのに、銀行は助けてくれなかったのでしょうか。
(※1)与沢翼が経営するフリーエージェントスタイルホールディングスは、2013年8月期の決算に伴う税金の支払いにより、資金がショートし破綻した。売上と利益は上がっていたものの資金繰りが悪化して倒産する、いわゆる黒字倒産だとされる。
与沢: えーっとですね。2社目に関しては、僕、融資の依頼をしたことがないんです。なぜかっていうと、率直に言って僕、2011年8月に倒産した件で、会社を3億ぐらいの負債で倒産させちゃったので、法人破産して、その時1億5000万円の連帯保証をしてましたので、自己破産してるんですよ。なので、それからまだ時期が3年とか経っていないので、融資は無理だと思ったんです。
Q: では無借金経営をされていたのですね。
与沢: 好んで無借金にしたわけじゃなくて、無借金でしか行けなかったっていうことです。
■金持ちに見せることの限界がやってきた
Q: ビジネスが好調の時でも、このまま行くと、いつかやばいんじゃないか、どこかで破綻するんじゃないかっていう予感みたいなものはありましたか?
与沢: やっぱり若干ありましたね。ただそれでも楽観性でなんとかする、なんとかなるとは思ってました。一貫して。まさかここまで住宅解約して、オフィスも撤退して、リストラをして、車も売却することになるとまでは思ってなかったですね。
それで、なんでそう思ったかっていうと、最近知ったんですけど、「マーケティングは爆発させすぎるな」という言葉があってですね。たとえばタレントさんの例などがわかりやすいんですけど、芸人さんとか一つの芸によって一時期、すごく取り上げられる方っていますよね。その瞬間は、ものすごい注目を浴びるんですけど、流行りすぎたものほど、潮を引くときに、もう本当に、反動なんでしょうね、売りすぎたもの、売れすぎたものっていうのは、反動でものすごく、閑古鳥が鳴くぐらいまで引いちゃうんですよ。
それを僕としては、数年は何とか維持しようと、あの手この手で、手を変え品を変え、ネタを作ろうとしていたんです。ヘリコプター、車、住宅も何回も転々としたりとか、ランウェイを歩いたり、雑誌を作ったりとか、やれることはやりました。一つ一つは億に行かないくらいのキャッシュでできることですよね。それらをもう矢継ぎ早にやってなるべく飽きさせないようにやったんですけど、そこがもう厳しくなってきたんです。受け手の感覚も麻痺してきますから、ちょっとしたことじゃ取り上げられなくなるわけですね。そうすると次はプライベートジェットでも買わないと、もう維持できないと。構造的に逆にコスト高になってるぞと。
事業的に収益を現状維持するだけで精一杯なのに、それ以上の高いものを購入したりする、そしてお金持ちであることを見せるってことは、ケタが上がってくると、もう無理だと思いました。邸宅を建てるとか、それは今の私には無理だと思って、撤退をしたいなと思ってました。
Q: 自身の富を誇示し続けようと思っていたのは、何かそうしないといけないという強迫観念みたいなものがあったのですか?それとも純粋にビジネス上の戦略だったのですか?
与沢: えーとですね。最初は、倒産して浮上するため、ブログでPVを集めるために、もう完全に戦略でやってったんですよ。でも、それをやるのが仕事だ、ルーティーンだって慣れてくると、今度それをやめるのが怖いんですよ。フェイスブックを1日も更新しないことが怖くて怖くて。それが強迫観念になりました。それをスパーンって断ち切るには、何か大きなタイミングがないとリセットできなかったと思います。
Q: それが破産だったということですね。
与沢: そうですね、そこで、もう無理ですと。結局、あれも炎上を狙ってたんじゃないか、みたいに言われますけど、それは本当にないです。敗北宣言ていうのが自分の中で、敗戦のポツダム宣言を受諾したみたいなくらい悔しいことなんですよ。でもそれを言っちゃったことで楽になれました。
Q: なるほど。では今、気分は楽になったんですね?
与沢: そうですね。一年前のお金がある時よりも今の方が全然ストレスないです。
■「フリーエージェントスタイル」は不滅です
Q: 与沢さんはこれまで、雇われず自由に働く「フリーエージェントスタイル」ということを提唱されてきました。それに共感してついてきた若い人たちもたくさんいるんですけど、与沢さんが破産した今、その人たちは、これからどうすればいいんでしょうか。「フリーエージェントスタイル」は結局ダメだっていうことになるんですか?
与沢: 非常に、若者は冷めましたよね。僕に影響を受けてた層もやっぱり少数いたので。その層は国税(庁)ってとても怖いんだなとか実感したと思います。普段、税金っていう問題をあんまり意識しないじゃないですか。わかりやすいモデルがいないと、若い人って意識しませんから。
だからお金持ちのいいところだけを見ていた時に、その反対に僕がすごく世の中からバッシングされるのを見て、そうとうコワいって委縮させる効果もやっぱり常にありますよね。まあ堀江(貴文)さんほど大きくはないですけど、“情報商材業界のライブドアショック”みたいに言われたんで、そういう影響はあったと思います。でもそこはやっぱり両方知るのがいいと思うんですよね。ちゃんとリスクもリターンも。両方知れるって意味では。冷静に起業してもらいたいですよね。
Q: ちゃんとやる分においては、まだ「フリーエージェントスタイル」は有効であるということですね。
与沢: もちろんそうですね。それは時代の隆盛で、これからワークスタイルはものすごく変化します。複数社にまたがってお勤めされる方もいるし、自分のカンパニーを持ちながらどっかに就職される方もいるし、自分で小さいビジネスをインターネット通じて、クラウドソーシングなどを使って運営して、自宅でウェブデザインの作業をしてインターネット上で納品してサラリーマンと同じくらいの給料をもらうとか・・。デイトレーダーとかも、これだけ通信と証券が融合して、FXとか株とかでね、すごい成功されてる方もいますから。色んなワークスタイルが出てくる中で、フリーエージェントスタイルは、言葉としては消えるかもしれませんが、概念の本質としては残りつ続けるし、これはもう不可避ですね。
■もう「消えた」と思われてもいい
Q: なるほど。わかりました。では最後に、与沢さんの今後の展望を教えてください。
与沢: そうですね。もうすでにちょっと言ったんですけど、もう家賃200万(円)のマンションに住みたいとか、そういう欲求は完全になくなってます。そういった刹那主義から、今日を最善に生きることにしようと思ったんですよ。でもそうすると未来を生きるって感じになって、今、楽しいことが少なくなります。ですので、“今のプロセス”が楽しいって感じなきゃいけないんです。そうすると好きなことじゃないと継続できないです。だから今、未来を生きて好きなことって考えたときに、僕は文章書くことが好きだし、喋るのが好きだし、教えたりするのも好き。あと、動画編集、プログラミング、デイトレードの技術、テクニカル分析など、そういうことを習得するのがすごく好きなので、そこに自分の事業シーズ(種)を作ってですね、それをやがて大きくするときに社員さんをまた入れて、たぶん会社になると思うんです。
でもしばらくは、一人とかスモールでやっていってお金をとにかく貯めると思います。資産を作る、軍資金を作ったり。もう今までみたいに使うっていう方向ではなく、もう固定コストはなるべく避けて、収益はもちろん稼ぎますよ、最大化してその利ざやをとにかく増やしていこうと思います。まあそれをすごい“守銭奴”(しゅせんど)みたいって思われるかも知れないですけど、今までの僕みたいに散財をするよりもまだ守銭奴の方がいいと思うんですよね。そっちのほうが将来のためになりますから。だから「アリとキリギリス」でいうと、キリギリスじゃなくてアリになるっていう。「ウサギとカメ」だとカメになるっていうことです。今までキリギリスとウサギとして生きてきたので、そこはかなり覚悟しています。180度変わったと思います。
Q: 経営破綻宣言直後の何もない状態からすでに順調にリバウンドされている印象を受けるのですが。
与沢: そうですね。ニコニコチャンネルのお話(※2)もいただきましたし、有料のメルマガも配信していますが、今までは数十万とかするメルマガやセミナーをしていたんですが、今は1ヶ月970円でいっぱい動画送ったりしています。昔とちょっと料金規模が違いますけど、誰にもあんまり負担をかけない価格で、すごくたくさんの価値を提供し、だからこそたくさんの人に利用してもらうっていう、まあいわゆる「規模の効果」を働かせてエンドユーザーに負担をかけない。そうすると価値を作りやすいと思うんですね。お金払った分よりも、それ以上の対価が得られるっていう感じで。だからそういうことをしっかりとやりながらがんばっていこうと思います。もう「スゴイ」と思われる必要もないし、社会から「消えたね」「終わったね」って思われてこそいいと思ってるんで。非常に冷静ですね。また兆しもあるとは思うんですよね。角川(書店)さんから秒速で転落(※3)の後の本の話も来ていますし。着実にがんばります。
(※2)ニコニコ動画内に「与沢翼の秒速伝説チャンネル」が7月にスタート。週1回の生放送と週3回のブロマガ(ブログとメールマガジンを統合したテキスト発信サービス)を提供している。
(※3)秒速で億単位のお金を稼いでいた与沢翼が突然、破綻宣言をするに至った過程の全てを告白した「告白 秒速で転落した真実」が7月2日に扶桑社より発売された。
Q: ぜひ今後の活躍を期待しています。今日はありがとうございました。
与沢: はい、ありがとうございました。
(インタビュー終わり/インタビュアー: 清水裕一)
(c)TVGroove.com
■関連リンク:
・2014年4月26日の突然の破産宣言(与沢翼ブログより)
・与沢翼オフィシャルブログ
・与沢翼ツイッター
・ニコニコ動画「与沢翼の秒速伝説チャンネル」
・「告白 秒速で転落した真実」
【与沢翼プロフィール】1982年生まれ。早稲田大学卒業。株式会社Free Agent Style Holdings代表取締役会長。小学生のころから商売を始め、高校は3日で中退。大検を取得し9か月後、早稲田大学社会科学部に入学。3年生の時に会社設立し、3年半で月商1億5000万円の会社に成長させるが、6年目に倒産。2011年9月、ネットビジネス界に参入し、半年で5億円を稼ぎ出す。 2012年4月、「株式会社Free Agent Style」を創業2014年(平成26年)4月26日、自身のFacebookで「資金が完全にショートした」とし、フリーエージェントスタイルホールディングスが破たん状態にあることを明らかにした。現在、破綻宣言の真相や本人に自身にまとわりつく疑惑について綴った書籍『告白』が扶桑社から発売中。ニコニコ動画にて自身のチャンネル『与沢翼の秒速伝説』を開設。
■映画リリース情報:
映画『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』
8月16日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
公式サイト: //www.queen-cinema.jp/
【動画】「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」予告編
【動画】「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」特別映像
大豪邸完成ドキュメンタリーのはずが、大富豪の転落の記録映画に! 映画「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」特別映像解禁(2014年8月15日)
映画「クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落」が、8月16日(土)より...
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