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映画「GONIN サーガ」伊藤洋三郎インタビュー[前編] 松田優作と喧嘩寸前の初対面を振り返る
2015年5月27日
伊藤洋三郎(本人提供)
小日向文世、松重豊、津田寛治、遠藤憲一らテレビドラマや映画で脇を固めていた俳優が近年、スポットライトを浴び、主演作やCM出演などで知名度を上げている。そんな“いぶし銀ブレイク”の一団にそろそろ名前を連ねそうな個性派俳優がいる。東出昌大主演の大作映画「GONIN サーガ」公開が控える石井隆監督から、熱い信頼を得る俳優・伊藤洋三郎(60)だ。
20代から舞台俳優として活動し、名優・松田優作がメガフォンをとった「ア・ホーマンス」(1986)に出演。その後人気テレビシリーズ「あぶない刑事」にレギュラー出演するなど、そのキャリアは30年以上。俳優としての道を歩み始めたきっかけを与えてくれたのは松田さんとの出会いだが、そのシチュエーションが「大学生時代に、たまたま飲み屋で出会った松田さんと喧嘩寸前になった」と衝撃的だ。
物騒な初対面を機に松田さんと顔見知りになり「お兄ちゃん、何やりたいの?」と聞かれた。その時点で演技はまったくの未経験だったが、伊藤には俳優という職業に感情を揺さぶられた過去があった。それは1971年に放送された大河ドラマ「春の坂道」。柳生十兵衛を演じた原田芳雄さんが父親との関係に葛藤するシーンを観た時に訪れた。
「演技って嘘だと思っていたけれど、その場面を見た時に“うわ、本気でやっている”と感じた。その時の十兵衛の心情が当時の自分の親子関係にも当てはまって、時代劇なのに自分の気持ちとリンクする事に驚いた。原田さんの演技を目にした時に“俺だって自由に生きていいんだ……”と思わせてくれた」と振り返る。
その気持ちを甦らせた伊藤は、松田さんに「俳優に興味がある」と打ち明ける。それから松田に付いて現場を数本経験した後、自らを磨くべく劇団に入り、20代を過ごす。「29歳で劇団を辞めて、30代になって映画界へシフトチェンジしました。事務所にも入っていなかったけれど、映画の仕事をもらえたのはすべて松田さんのお陰。松田さんの近くに出入りすることで、崔洋一監督にも出会えたし、業界関係者に顔が知れるようにもなった」と感謝しきりだ。
芸能事務所に所属した事もあるが、「演技が上手くて事務所に入っても、仕事が来ない人を沢山見て来たし、逆に事務所が大きいだけで仕事がもらえる状況も見てきた。若い頃はそういった風潮に納得がいかず、反抗していたのかもしれない」とフリーランスという立場を選んだ理由を語る。「当時は志が低くてね。映画のポスターに自分の名前が載ればそれでいいと思っていたから」と笑うが、役柄の大・小ではなく、役柄のキャラクター性を重視するスタンスは現在も変わっていない。
「石井隆監督から冗談っぽく『伊藤さん、早く売れてよ。そうしたら主演映画を作れるのに』と言われる事もあるけれど、僕としては面白い映画に面白い役柄で出演できればそれでいい。それを受け取った観客に、自分が『春の坂道』を観て衝撃を受けたように、自由になってもらえたら。人間は様々なしがらみに縛られている生き物だから、ちょっとの間だけでも“俺ももっと自由でいいんだ!”と感じてもらえたら嬉しい」。
映画「GONIN サーガ」伊藤洋三郎インタビュー[後編] 自身と相性抜群の石井隆監督作品12本に出演に続く
20代から舞台俳優として活動し、名優・松田優作がメガフォンをとった「ア・ホーマンス」(1986)に出演。その後人気テレビシリーズ「あぶない刑事」にレギュラー出演するなど、そのキャリアは30年以上。俳優としての道を歩み始めたきっかけを与えてくれたのは松田さんとの出会いだが、そのシチュエーションが「大学生時代に、たまたま飲み屋で出会った松田さんと喧嘩寸前になった」と衝撃的だ。
物騒な初対面を機に松田さんと顔見知りになり「お兄ちゃん、何やりたいの?」と聞かれた。その時点で演技はまったくの未経験だったが、伊藤には俳優という職業に感情を揺さぶられた過去があった。それは1971年に放送された大河ドラマ「春の坂道」。柳生十兵衛を演じた原田芳雄さんが父親との関係に葛藤するシーンを観た時に訪れた。
「演技って嘘だと思っていたけれど、その場面を見た時に“うわ、本気でやっている”と感じた。その時の十兵衛の心情が当時の自分の親子関係にも当てはまって、時代劇なのに自分の気持ちとリンクする事に驚いた。原田さんの演技を目にした時に“俺だって自由に生きていいんだ……”と思わせてくれた」と振り返る。
その気持ちを甦らせた伊藤は、松田さんに「俳優に興味がある」と打ち明ける。それから松田に付いて現場を数本経験した後、自らを磨くべく劇団に入り、20代を過ごす。「29歳で劇団を辞めて、30代になって映画界へシフトチェンジしました。事務所にも入っていなかったけれど、映画の仕事をもらえたのはすべて松田さんのお陰。松田さんの近くに出入りすることで、崔洋一監督にも出会えたし、業界関係者に顔が知れるようにもなった」と感謝しきりだ。
芸能事務所に所属した事もあるが、「演技が上手くて事務所に入っても、仕事が来ない人を沢山見て来たし、逆に事務所が大きいだけで仕事がもらえる状況も見てきた。若い頃はそういった風潮に納得がいかず、反抗していたのかもしれない」とフリーランスという立場を選んだ理由を語る。「当時は志が低くてね。映画のポスターに自分の名前が載ればそれでいいと思っていたから」と笑うが、役柄の大・小ではなく、役柄のキャラクター性を重視するスタンスは現在も変わっていない。
「石井隆監督から冗談っぽく『伊藤さん、早く売れてよ。そうしたら主演映画を作れるのに』と言われる事もあるけれど、僕としては面白い映画に面白い役柄で出演できればそれでいい。それを受け取った観客に、自分が『春の坂道』を観て衝撃を受けたように、自由になってもらえたら。人間は様々なしがらみに縛られている生き物だから、ちょっとの間だけでも“俺ももっと自由でいいんだ!”と感じてもらえたら嬉しい」。
映画「GONIN サーガ」伊藤洋三郎インタビュー[後編] 自身と相性抜群の石井隆監督作品12本に出演に続く
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