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映画「GONIN サーガ」伊藤洋三郎インタビュー[後編] 自身と相性抜群の石井隆監督作品12本に出演
2015年5月27日
伊藤洋三郎(本人提供)
映画「GONIN サーガ」伊藤洋三郎インタビュー[前編] 松田優作と喧嘩寸前の初対面を振り返るからの続き
石井監督の作品には映画「GONIN」(1995)から最新作「GONINサーガ」まで12本に出演。石井監督の作り出す世界観と伊藤の俳優としての高いポテンシャルは相性抜群で、たとえ出演がワンシーンだとしても、伊藤の中にあるキラリと光るものに目が引き付けられる。演じるキャラクターが個性的であればあるほど、その魅力は増す一方で、杉本彩主演の映画「花と蛇」(2003)での白鳥男、映画「人が人を愛することのどうしようもなさ」(2007)での変態中年サラリーマン、壇蜜主演の映画「甘い鞭」(2013)での究極のサディストなど、強烈な個性という荒馬に飲み込まれるのではなく、まるで手のひらで転がすように手なずけ自由自在に乗りこなす姿には、爽快感さえある。
その魅力を最大限に引き出すすべを知る石井監督こそ、伊藤の一番の理解者であり大ファンだろう。次のエピソードにそれをうかがい知ることが出来る。「石井監督には『GONIN2』(1996)の時に『電話番号を教えてよ』と言われて以降、呼んでもらっています。『黒の天使vol.1』(1998)の時に日本人ヤクザの組長役をもらったけれど、僕の提案を聞き入れてくれて怪しい中国人マフィアにしてもらった。『花と蛇』の白鳥男では、セリフを喋るタイミングから動き方などを含めてほぼ自由にやらせてくれて、それを監督が見て喜んでくれているのをこっちがまた見て、調子に乗るような感じでしたね」と全幅の信頼がある。
だが石井監督との仕事は、魂をすり減らす作業の連続でもあるようだ。「撮影が終わったら『二度とやりたくない』と思うこともあります。それだけ役者の本性がむき出しにされる現場。キャラクターを与えられても、それがどんな人でどんな関係性なのかを自分で考えて表現する事を求められるから、俳優の人間性が試される。石井監督は常に人間の極限状態を追及しているような人で、撮影は長回しでギリギリまで追いつめる。石井監督からは『もっとやれ! もっとやれ!』と言われる事があって、それが大変」と鬼才の創作現場を報告する。
はたから見ると、伊藤の目を引く演技は熱演にも思えるが、本人は「実は至って冷静で、常に“これでいいのか?”と自問自答しながらやっている。演じている自分とは別の自分が傍にいるような感覚です。“お芝居という嘘”という前提の中で、自分がどうなっていくのかを試しているのかもしれない」という。俳優としての理想は「米俳優のビリー・ボブ・ソーントン」と渋いチョイスで「ポツンと、ただそこにいるだけのような人になりたいね」と悟りのような思いを口にする。
俳優歴は30年以上。その軌跡を思い返すと、やはり初心に回帰する。「松田さんがいなければ、ここまで俳優を続けて来られなかった。辞めたら松田さんに顔向けできない気がするから、辞められないという思いもある」と噛みしめる。この熱意が一方通行でないのは、松田さんが死の直前に演出した舞台「モーゼル」(1989)の主演を伊藤に託した事も証明しているだろう。
そんな伊藤が最近観た海外テレビドラマは「HAWAII FIVE-0」。「偶然ケーブルテレビでやっているのを観たら、ハマってしまって1シーズン丸々観てしまいました。ストーリー展開も早くて役者さんも面白い。主人公たちのやり取りが良くて、演技が日本人好みの俳優もいたりして、全体の事を考えて芝居をしている繊細さも垣間見えた」と触発された部分もあるようだ。
久々の主演映画「恋」(長澤雅彦監督)が、6月12日に新宿明治安田生命ホールにて舞台挨拶付きで上映されるほか、伊藤演出・主演の舞台「迷探亭小南事件簿 Part2」が萬劇場にて、7月22日から26日まで上演される。詳しくは伊藤洋三郎の公式サイトへ。
(取材・文/石井隼人)
石井監督の作品には映画「GONIN」(1995)から最新作「GONINサーガ」まで12本に出演。石井監督の作り出す世界観と伊藤の俳優としての高いポテンシャルは相性抜群で、たとえ出演がワンシーンだとしても、伊藤の中にあるキラリと光るものに目が引き付けられる。演じるキャラクターが個性的であればあるほど、その魅力は増す一方で、杉本彩主演の映画「花と蛇」(2003)での白鳥男、映画「人が人を愛することのどうしようもなさ」(2007)での変態中年サラリーマン、壇蜜主演の映画「甘い鞭」(2013)での究極のサディストなど、強烈な個性という荒馬に飲み込まれるのではなく、まるで手のひらで転がすように手なずけ自由自在に乗りこなす姿には、爽快感さえある。
その魅力を最大限に引き出すすべを知る石井監督こそ、伊藤の一番の理解者であり大ファンだろう。次のエピソードにそれをうかがい知ることが出来る。「石井監督には『GONIN2』(1996)の時に『電話番号を教えてよ』と言われて以降、呼んでもらっています。『黒の天使vol.1』(1998)の時に日本人ヤクザの組長役をもらったけれど、僕の提案を聞き入れてくれて怪しい中国人マフィアにしてもらった。『花と蛇』の白鳥男では、セリフを喋るタイミングから動き方などを含めてほぼ自由にやらせてくれて、それを監督が見て喜んでくれているのをこっちがまた見て、調子に乗るような感じでしたね」と全幅の信頼がある。
だが石井監督との仕事は、魂をすり減らす作業の連続でもあるようだ。「撮影が終わったら『二度とやりたくない』と思うこともあります。それだけ役者の本性がむき出しにされる現場。キャラクターを与えられても、それがどんな人でどんな関係性なのかを自分で考えて表現する事を求められるから、俳優の人間性が試される。石井監督は常に人間の極限状態を追及しているような人で、撮影は長回しでギリギリまで追いつめる。石井監督からは『もっとやれ! もっとやれ!』と言われる事があって、それが大変」と鬼才の創作現場を報告する。
はたから見ると、伊藤の目を引く演技は熱演にも思えるが、本人は「実は至って冷静で、常に“これでいいのか?”と自問自答しながらやっている。演じている自分とは別の自分が傍にいるような感覚です。“お芝居という嘘”という前提の中で、自分がどうなっていくのかを試しているのかもしれない」という。俳優としての理想は「米俳優のビリー・ボブ・ソーントン」と渋いチョイスで「ポツンと、ただそこにいるだけのような人になりたいね」と悟りのような思いを口にする。
俳優歴は30年以上。その軌跡を思い返すと、やはり初心に回帰する。「松田さんがいなければ、ここまで俳優を続けて来られなかった。辞めたら松田さんに顔向けできない気がするから、辞められないという思いもある」と噛みしめる。この熱意が一方通行でないのは、松田さんが死の直前に演出した舞台「モーゼル」(1989)の主演を伊藤に託した事も証明しているだろう。
そんな伊藤が最近観た海外テレビドラマは「HAWAII FIVE-0」。「偶然ケーブルテレビでやっているのを観たら、ハマってしまって1シーズン丸々観てしまいました。ストーリー展開も早くて役者さんも面白い。主人公たちのやり取りが良くて、演技が日本人好みの俳優もいたりして、全体の事を考えて芝居をしている繊細さも垣間見えた」と触発された部分もあるようだ。
久々の主演映画「恋」(長澤雅彦監督)が、6月12日に新宿明治安田生命ホールにて舞台挨拶付きで上映されるほか、伊藤演出・主演の舞台「迷探亭小南事件簿 Part2」が萬劇場にて、7月22日から26日まで上演される。詳しくは伊藤洋三郎の公式サイトへ。
(取材・文/石井隼人)
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