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海外ドラマ「Zネーション」座談会レポート[後編] “アクション系とゆっくり系の2大恐怖要素があるのは珍しい”

2015年6月3日
海外ドラマ「Zネーション」座談会レポート[前編] “「ウォーキング・デッド」などテレビドラマから火が点いた”からの続き

【「Z ネーション」の魅力を解析】

アクション系とゆっくり系の2大恐怖要素があるのは珍しい。水死体のフリをしたゾンビたちの賢い描写は新鮮(高橋)

「ウォーキング・デッド」と対局で、ヒロイズム皆無な登場人物たちが逆に魅力的(吉田)

今までのゾンビを知っているからこそ、今までにないゾンビ像が誕生。1エピソード完結も見やすさがある(伊東)



吉田:連ドラ化することはネタ切れの危険性がある。「ウォーキング・デッド」はネタが尽きないようにやってはいるけど、原作があるからの安定と安心感。が、原作通りにやっていない部分も多々あるし、飽きない作りになっているんだよね。「Z ネーション」は新しいことを色々やって楽しい反面、原作がなくてロードムービー要素が入ってどこまでやっていけるんだろうという不安も。

伊東:逆に強みだと思うな。1エピソード完結だから増やそうと思えばいくらでも増やせるし。

高橋:あのスタイルだったいくらでも続けられるよね。途中から観ても大丈夫だから。

伊東:今回、ファースト・シーズンだけでも色んなネタが詰め込まれてて、夢ネタだけで進む話や原発作業の話など展開早すぎるけど大盤振る舞い。

高橋:本当のこと言っちゃえば、アメリカの田舎は広いから人なんて少ないわけだし、そんなゾンビに出会うこともないと思うんだけど、毎回田舎的なところでゾンビが集まって何かしらやっている話を作り上げているんで上手くやってるなぁと。

吉田:そういう意味では確かにいくらでも話が作れそうだわ。分かりやすく作るうえではその土地ならではなアイコンやランドマークを出すと良いみたいな。フィラデルフィアへ行ったら「ロッキー」のブロンズ像が劇中で出てきたりしてたし。

高橋:名所巡りみたいなね(笑)。

吉田:そこでロードムービー要素を入れているポテンシャルが出てくるわけだ。ニューヨークからカリフォルニアへ向かわないといけないミッションを課せられた一行は、寄り道しながらもイマジナリーラインを崩さずにと、シナリオ作りもブレてない。登場人物にも意外な裏切られ方する!

伊東:そうそう! びっくりするような死に方をする!

高橋:それだけの理由で殺してるよね(苦笑)。

吉田:そういった意味では登場人物たちに感情移入できなさすぎる。それも魅力のひとつかなって。対局にある「ウォーキング・デッド」は出てくる人たち皆にヒロイズムを求めて視聴者が感情移入できるようにするじゃない?驚くことに「Z ネーション」はそれが皆無なんだよね。

伊東:みんなどこかしらズルかったりする!

吉田:コイツもう死んじゃっていいよって思っちゃう魅力の薄さが、また魅力になっている珍しいパターン。

伊東:本当にマーフィーとか嫌なヤツなんだけど、キャラ立ちしていて何となく良いヤツに見えてくる流れは秀逸。

高橋:第 1 話で登場した死んだふりしているゾンビはなかなか珍しい。立っててマネキンみたいに動かないから気づかないゾンビは存在してたけど、大量の水死体状態のフリをして死んだように見せかけているソンビは、今まで遭遇したこと無かったなぁ。

吉田:賢さでは「バタリアン」に近い要素だよね。

伊東:今までのゾンビを知っているからこそ、今までにないゾンビ像を出している。

吉田:「Z ネーション」第1話はゾンビが蔓延した初年度で、感染したばかりだから肉体も滅びてなく、物凄い速さで勢いがあるんだけど、3年後になったら鎮静化して結構ノロノロになってるから体の腐っている部分も多く、どんどん朽ち果てていく。

伊東:分かれてるもんね。すぐ死んだ人は速くて、しばらく経った人はゆっくりっていう。劇中で言わなくても物語が進んでいくと分かる。

吉田:これは説明的じゃないところの面白さがあって、実際フレッシュミートな人間がゾンビ化すると動きがまだ速いって理屈は至極納得行く。体の内側が腐ってないわけだし。

伊東:おいしいトコどり。アクション系の激しさとロメロ監督的な、ゆっくり近づいてくる怖さの2大要素が入ってるからね。

高橋:しかし両方の要素があるのは珍しい。大体作り手側はどちらかを選んでるから。

吉田:この世界で面白いなって思ったのが貨幣の価値がないから、銃弾や薬の商品価値が高いところ。他のゾンビ作品からマネされないような世界観が面白い。略奪した側が今度は自分らが略奪者に車を奪われるシーンも因果応報も面白い。

伊東:大して驚くことなく、日常に奪い合い、殺し合いが起きているんだよね。

高橋:要塞に立てこもっている人たちが全員ものすごく脇が甘い(笑)。

吉田:「ウォーキング・デッド」のように籠城していく話とは対極で常に流動的に動いている。

伊東:人間ドラマをしっかり描くというよりも、面白いものを見せて行くって感じな軽快なテンポ。



【コミカルな部分だけではなくパロディ要素も満載】

ゾンビ映画が存在済の世界観は楽しい。良い意味で意気込みが感じられる(高橋)

スリングショットでのゾンビ退治に衝撃。シリアスとコメディの緩急が見ていて飽きさせない、最大の個性(吉田)

“裏”ウォーキング・デッド、と言えるのかも?変わり種ゾンビを出す攻めの姿勢がいい(伊東)



伊東:アサイラム作品の中でも「Z ネーション」は好きだな。真面目なところとバカげたところが両方収まっていて面白い。

吉田:パロディ要素も豊富。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」や「ターミネーター2」から頂戴したシーンなど(笑)。

伊東:「ウォーキング・デッド」のパロディもあったよね。ハモンド中尉のセリフに刑務所に籠城した元警官の話がでてくる。

高橋:そういうのってここ最近だと珍しいよね。ゾンビ映画に登場する人物はゾンビ映画を観たことがない、という設定が普通だけど、今回は「ロメロ映画と一緒だぜ」って説明も入り、良い意味で意気込みが感じられる。

吉田:医者扱いなドクなんて「ER 緊急救命室」ファンでずっと観てたから医療の知識を覚えたという無茶苦茶な設定!

伊東:根拠ない!(笑)

吉田:そうそう!出落ち感で笑いを味わせてくれる。キャラクターには一応個性をつけているんだけど、程良く感情移入させるか、させないかのギリギリのラインで人物像が作られているところが、「ウォーキング・デッド」とは対局的な魅力。

高橋:ゆっくり進んでいく「ウォーキング・デッド」と違って、展開が早いから確かに対局だよなぁ。

吉田:「Z ネーション」で衝撃だったのは、スナイパーを担当する 10K(テンケイ)というキャラクターが、日本ではゴム管製パチンコと呼ばれているスリングショットで音なく殺すサイレントキルは新しいなって思った。

伊東:ゴルフボール使ったりもね。

高橋:ゲーム「デッドライジング」の影響じゃないの?

吉田:やっぱり随分影響受けてるようで、後半にいくと「デッドライジング3」をプレイしている映像が出てくるし、作り手の世代が今で言うところのゲーム世代。「悪魔のいけにえ2」のビル・モーズリィ演じる将軍や、「トップガン」のケリー・マクギリスが女子供だけのユートピアを作っていたりと、狂ったサイコパスが多いのはゲーム「デッドライジング」シリーズの影響らしいよ。

伊東:変わったところでは赤ちゃんゾンビも第1話から出し惜しみなく登場させちゃう。死んだふりゾンビもそうだし、変わり種ゾンビをバンバン出してくる攻めの姿勢は良い!

吉田:ゾンビ対抗薬の血清が作れるかもしれないということでマーフィーをカリフォルニアへ連れて行くのが目的の分かりやすいドラマなんだけど…そのために数多くの犠牲者が仲間から…。

伊東:まさにゲームの「ラスト・オブ・アス」に似ているよね。

高橋:そうそう。そっくり!

吉田:製作陣がビデオゲーム世代だからだろうね。色んなオタク的要素があるのはドラマを作ってる会社がアサイラムだからでしょう。「メガシャーク」とか筆頭に無茶苦茶なパロディ作品を作ってからね(笑)。それが今回 SyFy チャンネルへアサイラムのゾンビ好きな連中が持ち込み企画で売り込んで成功した良い例。で、視聴率が良かったから晴れて13話まで作れたんだよ。テンポも良く常に躍動感があるから面白くないはずがない。

伊東:ギャグも多いし比較されがちな「ウォーキング・デッド」とは似て非なるものだしね。“裏ウォーキング・デッド”なのかも。

高橋:住み分けできていて良いと思う。

吉田:結論として、似てるようで似てないところが「Z ネーション」の魅力であるし、「ウォーキング・デッド」とは違ってシリアス7割、コメディ3割と緩急があるから見ていて飽きないような作りに仕上げているのが本作最大の個性なのかな。



【動画】DVD「Zネーション<ファースト・シーズン>」トレーラー



■ リリース情報

「Z ネーション<ファースト・シーズン>」
2015年7月8日 DVDリリース
全13話 / 各話約43分
Zネーション〈ファースト・シーズン〉 コンプリート・ボックス (7枚組) [DVD]
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