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「Marvel ルーク・ケイジ」主演マイク・コルター&クリエイターのチェオ・ホダリ・コーカーにインタビュー! 「黒人メインの作品が海外でもウケることを証明したかった」
2016年11月17日
(左から)マイク・コルター&チェオ・ホダリ・コーカー
Netflixにて配信中の「Marvel ルーク・ケイジ」。9月30日の配信直後、Netflixのサーバーが数時間にわたりダウンする事態が発生。「ルーク・ケイジ」へのアクセスが殺到したことが原因ではないかと報じられた。これほどまでに注目を集めた「ルーク・ケイジ」は、「Marvel デアデビル」「Marvel ジェシカ・ジョーンズ」に続く、Netflixとマーベルの共同製作ドラマの第3弾。鋼の肉体を持つスーパーヒーロー=ルーク・ケイジが、ハーレムに蔓延る悪と対峙する様を描く。同作で主演を演じるマイク・コルターと、クリエイターのチェオ・ホダリ・コーカーにインタビューを行った。
「ルーク・ケイジ」の製作が発表された際、多くのコミックファンは歓喜した。お気に入りのスーパーヒーローが実写映像化されるということはもちろん、「ルーク・ケイジ」の実写化には大きな意義があったからだ。これまでのスーパーヒーローものは、白人ばかりがヒーローを演じることが多く、黒人が主人公の作品は圧倒的に少なかった。主演のコルターは、黒人のスーパーヒーローを演じることは、「テレビ、そして、世界的情勢の中でとても重要」と述べる。また、クリエイターのコーカーは、本作を「黒人にも他の誰にでも受け入れられる作品」と表現。ハーレムを舞台に、90年代のヒップホップのヴァイブが感じられる音楽も加わり、アメリカの黒人文化を強く感じさせる作品に仕上がっている。
そして、何よりも本作が多くの人々に受け入れられたのは、人間としてのスーパーヒーローの苦悩を描いているからだろう。7月のTCA(テレビ批評家協会)のプレスツアーで、コルターとコーカーの2人に、世界が待望した「ルーク・ケイジ」について話していただいた。
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Q. 女性や多様な人種のヒーローが増えてきたマーベル・ユニバースの一員となって、どう感じていますか?
マイク: とにかく面白く、練り上げられた、いいキャラクターを演じることに喜びを感じます。ただ、突っ立っていたり、戦ってばかりいる役なら、お断りしていたでしょう。そういう役を演じたいわけではないので。とにかく、いい役を演じたいということ、それだけです。私は基本的に、コスチュームは着たくないけれど、役がいいもので、必要があるなら、コスチュームだって着ますよ。とにかく、大切なのは素材のよさと、俳優としてどれほど挑戦できるかということ。
チェオはいつも、いろいろなことを仕掛けてきて、脚本を見るたびに、「マジか……?」と思うこともありますが、脚本に書かれたことは、演じるしかないのです。頭でイメージしているように演じられるかどうか、というのは、楽しくもあり、怖いことでもあります。脚本を読んで、「これは、いいぞ」と思ったとして、「実際に、これをちゃんと表現できるのか?」と。今まで、黒人俳優だとか、黒人スーパーヒーローであるということで気負ったことはありません。素晴らしいことだと思っています。
ジェシカとルークの関係にも興味を持ちました。なぜなら、私の妻は、ヨーロッパ出身で、いわゆる“白人”と呼ばれる人種ですが、結婚するときにそんなことは気にしないもの。人種に対する先入観など関係ないのです。ただの事実なのです。(同シリーズに関しても)進歩的なヒーローで進歩的な人間、進歩的で大人のストーリーというだけのこと。特別な説明などいらないのです。今のマーベル・ユニバースの魅力はそういう部分にあり、その一員であることを嬉しく思います。
チェオ: 「ルーク・ケイジ」は、黒人だけの話ではなく、黒人にも他の誰にでも受け入れられる作品だと思っています。ブラック音楽やハーレムがフィーチャーされているものの、誰でも楽しめる世界なのです。違う文化の作品を見たときに、すべては理解できなくとも楽しめる、ということがあると思いますが、それと同じなのです。
例えば、私の好きな映画に「シティ・オブ・ゴッド」があり、ジョン・ウーやウォン・カーウァイの作品も好きですね。吹き替えではなく、字幕で見るのが好きなのです。すべては理解できなくても、堪能できるものです。黒澤作品もアメリカの西部劇に大きな影響を与えました。「ルーク・ケイジ」は言ってみれば、“ヒップホップ・ウェスタン”なのです。1人のクラシックな男が町にやってくる。その町の酒場(「ルーク・ケイジ」ではナイトクラブですが)で起こっていることは、町中の誰もが知っている。男には葬り去りたい過去がある。ところが、町で事件が起き、彼は見過ごすことができない。そこで、特別なパワーを使おうとするが、酒場のオーナーが、それはダメだという。その瞬間、対決が起きて、町が二つに分かれる。町の行方はどうなるのか? そして、女性がいれば、当然、セクシャルなことも起きる―――。シナリオはいたって、古典的なのです。唯一違うのは、文化と音楽だけ。物語の運び方は同じです。
よく、黒人メインの作品は海外でウケないといいますが、「ルーク・ケイジ」で、それは間違いだということを証明したいです。世界中で黒人文化が楽しまれています。例えば、いいソウル音楽のレコードが、アメリカではなく、東京で手に入ったりするのです。熱心な収集家が買い付けて、持って帰るのでしょう。先日、ローライディングについての映画を見たのですが、地球上で最もローライディングが熱いのは東京なのだとか。文化は世界中を旅するもの。Nertlixのすごいところは、同シリーズが配信開始するときには、米国だけでなく、世界中の誰もがほぼ同時に、同じ体験をできるようになること。とても幸せで、誇りに思います。
Q. マイクさんは、「ジェシカ・ジョーンズ」でメリッサ・ローゼンバーグと、「ルーク・ケイジ」でチェオという、2人のショーランナーと仕事をされています。前者と比べてチェオさんとの仕事、現場の雰囲気はいかがでしたか?
チェオ: 率直に話したいなら、席外そうか?(一同笑)
マイク: チェオと私は同世代で、これまで似たような経験をしてきました。彼はコネチカット州、私はサウスカロライナ州という、まったく違う場所で育ったのですが、私は、自分がクラスで唯一の黒人生徒というような環境で育ち、チェオも同じような体験をしたと思います。私は優秀な学生のクラスに入れられたのですが、特に何かしていたわけでもありませんでした。いつも、マイノリティのカテゴリーにいましたが、気にしたことも困惑したこともなかったです。チェオも同じタイプの人間だと思います。周りが黒人だらけだろうと、アジア人だらけだろうと関係ない。大事なのは、人間性やその人を作り上げている魂、どれほど賢い人かといったことで、人々の外身より中身に関心がありました。そういった意味で、私とチェオは共感しあっていたのです。
メリッサも素晴らしい人です。違う世代ですが、優秀な脚本家であり、業界での実績もある。彼女のアプローチ方法はユニークで変わっていて、多様性が好きな私にとっても新鮮なものでした。そこに、チェオがやってきて、違うテイストを持ち込み、メリッサが作り上げた世界を広げたのです。
メリッサに初めて会ったとき、「私は、こういう経験をしてきた白人女性で、こういう仕事をするつもりだけれど、あなたのキャラクターを知り尽くしているようなふりをするつもりはない。もし台詞に違和感があったりしたら、率直に言ってほしい」というようなことを言われました。そういった言葉には感謝していましたが、彼女のやり方を突き通してほしいという気持ちもあったのです。
自分がメリッサの書く台詞や脚本をジャッジしているような気になってしまったこともありました。例えば、両シリーズ(「ジェシカ・ジョーンズ」と「ルーク・ケイジ」)のルークは同一人物ではありますが、ジェシカとともにヘルズ・キッチンにいるルークと、ハーレムで仲間と一緒にいるルークは、違うふるまい方をするのです。人生の違う段階で出会い、違う経験をともにしてきた近しい仲間なのですから。人は一緒にいる人によって、違うふるまい方をするものです。特定の人といると出てくる習性というものもあります。そういう意味で、(ある種、異なる2人のルークを演じるという)違う体験をできたことは、楽しく実りのあることでした。チェオとは、いろいろな経験を共有できるので、まるで兄弟で仕事をしているように感じます。
チェオ: まさにそうだよね。マイクと私は近所に住んでいて、よく会っていたのです。もともと、(ルークの)キャラクターのイメージはあったのですが、やがてマイクにあて書きするようになり、2つの脚本を彼に渡したところ、とても気に入ってくれました。私たち同士のコミュニケーションは抜群で、彼のほうに疑問点があれば、いつも相談してくれ、いつでも話し合っていました。そのうち、ルーク・ケイジに対して、同じ見解を持っていることに気付いたのです。通常、新しいシリーズを始める段階では、キャラクターのことが何もわからないものですが、なぜか、私たちは2人とも、何がピンときて、何が違うかということを感じていたのです。お互いにいつも賛同しあっていました。とても恵まれていたと思います。マイクと私のような関係を築けないクリエイターもいるので。
マイクはまた、セットにおいても素晴らしいリーダーなのです。主役になると、自分は何をしてもいいと思う俳優もいるけれど、マイクはそうじゃない。いつも時間通りに来て、準備も万全で、台詞も覚えている。セットで何か想定外のことが起きても、マイクがいるから大丈夫だと思わせてくれる、頼れる存在なのです。主役がこういう見本を見せてくれると助かります。
さらにマイクの魅力は、とにかく繊細でありながら、ユーモアにも溢れているということ。ルークのキャラクターは、ドアを蹴飛ばしたり、マッチョなことをたくさんしますが、マイクは泣く場面もロマンティックなシーンもしっかりできる俳優なのです。完璧な主役です。もちろん、マハーシャラにテオ、シモーヌ、アルフレ、フランク……と、他のキャストも皆、素晴らしい。私は、何の心配もせずにセットに入り、ドラマチックな花火を見せてもらっているようなもの。そんなものを見せてもらって、さらにギャラももらえるなんて、信じられないほど幸運ですよ。
Q. チェオさんはジャーナリズム出身ですが、ショーランナーの仕事に、ジャーナリストの経験は生かされていますか?
チェオ: はい、もちろんです。皆さんもご存じのとおり、ジャーナリストには締め切りがありますよね(笑)。何があろうと、時間内に決まった量を制作しなければならないという。ジャーナリズムの経験がない脚本家は、ドラマに没頭しすぎたり、リサーチにハマったりして、迷子になりがち。でも結局のところ、完成させなければならないのです。ジャーナリスト経験によって、執筆の技術に加え、ディテールに注力する目も養われたと思います。キャラクターを簡潔な言葉で表現しつつ、ビジュアル面のイメージを明確に記すことができるのです。
私がショーランナーとして学んだ一番大切なレッスンとは、脚本を違う角度から見るということ。以前は脚本家として、「これは花で、ここに会話が入って、ここでまとまって……」というように考えていましたが、そうではないのです。脚本とは、150人もの人々を1つの作品のために動かすものなのです。そして、誰もが脚本を違った視点から見ます。美術は美術の視点で、俳優は演技をする視点で、衣装は何人の人がこの場面にいて、何を着て、何着のスーツが必要なのかという視点で、そのほか、撮影、照明……と、皆それぞれの立場で解釈するものです。
ただひとつ言えることは、脚本さえよければ、誰もが最高の力を発揮できるのです。脚本がよければ皆、「何か特別な企画に参加している」と感じることができるからです。そして、どの部門の人間であろうと、脚本の出来が悪ければ、必ずわかります。なので、私がショーランナーとして、唯一、気にかけ、コントロールするよう心がけたのは、脚本のクオリティです。その他は、私がコントロールできることではないのです。とにかく、自分の執筆力と脚本のクオリティに集中しました。脚本がよければ、いろいろなことをスムーズに進めやすいもの。脚本の出来が悪いときには、誰もがすぐわかるのです。
マイク: 匂いますよ(笑)。「あれ、この脚本ダメっぽいよー」と。衣装室まで匂います(笑)。
チェオ: あと大事なことは、メイクアップ部門に脚本が漏れないようにすること。同部門は、セット内の酒場のようなもので、いろいろなゴシップが出回る場所なんです。
マイク: 監督やプロデューサーを乗せて回る運転手もね。彼らは、会話も電話も全部聞いていて、全部話しちゃうんですよ。メイクアップ部門よりすごいですよ。
チェオ: そう、ただし、脚本を隠しておくときに、忘れてはならないこともあります。近々、死ぬ予定があるキャラクターの俳優には、脚本が出回る前に電話をしておくこと。ひとたび脚本が出回ると、皆が「気の毒だな。一体何があったんだ?」などと聞くようになるので(笑)。
Q. マイクさんは、どのように素晴らしい体を造り上げているのですか?
マイク: 役をもらったときは、素晴らしいチャンスを得て興奮したのですが、もちろん、プレッシャーも大きかったのです。ファンに、「全然、イメージが違うぞ」と言われてはならないので。とはいえ、ステロイド投与はしたくなかったし、どうしたらいいものか?と。
体力つくりの経験はあったので、アプローチ方法は知っていたのですが、とにかく時間が必要で。鍛えて待って、鍛えて待ってとするしかなく、素早く筋肉をつける方法というのはないのです。科学的には、正しい方法で熱心に鍛えれば、1カ月に7パウンドの筋肉を増やすことができるので、最初はそのペースで取り組んでいました。始めたころは、223パウンドだったのですが、もっと鍛えたかったので、さらに取り組みました。
ただ、テレビシリーズの撮影中というのは、週末に飛行機で行き来しているので、なかなか時間がとれないもの。そこで、カロリーを増やすことにし、プロテイン・シェークを1日に2杯飲み、炭水化物を減らすようにしたのです。唯一食べていた炭水化物といえば、スイートポテトにアボガド、ワカモレ……スイートポテト・フライもですね。あと、そば粉のパンケーキ。繊維が豊富で、とてもヘルシーでおいしいのです。
チェオ: 以前、撮影現場でテイクの間に、マイクがゆで卵が10個ほど入ったジップロック袋を持って、まるでお菓子のグミのように食べていたことがありました。息がすごくなりそうなので、離れていましたけどね(一同笑)。
マイク: ゆで卵の匂い、わかりますよね? 「あれ、誰か今・・・?」っていう、あの匂い。みんな、私が歩いてくるとすぐわかるみたいでしたね。椅子にも卵を置いていて。「その椅子に座らないほうがいいよ。卵あるから」って(笑)。あとは、ピーナッツなどのナッツ類。とにかく、いつも何かつまんでいましたね。同じものばかり食べていると飽きるので、いろいろな種類の肉も食べました。クレアチンのサプリメントも摂りましたが、むくみやすくなるので、休みも入れて。サプリメントを摂りながら体を鍛えて、正しいものを食べて、体を復活させるために休ませて、後はグルタミンなど……という、科学的アプローチですよ。できることをすべてやったら、後は、うまく体が造られることを祈るのみです。
Q. 専門の栄養士はいたのですか?
マイク: 私は、あまり人に頼りたくないタイプで、トレーナーを雇うタイプでもないのです。(デアデビル役の)チャーリー・コックスにもトレーナーがいて、誘われたりもしたのですが。スケジュール的にも、決まった時間にジムに行くことは不可能。誰もいない夜11時や朝8時に行くこともあれば、日中に行くこともありましたが、なにしろ、いつ行けるかわからないのです。栄養価については、「メンズ・ヘルス」や「メンズ・ジャーナル」(ともに男性誌)などを読んで、アイデアを得ていました。
(インタビュー、おわり)
【動画】「Marvel ルーク・ケイジ」予告編
■Netflixについて
世界最大級のオンラインストリーミングサービス。190以上の国で8600万人のメンバーが利用している。オリジナルコンテンツ、ドキュメンタリー、長編映画など、1日1億2500万時間を超える映画やドラマを配信。
メンバーはあらゆるインターネット接続デバイスで、好きな時に、好きな場所から、好きなだけオンライン視聴可能です。コマーシャルや契約期間の拘束は一切なく、思いのままに再生、一時停止、再開することができる。
・公式サイト : Netflix.com/jp
・公式ツイッター : @NetflixJP
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・公式チャンネル : youtube.com/c/NetflixJP
「ルーク・ケイジ」の製作が発表された際、多くのコミックファンは歓喜した。お気に入りのスーパーヒーローが実写映像化されるということはもちろん、「ルーク・ケイジ」の実写化には大きな意義があったからだ。これまでのスーパーヒーローものは、白人ばかりがヒーローを演じることが多く、黒人が主人公の作品は圧倒的に少なかった。主演のコルターは、黒人のスーパーヒーローを演じることは、「テレビ、そして、世界的情勢の中でとても重要」と述べる。また、クリエイターのコーカーは、本作を「黒人にも他の誰にでも受け入れられる作品」と表現。ハーレムを舞台に、90年代のヒップホップのヴァイブが感じられる音楽も加わり、アメリカの黒人文化を強く感じさせる作品に仕上がっている。
そして、何よりも本作が多くの人々に受け入れられたのは、人間としてのスーパーヒーローの苦悩を描いているからだろう。7月のTCA(テレビ批評家協会)のプレスツアーで、コルターとコーカーの2人に、世界が待望した「ルーク・ケイジ」について話していただいた。
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Q. 女性や多様な人種のヒーローが増えてきたマーベル・ユニバースの一員となって、どう感じていますか?
マイク: とにかく面白く、練り上げられた、いいキャラクターを演じることに喜びを感じます。ただ、突っ立っていたり、戦ってばかりいる役なら、お断りしていたでしょう。そういう役を演じたいわけではないので。とにかく、いい役を演じたいということ、それだけです。私は基本的に、コスチュームは着たくないけれど、役がいいもので、必要があるなら、コスチュームだって着ますよ。とにかく、大切なのは素材のよさと、俳優としてどれほど挑戦できるかということ。
チェオはいつも、いろいろなことを仕掛けてきて、脚本を見るたびに、「マジか……?」と思うこともありますが、脚本に書かれたことは、演じるしかないのです。頭でイメージしているように演じられるかどうか、というのは、楽しくもあり、怖いことでもあります。脚本を読んで、「これは、いいぞ」と思ったとして、「実際に、これをちゃんと表現できるのか?」と。今まで、黒人俳優だとか、黒人スーパーヒーローであるということで気負ったことはありません。素晴らしいことだと思っています。
ジェシカとルークの関係にも興味を持ちました。なぜなら、私の妻は、ヨーロッパ出身で、いわゆる“白人”と呼ばれる人種ですが、結婚するときにそんなことは気にしないもの。人種に対する先入観など関係ないのです。ただの事実なのです。(同シリーズに関しても)進歩的なヒーローで進歩的な人間、進歩的で大人のストーリーというだけのこと。特別な説明などいらないのです。今のマーベル・ユニバースの魅力はそういう部分にあり、その一員であることを嬉しく思います。
チェオ: 「ルーク・ケイジ」は、黒人だけの話ではなく、黒人にも他の誰にでも受け入れられる作品だと思っています。ブラック音楽やハーレムがフィーチャーされているものの、誰でも楽しめる世界なのです。違う文化の作品を見たときに、すべては理解できなくとも楽しめる、ということがあると思いますが、それと同じなのです。
例えば、私の好きな映画に「シティ・オブ・ゴッド」があり、ジョン・ウーやウォン・カーウァイの作品も好きですね。吹き替えではなく、字幕で見るのが好きなのです。すべては理解できなくても、堪能できるものです。黒澤作品もアメリカの西部劇に大きな影響を与えました。「ルーク・ケイジ」は言ってみれば、“ヒップホップ・ウェスタン”なのです。1人のクラシックな男が町にやってくる。その町の酒場(「ルーク・ケイジ」ではナイトクラブですが)で起こっていることは、町中の誰もが知っている。男には葬り去りたい過去がある。ところが、町で事件が起き、彼は見過ごすことができない。そこで、特別なパワーを使おうとするが、酒場のオーナーが、それはダメだという。その瞬間、対決が起きて、町が二つに分かれる。町の行方はどうなるのか? そして、女性がいれば、当然、セクシャルなことも起きる―――。シナリオはいたって、古典的なのです。唯一違うのは、文化と音楽だけ。物語の運び方は同じです。
よく、黒人メインの作品は海外でウケないといいますが、「ルーク・ケイジ」で、それは間違いだということを証明したいです。世界中で黒人文化が楽しまれています。例えば、いいソウル音楽のレコードが、アメリカではなく、東京で手に入ったりするのです。熱心な収集家が買い付けて、持って帰るのでしょう。先日、ローライディングについての映画を見たのですが、地球上で最もローライディングが熱いのは東京なのだとか。文化は世界中を旅するもの。Nertlixのすごいところは、同シリーズが配信開始するときには、米国だけでなく、世界中の誰もがほぼ同時に、同じ体験をできるようになること。とても幸せで、誇りに思います。
マイク・コルター
Q. マイクさんは、「ジェシカ・ジョーンズ」でメリッサ・ローゼンバーグと、「ルーク・ケイジ」でチェオという、2人のショーランナーと仕事をされています。前者と比べてチェオさんとの仕事、現場の雰囲気はいかがでしたか?
チェオ: 率直に話したいなら、席外そうか?(一同笑)
マイク: チェオと私は同世代で、これまで似たような経験をしてきました。彼はコネチカット州、私はサウスカロライナ州という、まったく違う場所で育ったのですが、私は、自分がクラスで唯一の黒人生徒というような環境で育ち、チェオも同じような体験をしたと思います。私は優秀な学生のクラスに入れられたのですが、特に何かしていたわけでもありませんでした。いつも、マイノリティのカテゴリーにいましたが、気にしたことも困惑したこともなかったです。チェオも同じタイプの人間だと思います。周りが黒人だらけだろうと、アジア人だらけだろうと関係ない。大事なのは、人間性やその人を作り上げている魂、どれほど賢い人かといったことで、人々の外身より中身に関心がありました。そういった意味で、私とチェオは共感しあっていたのです。
メリッサも素晴らしい人です。違う世代ですが、優秀な脚本家であり、業界での実績もある。彼女のアプローチ方法はユニークで変わっていて、多様性が好きな私にとっても新鮮なものでした。そこに、チェオがやってきて、違うテイストを持ち込み、メリッサが作り上げた世界を広げたのです。
メリッサに初めて会ったとき、「私は、こういう経験をしてきた白人女性で、こういう仕事をするつもりだけれど、あなたのキャラクターを知り尽くしているようなふりをするつもりはない。もし台詞に違和感があったりしたら、率直に言ってほしい」というようなことを言われました。そういった言葉には感謝していましたが、彼女のやり方を突き通してほしいという気持ちもあったのです。
自分がメリッサの書く台詞や脚本をジャッジしているような気になってしまったこともありました。例えば、両シリーズ(「ジェシカ・ジョーンズ」と「ルーク・ケイジ」)のルークは同一人物ではありますが、ジェシカとともにヘルズ・キッチンにいるルークと、ハーレムで仲間と一緒にいるルークは、違うふるまい方をするのです。人生の違う段階で出会い、違う経験をともにしてきた近しい仲間なのですから。人は一緒にいる人によって、違うふるまい方をするものです。特定の人といると出てくる習性というものもあります。そういう意味で、(ある種、異なる2人のルークを演じるという)違う体験をできたことは、楽しく実りのあることでした。チェオとは、いろいろな経験を共有できるので、まるで兄弟で仕事をしているように感じます。
チェオ: まさにそうだよね。マイクと私は近所に住んでいて、よく会っていたのです。もともと、(ルークの)キャラクターのイメージはあったのですが、やがてマイクにあて書きするようになり、2つの脚本を彼に渡したところ、とても気に入ってくれました。私たち同士のコミュニケーションは抜群で、彼のほうに疑問点があれば、いつも相談してくれ、いつでも話し合っていました。そのうち、ルーク・ケイジに対して、同じ見解を持っていることに気付いたのです。通常、新しいシリーズを始める段階では、キャラクターのことが何もわからないものですが、なぜか、私たちは2人とも、何がピンときて、何が違うかということを感じていたのです。お互いにいつも賛同しあっていました。とても恵まれていたと思います。マイクと私のような関係を築けないクリエイターもいるので。
マイクはまた、セットにおいても素晴らしいリーダーなのです。主役になると、自分は何をしてもいいと思う俳優もいるけれど、マイクはそうじゃない。いつも時間通りに来て、準備も万全で、台詞も覚えている。セットで何か想定外のことが起きても、マイクがいるから大丈夫だと思わせてくれる、頼れる存在なのです。主役がこういう見本を見せてくれると助かります。
さらにマイクの魅力は、とにかく繊細でありながら、ユーモアにも溢れているということ。ルークのキャラクターは、ドアを蹴飛ばしたり、マッチョなことをたくさんしますが、マイクは泣く場面もロマンティックなシーンもしっかりできる俳優なのです。完璧な主役です。もちろん、マハーシャラにテオ、シモーヌ、アルフレ、フランク……と、他のキャストも皆、素晴らしい。私は、何の心配もせずにセットに入り、ドラマチックな花火を見せてもらっているようなもの。そんなものを見せてもらって、さらにギャラももらえるなんて、信じられないほど幸運ですよ。
Q. チェオさんはジャーナリズム出身ですが、ショーランナーの仕事に、ジャーナリストの経験は生かされていますか?
チェオ: はい、もちろんです。皆さんもご存じのとおり、ジャーナリストには締め切りがありますよね(笑)。何があろうと、時間内に決まった量を制作しなければならないという。ジャーナリズムの経験がない脚本家は、ドラマに没頭しすぎたり、リサーチにハマったりして、迷子になりがち。でも結局のところ、完成させなければならないのです。ジャーナリスト経験によって、執筆の技術に加え、ディテールに注力する目も養われたと思います。キャラクターを簡潔な言葉で表現しつつ、ビジュアル面のイメージを明確に記すことができるのです。
私がショーランナーとして学んだ一番大切なレッスンとは、脚本を違う角度から見るということ。以前は脚本家として、「これは花で、ここに会話が入って、ここでまとまって……」というように考えていましたが、そうではないのです。脚本とは、150人もの人々を1つの作品のために動かすものなのです。そして、誰もが脚本を違った視点から見ます。美術は美術の視点で、俳優は演技をする視点で、衣装は何人の人がこの場面にいて、何を着て、何着のスーツが必要なのかという視点で、そのほか、撮影、照明……と、皆それぞれの立場で解釈するものです。
ただひとつ言えることは、脚本さえよければ、誰もが最高の力を発揮できるのです。脚本がよければ皆、「何か特別な企画に参加している」と感じることができるからです。そして、どの部門の人間であろうと、脚本の出来が悪ければ、必ずわかります。なので、私がショーランナーとして、唯一、気にかけ、コントロールするよう心がけたのは、脚本のクオリティです。その他は、私がコントロールできることではないのです。とにかく、自分の執筆力と脚本のクオリティに集中しました。脚本がよければ、いろいろなことをスムーズに進めやすいもの。脚本の出来が悪いときには、誰もがすぐわかるのです。
マイク: 匂いますよ(笑)。「あれ、この脚本ダメっぽいよー」と。衣装室まで匂います(笑)。
チェオ: あと大事なことは、メイクアップ部門に脚本が漏れないようにすること。同部門は、セット内の酒場のようなもので、いろいろなゴシップが出回る場所なんです。
マイク: 監督やプロデューサーを乗せて回る運転手もね。彼らは、会話も電話も全部聞いていて、全部話しちゃうんですよ。メイクアップ部門よりすごいですよ。
チェオ: そう、ただし、脚本を隠しておくときに、忘れてはならないこともあります。近々、死ぬ予定があるキャラクターの俳優には、脚本が出回る前に電話をしておくこと。ひとたび脚本が出回ると、皆が「気の毒だな。一体何があったんだ?」などと聞くようになるので(笑)。
チェオ・ホダリ・コーカー
Q. マイクさんは、どのように素晴らしい体を造り上げているのですか?
マイク: 役をもらったときは、素晴らしいチャンスを得て興奮したのですが、もちろん、プレッシャーも大きかったのです。ファンに、「全然、イメージが違うぞ」と言われてはならないので。とはいえ、ステロイド投与はしたくなかったし、どうしたらいいものか?と。
体力つくりの経験はあったので、アプローチ方法は知っていたのですが、とにかく時間が必要で。鍛えて待って、鍛えて待ってとするしかなく、素早く筋肉をつける方法というのはないのです。科学的には、正しい方法で熱心に鍛えれば、1カ月に7パウンドの筋肉を増やすことができるので、最初はそのペースで取り組んでいました。始めたころは、223パウンドだったのですが、もっと鍛えたかったので、さらに取り組みました。
ただ、テレビシリーズの撮影中というのは、週末に飛行機で行き来しているので、なかなか時間がとれないもの。そこで、カロリーを増やすことにし、プロテイン・シェークを1日に2杯飲み、炭水化物を減らすようにしたのです。唯一食べていた炭水化物といえば、スイートポテトにアボガド、ワカモレ……スイートポテト・フライもですね。あと、そば粉のパンケーキ。繊維が豊富で、とてもヘルシーでおいしいのです。
チェオ: 以前、撮影現場でテイクの間に、マイクがゆで卵が10個ほど入ったジップロック袋を持って、まるでお菓子のグミのように食べていたことがありました。息がすごくなりそうなので、離れていましたけどね(一同笑)。
マイク: ゆで卵の匂い、わかりますよね? 「あれ、誰か今・・・?」っていう、あの匂い。みんな、私が歩いてくるとすぐわかるみたいでしたね。椅子にも卵を置いていて。「その椅子に座らないほうがいいよ。卵あるから」って(笑)。あとは、ピーナッツなどのナッツ類。とにかく、いつも何かつまんでいましたね。同じものばかり食べていると飽きるので、いろいろな種類の肉も食べました。クレアチンのサプリメントも摂りましたが、むくみやすくなるので、休みも入れて。サプリメントを摂りながら体を鍛えて、正しいものを食べて、体を復活させるために休ませて、後はグルタミンなど……という、科学的アプローチですよ。できることをすべてやったら、後は、うまく体が造られることを祈るのみです。
Q. 専門の栄養士はいたのですか?
マイク: 私は、あまり人に頼りたくないタイプで、トレーナーを雇うタイプでもないのです。(デアデビル役の)チャーリー・コックスにもトレーナーがいて、誘われたりもしたのですが。スケジュール的にも、決まった時間にジムに行くことは不可能。誰もいない夜11時や朝8時に行くこともあれば、日中に行くこともありましたが、なにしろ、いつ行けるかわからないのです。栄養価については、「メンズ・ヘルス」や「メンズ・ジャーナル」(ともに男性誌)などを読んで、アイデアを得ていました。
(インタビュー、おわり)
【動画】「Marvel ルーク・ケイジ」予告編
■Netflixについて
世界最大級のオンラインストリーミングサービス。190以上の国で8600万人のメンバーが利用している。オリジナルコンテンツ、ドキュメンタリー、長編映画など、1日1億2500万時間を超える映画やドラマを配信。
メンバーはあらゆるインターネット接続デバイスで、好きな時に、好きな場所から、好きなだけオンライン視聴可能です。コマーシャルや契約期間の拘束は一切なく、思いのままに再生、一時停止、再開することができる。
・公式サイト : Netflix.com/jp
・公式ツイッター : @NetflixJP
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