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エリザベス2世の半生を描く「ザ・クラウン」、スティーヴン・ダルドリー監督にインタビュー! 「本作は時代物ではなく現代的な作品」

2016年11月11日
スティーヴン・ダルドリースティーヴン・ダルドリー
Netflixオリジナルドラマ「ザ・クラウン」が、11月4日より全世界同時配信スタートした。今年、エリザベス2世が生誕90周年を迎えたが、本作が描くのは女王の知られざる素顔だ。ヘレン・ミレンがエリザベス2世を演じ、大成功を収めた舞台「ザ・オーディエンス」を手掛けたスティーヴン・ダルドリーによって、本作でも再びエリザベス2世の知られざる側面が浮き彫りとなる。

ダルドリーは本作で、エリザベスが女王として、妻として、姉として、そして娘として抱える葛藤について描いている。激動の20世紀後半を駆け抜けてきた女王が乗り越えてきた問題は、「現代の女性が抱える問題と重なる」と述べるほど、本作は現代的なシリーズとして完成しているのだ。本作製作にあたって、スクリーンを彩る素晴らしい俳優陣のキャスティングから、シリーズものとして描くにあたって気をつけたこと、またダルドリー監督自身のロイヤルファミリーについての考えなどをインタビューで伺った。


Q. なぜこのシリーズを手掛けることにしたのでしょうか?

ダルドリー:私は以前、脚本家のピーター・モーガンと共にヘレン・ミレン主演の舞台「ザ・オーディエンス」を手掛けました。ロンドンのウェストエンドで上演後、ブロードウェイでも上演されました。その舞台では、女王が12人の首相と、毎週の謁見の中でどんなことが行われたかを描いています。

ピーターは過去にもエリザベス女王について作品を手掛けており、映画「クイーン」の脚本を書くなど、この題材に興味を抱いていました。そして、我々は本作を手掛けるにあたり、この題材により興味を深めていきました。

特にエリザベス2世は、若い海軍の男性の妻として、若い女性として、比較的普通の人生を送れると思っている中、突然即位することになりました。経験が浅く、若い脆さも抱える彼女が、英国の歴史のなかでも非常に波乱万丈な時代を、非常に年を取った首相がいるなかで、戴冠したのです。(ウィンストン・チャーチル)首相は彼女を女王として導かなくてはいけなかった。国として、家族としても大きなストレスを感じていたと思います。

このテンションというのが、非常に物語として僕らにとって面白い源泉になっていたので、作ってみたいと思ったのです。


Q. ピーター・モーガンと再びエリザベス女王を描くにあたり、今回はシリーズという形で制作するにあたって、ピーターさんと特に意識して制作に臨んだ点は何ですか?

ダルドリー:シリーズということで、テーマだったりキャラクターであったり、映画で描くことが無理な部分を掘り下げることができました。それができる自由があったのです。シーズン1では、非常に複雑な複数の物語・側面が描かれています。例えば、マーガレット王女とピーター・タウンゼントの関係性だったり、英国史において大きな事件ではありながらも、あまり知られていない1952年のロンドンスモッグ、当時の女王と周囲の人々との関係性や、チャーチルと若い秘書の友情などを含め、掘り下げて描くことができました。シリーズだからこそ、キャラクターのニュアンス、ストーリーの深さを得ることができ、非常に自由をもって作ることができました。

また、Netflixは素晴らしいパートナーで、大きな自由を与えてくれました。やはり僕らにとって興味深いロイヤルファミリーの家族、姉妹関係、結婚生活といったもののテンションにストーリーテラーとして非常に惹かれるものがあります。しかし、私生活にどこまで踏み込むのかというテイストやトーンなどは、一つの物語を作る上でポイントとなったところでした。そういった点をどこまで見せるのかといったところに、Netflixは一切口を挟むことなく、僕とピーターだけで決めることができました。そういった自由を与えられ、自分たちのやりたいように制作できたのは、素晴らしいことでした。


Q. 製作総指揮にも入られていると思いますが、「ザ・クラウン」に携わったのはいつからですか?

ダルドリー:実は最初からです。3年前にピーターと共にNetflixにお邪魔したところからです。その際、ピーターは既に第1話の一部を執筆しており、それをNetflixに見せながら、「まずは20時間コミットしてほしい」と話をしたところ、最初のミーティングで「イエス」と返事をいただきました。僕らは非常に喜びましたし、「すぐに作業に入らなければ!」と制作に取り掛かりました。


Q. 全6シーズンで、2シーズンごとに主役の2人(クレア・フォイ&マット・スミス)が別の俳優に交代すると伺いました。主役が変更するということは、TVシリーズとして賭けだと思うのですが、そういった結論に至った理由は何ですか?

ダルドリー:元々最初から20年ぐらいの期間を一人の女王、一つの家族を描いていこうと考えていました。そのため、中年に差し掛かった時、クレアに演じさせるには難しいのではと思っていました。若い時期、中年、シニアな時代と、3人の女王を始めから年頭に置いていました。僕自身の人生においても、英国という国においても、若い女性としてのエリザベス、母として、祖母としてのエリザベスが我々の人生の中に常にいました。そのため、僕たちにとって非常にロジカルな考えでありました。

クレアにメイクやウィッグなど施し演じさせるのも大変ですし、皆さんが望み7~8年続く可能性もあるこのシリーズにずっとクレアを拘束するのも大変だと思ったからです。また、クレアの次に誰がエリザベスを演じるかはまだ分かっていません。


Q. キャスティング、特にクレア、マット、ジョン・リスゴーについて教えてください。

ダルドリー:まずはジョンについて、僕はもともと、彼のブロードウェイでの芝居をずっと観てきました。そしてチャーチルという役は、年嵩の英国の役者は皆、どこかで演じたことのある役どころなのですが、アメリカ人の彼に演じてもらうことはフレッシュなアプローチなのではないかと思いました。彼の体格はチャーチルと比べると背が高いのですが、それも関係ないと思うほどの役者としての深みと技術を有した人物です。僕はジョンを説得してチャーチルを演じてもらったのですが、チャーチルの母親がアメリカ人だったということで、よいのではないかと結論に至りました。素晴らしい演技をしてくれて、チームの一員として迎えられとてもスリリングなことでした。

エリザベス女王のキャスティングについては、今勢いのある若い女優さんは全てオーディションをしました。クレアが登場した時、すぐに彼女だとわかりました。そのくらい、スクリーンテストで見た彼女は素晴らしかったのです。女王役に必要な深み、複雑さ、ストイックさをしっかりと持っていましたし、表現できていたからです。加えて、マットとの相性も素晴らしかったからです。

マットは逆にアルファ・メール、つまり男らしい男を演じなくてはいけなかったわけですが、それと同時にフィリップの持つ孤独感について理解しなくてはいけなかった。それをもたらしてくれたのがマットなのです。

皆さん、素晴らしい演技をしてくれたと思います。



Q. 今、世界は英国のロイヤル・ファミリーや貴族制度に大きな関心を抱いていると思います。フィクションとは異なり、本作は事実に基づいたものです。大衆に向けた作品作りと、真実をシリアスに描くというバランスをどのように調整したのでしょうか?

ダルドリー:この質問には何通りもの答えが考えられますね。個人的に、「ザ・クラウン」の物語はエモーショナルなものなのです。大きな変移が訪れる家族のエモーショナルな物語なのです。もともとエリザベスは、叔父(エドワード8世)が王位を放棄しなければ、こんなにも早く女王になることはなかったかもしれないですし、女王になることすらなかったかもしれません。そんなクラウン(王位)の重荷というのを自分がまさか背負わなければいけなくなるとは想像していなかった若い女性の物語なのです。

このことにより、彼女の家族内にテンションが生まれるのですが、そのテンションはとても現代的なものなのではないかと思っているのです。国の君主として、英国国教会の首長として、重荷を担いながら、海軍の軍人である夫を持ち、自分もまた強い女性でいなければいけなかった。これは英国に限らず、今、世界中の女性が直面しているような問題でもあると思います。今、世界中には女性の政治的リーダーがたくさんいますし。世界中の女性が、エリザベス女王が直面したような問題に直面しているのではないかと思います。そういった点に僕たちは興味を抱いたのです。

彼女は立場上、すべての権力を手中に収めていると思いがちですが、実は、世界で最も見えているが見えていない(visible but invisible)人間なのです。自分の意見を述べることが許されないわけですから。このことによって、彼女の中に葛藤が生まれるわけなのです。周りで起きている様々なことに対し、意見を持ってはいながらも、それを表明せずに振る舞いながら生きていかなければいけないのです。

またシリーズをご覧になった方はご存知だと思いますが、エリザベスは、偏った教育を受けた人物でした。それにも関わらず、突然世界のリーダーと世界中で起きていることについて話さなければいけない立場になったのです。それに引け目を感じてしまうという部分もあったわけです。そして、英国国教会の首長になったということは、モラル上の見本でなければならないという葛藤も抱えていたと思います。

「ザ・クラウン」のこういった様々なテーマというのは、現代的だと思います。皆さんがご覧になって、自分になぞらえてみることができるのではないかと思います。ですので、シリーズは時代物ではなく、現代モノのシリーズとして、10時間のフィルムとして制作しています。


Q. これまで手掛けてきた作品は、街中の一般の人に着目した作品が多いと思います。しかし、今回はロイヤルファミリーが対象な上に、製作規模や製作費が多い(※)ということで、プレッシャーは感じましたか?過去作と比べ、本作へのアプローチや製作において変わった点はありますか?

※2シーズンで約130億円

ダルドリー:実は、他の企画と比べてアプローチに違いはありませんでした。10時間の映画としてアプローチしたのです。文脈の中で、それに見合った製作費だったと思います。確かにTVシリーズと考えれば、莫大な製作費に感じるかもしれませんが、10時間の映画という風に考えれば、非常に妥当だと思います。

今回の挑戦では、バッキンガム宮殿だけでなく、ほかの宮殿も描かなければいけないということで、ある種の壮麗さ、宮殿内のスタッフの数、衣装、エキストラなど、我々が描きたいと思っていることを形にするならば、これだけのスケール感は必要になってしまうのです。その点に関しては、Netflixは製作費にもしっかりと応えてくれました。製作費は物語に妥当なものだと考えています。

また、描いているロイヤルファミリーは実際に生きている方々もいらっしゃいます。そのため、膨大なリサーチを重ね、非常に注意して描いています。本作では、いくつかの出来事を描いているわけですが、解釈も人それぞれです。「ザ・クラウン」が描いているのは、我々が見たバージョンの事実の解釈だと考えていただければと思います。ドキュメンタリー・ドラマを見ているわけではないのです。


Q. ロイヤル・ファミリーが生身の人間と仰いましたが、日本では皇室はアンタッチャブルな存在です。ピーターさんは、ロイヤルファミリーを「ゴシップやスキャンダルの格好のネタ」と述べていましたが、スティーヴンさんはロイヤルファミリーについてどういった考えをお持ちですか?

ダルドリー:女王自身は今、すごく人気があります。もし一般国民が女王を受け入れるか投票をすれば、85%ぐらいの人がきっとこのままでいいと言うと思います。そのくらい、彼女が象徴してきているもの、国として継続して見せてきたものが人気を博しているからだと思います。しかし、それは以前からそうではありませんでした。彼女の人気は上がったり、下がったりを繰り返してきました。しかし、多くの人が同意してくれると思いますが、彼女が即位してから在位した期間(※)はとても長いです。激動の時代をここまで生き延び、華を咲かせてきたのです。

※エリザベス2世は、今年で在位64年。英国史上最長在位の君主。

ヨーロッパでは君主制度がなくなっていき、共和国となっていきました。しかし、英国は未だに君主制が続いているのです。特に政治的リーダーたちが、国民をガッカリさせているなか、そういう政治よりもある種上にいる、選挙で選ばれたわけではない君主という存在があることが、国民にある種の安心感を与えているのではないでしょうか。そのことはとても大切なことなのではないかと思っています。しかし君主制というのは、バカげたものでもあると思います。というのも、他の人は信じていないと思うのですが、女王自身は信じていると思うからです。神が彼女を女王にしたということをです。神に選ばれ、世界中の英国国教会の首長という座にいること自体、おかしな話だと思います。途方もない話ですよね。しかし、ロイヤルファミリーは国民に安心感を与える存在であり、皆がロイヤルファミリーに魅了されていることから、彼らのスキャンダルにも興味を抱いているのかもしれません。しかし、私としては、彼らを娯楽的に見ていません。大きな尊敬をもってみています。

スキャンダルという点は、第1シーズンのテーマにもなっています。マーガレット王女とピーター・タウンゼントの関係です。ピーターは、一般人であり、離婚経験者であり、ロイヤルファミリーに仕えるスタッフでもありました。マーガレット王女がそんな彼と結婚するのか、しないのか。この事件は王室内にも国自体にも大きなテンションを生み出しました。同時に、大勢の人が「我々の道徳心のありかは?」という風に考えるきっかけを作った事件でもあったのです。家庭も国も引き裂きかねない事件でありました。

僕自身のロイヤルファミリーに関する意見は、幅が広いわけですが、女王に対しては大きなリスペクトを持っています。特に、激動の時代を生き抜いてきたことを素晴らしいと思っています。

(インタビュー、おわり)

【動画】「ザ・クラウン」予告編


■作品概要

Netflixオリジナルドラマ「ザ・クラウン」
Netflixにて好評独占ストリーミング中!

■Netflixについて

世界最大級のオンラインストリーミングサービス。190以上の国で8600万人のメンバーが利用している。オリジナルコンテンツ、ドキュメンタリー、長編映画など、1日1億2500万時間を超える映画やドラマを配信。

メンバーはあらゆるインターネット接続デバイスで、好きな時に、好きな場所から、好きなだけオンライン視聴可能です。コマーシャルや契約期間の拘束は一切なく、思いのままに再生、一時停止、再開することができる。

・公式サイト : Netflix.com/jp
・公式ツイッター : @NetflixJP
・公式フェイスブック : facebook.com/netflixjp
・公式チャンネル : youtube.com/c/NetflixJP
 
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