【「フラーハウス」LAセットビジット】(その4) シットコムってどう撮るの? スパルタ撮影で大爆笑

昨日はまる出しだったセット前に、幕が張られている。収録には、一般人ももちろん参加できるが、条件がいくつかある。まず携帯電話は持ち込み禁止。それからネタバレは厳禁だと注意を受ける。そして引き続き寒い。さらに終わり時間は読めず、結論から言えばこの日、15時ごろにスタートした撮影は、夜21時まで続いた。意外に過酷……そんな恐れを白い歯の笑顔でいなしてくれるのが、MCのロンさんだ。

念のためはっきりさせておくが、彼は別にキャストではないし、「フラーハウス」に出演はしていない。正直、私にも彼がいったい何者だったのか、詳しいことはまったくわからない。わからないが、とにかく彼はすごかった。観客を一瞬たりとも飽きさせないどころか、煽って煽って盛り上げるのだ。スタジオ内は寒いし、テンション:ゼロどころか、マイナスの観客もいたかもしれない。しかし本作はシットコム。客席の笑い声と、歓声、そして「オーウ」がなければ作品は完成しない。

「おまえらはキャストだ!　誰より重要なキャストだ!　大きな声で!　笑え!!　口を開けろ!　腹筋を使え!!」

大口を開けて笑うなんてはしたないと育てられた日本人にとっては、少々きついオーダーかもしれない。しかし周囲のアメリカ人は、ロンさん劇場にすっかりトリコでノリノリだ。HAHAHAのノリで大騒ぎ。この時点で、セットには幕がかかっているし、私たちの目の前にはロンさんしかいない。繰り返すが、いまいちどこの誰かよくわからないロンさんだけだ。しかしここからの6時間のうち、かなりの割合が彼に魅せられた数時間だった。

【セットから見たスタジオ観覧席】

Final live audience show of Season 2 tonight! Thank you, fans, for all the love you have shown us - we wouldn’t be here without you! ???? #FullerHouse

Andrea Barberさん(@andreabarber)が投稿した写真 - 2016 9月 2 6:42午前 PDT

まずロンさん、客席いじりが半端ない。大人しい観客を見つけたかと思えば、いじりにいじる。「遠くから来た人は?」の問いで、テキサス州からの観光客を見つけた途端、「うちのカミさんがね」とコロンボばりにヨメトークをはじめる。アイルランドから来た観光客一家を発見すると、もう大喜び。彼ら特有の訛りがきつい英語をうまく真似て見せ、アイリッシュ親子3人を自分の隣に立たせると、「国歌を歌え」ときたもんだ。かわいそうに、奥さんは逃げだそうとしてガッツリ捕まっていた。さて、こんな状況で、私たち日本人がロンさんから見逃されるはずがあろうか。あるわけがないのだ。

アイルランド人一家よろしく前方に呼び出されると、執拗にお辞儀。「とても礼儀正しいと聞き及んでおります」。恐れ入ります、痛み入ります。しかし彼が礼儀正しかったのはここまでだった。「きみの名前なんて言うの?」「ナオです」「ナウ?」「ナオです」「きみの苗字なんていうの?　知ってる、ライトでしょ。ライト・ナウ(right now=今すぐ)ってね」HAHAHAHAHA!!!　まさか遠くロサンゼルスで、名前でいじられる日が来ようとは夢にも思わなんだ。勘のいい読者はお気づきでしょうか。「寿司屋に入ったときに叫ばれるアレやって!」「いらっしゃいませ」「○?△□◎ッセーイ!!」というやり取りを経て、歌わされましたよ、国歌をば。ロサンゼルスのスタジオ内で、君が代斉唱。ありがとう、ロンさん。いろいろな意味で忘れられない旅になりました。


――その5へ続く



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