【LAセットビジット】「サンタクラリータ・ダイエット」製作総指揮ヴィクター・フレスコにインタビュー(その1)! 妻の“デッド”化は“自己愛”の象徴?

2017年1月30日

「結婚」がテーマというだけあって、いい雰囲気のカップルだけど…

昨年8月、米ロサンゼルスの撮影スタジオにて、ドリュー・バリモア(「50回目のファースト・キス」)と、ティモシー・オリファント(「Justified 俺の正義」)が主演する最新作「サンタクラリータ・ダイエット」の、製作総指揮を務めるヴィクター・フレスコにインタビューを行った。

「サンタクラリータ・ダイエット」は、映画「チャーリーズ・エンジェル」シリーズなどで知られるドリューにとって、初出演のドラマ。ふたりはジョエル (ティモシー) とシーラ (ドリュー) という、ロサンゼルス郊外のサンタクラリータで不動産仲介業を営む夫婦を演じている。

本作は、ある日突然、ドリュー演じるシーラが死んでしまうところから物語がスタート。ところが本人はピンピンしていて、以前といたって変わらない様子。ただ、人肉を食らうようになってしまったという点以外は……というお話だ。「シーラの身に起きたある出来事をきっかけに、その生活は死と破滅に追いやられていく」という少々おどろおどろしいあらすじだが、「...ただし、いい意味で!」という公式紹介文の通り、あくまでコメディ作品だ。NETFLIXにて、今年2月3日より配信が開始される。

これまで「アルフ」(1986～1990)、「マイネーム・イズ・アール」(2005～2009)など、話題の人気作を手がけてきたヴィクターは、今作ではじめてNETFLIXとタッグ。「サンタクラリータ・ダイエット」では、脚本・製作総指揮を務めている。そんな彼に、今作をアピールしてもらった。

――「サンタクラリータ・ダイエット」の内容について教えてください。

ヴィクター:　核となるコンセプトは“結婚”。私自身、結婚して25年になり、過去に結婚に関する番組を作ったこともある。夫婦生活には浮き沈みがあるもの。長い結婚生活においては、夫婦ごとに特有のトーンがあると同時に、共通点も存在する。様々なことが起き、なかには困難も……
このシリーズは、そんな結婚関係の探求物語であり、夫婦がともに、または別々に成長するときに、どのようなことが起きるのか?ということを描いているんだ。

今作に登場する夫婦は、ともに不動産業者で、サンタクラリータという(ロサンゼルス)郊外の計画立てられたコミュニティで暮らしている。結婚して25年、日々の生活がマンネリ化しているところに、大きな変化が……。ドリュー演じる妻シーラが、ある朝起きると“デッド(死人)”になっていて、人肉を食べたくなるんだ!
その食欲以外はすべて以前と同じまま。でもデッドになったことで脳が活性化され、欲しいものはすぐに欲しくなるし、性生活も含めて全体的に、前よりも攻撃的で自己主張が強い部分は出てくるけれどね。でもシーラは、夫婦関係を壊したくない、結婚生活を続けたいと思っている。

こうしたシーラの設定は、今、我々が生きている“ナルシシズム(自己愛)文化”の象徴と言えるかもしれない。「周囲を疎外せず、社会の一員であり続けながら、自分が欲しいものを100%手に入れるにはどうしたらいいか?」という問いだ。
シリーズの印象が変わってしまうので、ここでは“ゾンビ”という言葉を使わず、“デッド”と表すけれど、デッドになったシーラは、「今の家族をキープし、社会の一員であり続け、どこかに隔離されたり、閉じ込められたりすることなく、自分の欲しいものを手に入れるためにはどうしたらいいか?」と考える。

夫のジョエルの立場からすれば、妻がすさまじい変化を遂げているような状況でも、彼女を愛しているし、離れたくない。「今の関係を続けるにはどうしたらいいか? どうやって生きていけばいいのか? 自分の責任は?」と模索する。
(夫は妻に起きた変化を知っているのですか?という問いに)イエス、知っているよ。今作では、変化する結婚関係を描いているからね。
(この夫婦に子どもは?と問われ)16歳の娘がひとりいるよ。

――どのようにして、デッドと普通の人間を描きわけているのでしょう?　シーラはどのように秘密を守って生きているのですか?

ヴィクター:　彼女のルックスは(デッド化以前と)まったく同じで、行動も同じ……まあ、性格は少し強くなっているけれど、完全に自己コントロールできているんだ。突然、外に飛び出して、他人を攻撃するというようなことはないよ。
だから社会の中でどのようにうまくやっていくかを、シーラは自分で考えることができる。デッドであることをうまく隠せるので、家族の秘密が発覚することもない。ただ、少しワイルドになるので、やがてバレていくんだけれどね。

――シーラは周囲の住人を殺すのですか?

ヴィクター:　今作は、感動作品ではなく、あくまでコメディ。あまり詳しくは話せないので、皆さん自身で確認してほしいけど、その部分をどうやって描くかということが、“コメディ”の要素になってくると思う。
私は「もし妻が人肉を食べたくなったら、どのように対処するべきか?」と考えるところからスタートしたよ(笑)。結婚生活が長く、互いに愛し合っているのなら、すぐに「よし出ていこう」ということにはならないはず。男性の多くは、「どうやってこの問題を解決しよう?」と考えるでしょう?

妻はこれまでと変わらぬ妻であり、より興奮しがちになっているために、セックスはこれまでに以上に素晴らしい。彼女が変化にうまく対処できるように、どのようにサポートできるか?　誰を殺すべきか? どうやってそれを決めるべきか?
捕まりたくないため、リスクは低い方がいい。太った人を殺した方が得かもしれない。善人は殺したくない。人間は殺さずに、動物を食べればいいのかも?
……と、たくさんの試行錯誤の可能性があるんだ。

――その2へ続く

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