「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」は『本物の』スパイを生き様を描いたアクション&ヒューマンドラマ!　|　町山智浩インタビュー

「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」のシーズン1&2のDVDコレクターズBOXが9月5日にリリース。それを記念したトークイベントが9月19日(水)に東京・スペースSF汐留にて開催された。

本作は、アメリカ人になりすましたロシア人のスパイ夫婦が、潜入、暗殺、ハニートラップなどあらゆる手を駆使したスパイ・ミッションと、彼らを追うFBIとの攻防戦をスリリングに描いている。第70回エミー賞では、見事主演男優賞と脚本賞の2冠に輝いた。

TV Grooveでは、在米ジャーナリストで映画評論家の町山智浩氏に単独インタビューを敢行。時代背景やエミー賞獲得の理由、本作の見どころを教えてもらった。

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Q.スパイを題材にした映画やドラマが沢山ある中で、「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」が他の作品と大きく違う点はどういうところでしょうか?

町山:スパイを題材にした他の有名な作品は、実は、本物のスパイが描かれていないものも多いんです。例えば、007シリーズのジェームズ・ボンド。彼は誰にも化けず、本名の「ジェームズ・ボンド」を名乗っていますよね。あとは、ミッション・インポッシブルのトム・クルーズ扮するイーサン・ハントも、空からいきなり敵地に現れるという登場のシーンがありますが、あれは映画の中だけで描かれるスパイです。それに比べて「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」で描かれているKGBのスパイは、身分を偽って生活をしていて、限りなくリアルなスパイに近いです。



本物のスパイというのは、基本的に、敵の中にいる情報協力者を獲得することです。だから命がけで政府の役職者の秘密を握って、少しずつ中に取り込んでいくんですよ。

従来のスパイものはそれが描かれることがほとんどなく、大抵は、高いところからぶらさがったり黒い服を着ていたりしますよね。あれは泥棒です。(笑)本当のスパイの姿を描いているところが、他の作品との大きな違いです。


Q. 「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」が人気を得たのはどういった要素があったからですか?

町山:こういった内容のドラマが流行ったのは前例があります。1999年からHBOで放送された「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」という、当時国民的人気を博したドラマです。マフィアの中堅のボスが主人公で、とにかく残酷な人の殺し方をしますが、家族愛というのがテーマの作品です。

マフィアの親は子どもを普通に育てたくて一生懸命頑張るのですが、親から引き継いだマフィア業のため、人殺しをしなければならないという運命を背負う物語で、その「辛さ」という部分にフォーカスされています。



普通のサラリーマンが仕事をするのと同じ目線でマフィアの仕事が描かれている「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」が大ヒットしたことが、「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」の根底にあり、家庭を守りたいという想いが強い父と母がスパイ業をどう両立させるか、その苦しさや辛さが、視聴者の共感を得たんだと思います。


Q.本作では様々な形の家族、夫婦、友情、恋愛などの人間ドラマ多く見られましたが、根底にあるテーマは何なのでしょうか?

スパイの仕事というのは、愛を弄ぶことです。劇中に、マーサという秘書の女性にフィリップが近づき、関係を持ち、結婚までして情報を聞き出していくというシーンがありましたが、マーサをただ情報源として騙しているのかというと、そうではない。マーサと一緒にいるうちに彼女を愛してしまうし、もっと言うと、人に愛されるためには自分も相手を愛さなければ、本気で愛してもらえないんですよ。

そうしていくうちに、彼女をスパイに巻き込んだという罪悪感も生まれます。だから、本当の愛がないと、人を騙すことができないんです。残酷だし、人間が一番やってはいけない。「愛」を弄ぶことをやっている。その辛さが描かれていますね。



ジェニングス夫婦についても、彼らはKGBから命令をされて結婚した仮面夫婦なわけです。ところが、フィリップはエリザベスに会った時からずっと愛している。でも、エリザベスは絶対に「愛してる。」と言わない。そういった感情が揺れ動く辛さは、誰もが共感する家族愛や男女間の愛などを描いています。


Q.「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」は、元CIAのスパイが企画と制作総指揮をしており、ドラマにリアリティを持たせています。主役のジェニングス夫妻は実際のスパイがモデルになっているそうですが、詳しく聞かせて頂けますか?

この夫婦のモデルになったのは、KGBのスパイでソ連の亡命者としてアメリカに住んでいた夫婦です。奥さんがFBIの職員に肉体関係を餌にして近づき情報を得ていましたが、それが途中で発覚し、逮捕されました。

その際は、KGBのスパイである夫が、妻が任務のために他の人と体の関係を持ったことに激怒し、ぐちゃぐちゃになってしまいました。実際に起きたその事件が、このドラマの起源になっていると思います。


Q.先日の第70回エミー賞で主演男優賞と脚本賞を見事受賞しましたが、それにはどんな背景があったのでしょうか?

フィリップ役を務めたマシュー・リスという俳優は、「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」で主演を務めるまでは、ほぼ無名に近い俳優だったんです。本作を演じる中で、彼のキャラクターが成長していきました。



妻を愛しているのに、彼女はスパイの任務で他の人と体の関係を持つことも多々あり、自分も任務のために体の関係を持つことがあるが、妻はそれに対して全く嫉妬をしない。そういう、悶々としたキャラクターを演じていくうちに、視聴者の共感を最も得るキャラクターに成長しました。

マシュー・リスは、俳優としてだけではなく、途中から本作の監督を手がけるようになり、ドラマ自体の方向性も監修するようになります。それらを踏まえて、エミー賞獲得は当然だと思いました。

(インタビュー終わり)

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「ジ・アメリカンズ　極秘潜入スパイ」シーズン1と2はセル&リリースともに9月5日に解禁されている。コレクターズ DVD-BOXには豪華映像特典が収録されているだけではなく、「シーズン1　オリジナルブックレット」も封入されている。
更に、シーズン3以降はファイナルのシーズン6まで5ヶ月連続でリリースすることが決定。DVDコレクターズBOXには町山さんの熱い解説「シーズン1 パーフェクトガイド」も封入されており、見逃せない内容となっている。

(取材・文:加藤優花)


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【作品情報】

作品名:「ジ・アメリカンズ 極秘潜入スパイ」
DVDコレクターズBOX 7枚組 各¥9,000+税
デジタル:デジタル配信中
発売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

【シーズン1 収録特典】

・未公開シーン集
・NGシーン集
・大統領令2579号「ジ・アメリカンズ」の舞台裏
・華麗なる防諜のすべて
・テクノロジーを超えた知恵

「ギフテッド 新世代 X-MEN 誕生」第1話
「9-1-1(原題)」第1話、「THE RESIDENT(原題)」第1話
「THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから」第1話、「レギオン」第1話
「APB ハイテク捜査網」第1話、「セカンド・チャンス 造られた男」第1話

【シーズン2 収録特典】

・未公開シーン集
・NGシーン集
・諜報活動:S局の真実
・共産主義の影:スパイたちのモラル
新作ドラマの第1話を特別収録(シーズン1と同じ)

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